管理人が育った地域では道端や友人の家の庭など、身近な所にビワの木がありました。
それを、手で簡単に皮が剥けることもあり、友人の家の庭でモギって食べたり、近所の方から頂いたりしていたので、ビワはタダで食べられる果物と思い込んで育ってしまいました。
大人になって、自分で青果店で購入しようとすると「高っ!」となってしまい買えずにいるうちに、ビワは改良を繰り返し甘くて美味しい品種も増え、値段は下がるどころか今や高級果実の仲間入りをしていますね。
青果店やスーパーでビワを見かけるようになると「夏がくるんだなぁ」と毎年思います。
ビワは実を食べるだけではなく、葉も昔から様々な民間療法で活用されてきました。
今回はそのビワの栄養価と効能、保存方法などを紹介いたします。
ビワの栽培
ビワはバラ科の常緑高木で、原産は中国南西部。
中国の仏教教典『大般涅槃経』で「大薬王樹」と呼ばれ、薬用として重宝されていたビワは、奈良時代に日本にもまず治療用として伝わったようです。
木材としても乾燥させると非常に硬く粘りが強い材質のため、杖の材料や剣道・剣術用の木刀としても使われてきたそうです。
食用としてビワの果実を食べるようになったのは、江戸時代から。
ビワの名前は、葉っぱや黄橙色の実の形が、楽器の琵琶に似ていることが由来のようです。
温暖な地を好み、日本では主に千葉県以南に分布しています。
生産量は長崎県が全体の1/3をほこり、千葉県(房総半島)・香川県・愛媛県・鹿児島県などが続きます。
少し前まで一般に出回っていたのは、長崎県茂木地区を中心に栽培されている「茂木」と、房州びわで知られる「田中」という品種。
しかし、今ではいろいろ改良され、ハウスで育ち1月には店頭に並ぶ長崎早生や、千葉県で生産されている大房、瑞穂・甘香り・なつたより・涼峰・クイーン長崎・白茂木・麗月・陽玉・楠、種なしに改良した希房など、新しい品種が次々と生まれてきています。
ビワの栄養と効能
ビワ果実1個の可食部は約32gで、カロリーは約13cal。
ビワの果実にはビタミンCやビタミンB群、炭水化物、カリウムなどのミネラル類、ポリフェノールの一種であるクロロゲン酸、リンゴ酸やクエン酸などの有機酸などが含まれています。
果実の黄橙色は、β-カロチンやβ-クリプトキサンチンなどのカロテノイド色素で、体内で必要に応じてビタミンAに変換され働きます。
抗酸化作用で生活習慣病予防
含まれるビタミンCやβ-カロチン・クロロゲン酸には強い抗酸化作用があり、活性酸素を除去し体が酸化するのを防ぐ働きがあります。またβ-クリプトサンチンやカリウムには血圧の上昇を抑える働きもあるので、高血圧を防ぎ動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病予防、アンチエイジングに効果が期待できます。
肌や粘膜を潤し美肌効果
ビタミンCは細胞同士を結ぶコラーゲンというタンパク質を作るのに必要な栄養素。シミ・シワ予防の美肌効果でおなじみのビタミンで、抗酸化作用があります。
β-カロチンやβ-クリプトキサンチンは体内でビタミンAに変換され、肌や粘膜・髪に潤いをあたえ、視力維持など健康維持に働きます。
ダイエット効果
ビタミンB群は糖質・脂質などを分解し効率よくエネルギーに変える働きがあり、クロロゲン酸には肝臓で脂肪を燃焼させる働きがあります。
それにより脂肪の蓄積を抑制し、肥満予防や改善に効果が期待できます。
免疫力を向上させ、疲労回復や風邪予防
ビタミンCは寒さや細菌への抵抗力を上げる働き、ビタミンAには喉や肺などの呼吸器系統を守る働きがあり、咳を抑えたりと風邪予防に貢献します。
ビタミンB群は糖質・脂質・タンパク質などを分解しエネルギーに変える働きに関係しているので、神経や筋肉にエネルギーを運び、また、リンゴ酸やクエン酸なども含まれるているので、疲労回復効果にも期待がもてます。
むくみ解消
含まれるカリウムには、摂りすぎた塩分を体の外に排出する働きがあるので、高血圧予防やむくみ解消に役立ちます。
びわの選び方・保存方法
選び方
形が左右対称にふくらんでいて、しっかりと鮮やかに色づき、ヘタがしっかりして皮にハリがあるもの。うぶ毛や白い粉のようなブルームが残っているものが新鮮です。(ただしブルームは、袋がけして栽培しているものもあり、袋から出す時落ちてしまっていることもあります。)
皮に傷が付いていたり、うぶ毛がとれているものは収穫してから日が経っているモノ。
ビワは追熟せず傷みが早い果実なので、もぎたてが一番美味しいそうです。
保存方法
冷蔵に弱い果実なので、常温保存で風通しのよい涼しいところに保存。そして購入したら出来るだけ早く(2~3日以内)食べるようにしましょう。
常温の方が甘さを感じるそうですが、冷たくして食べたい時は、食べる2~3時間前に冷蔵庫で冷やすとよいそうです。
食べる時は軸を持っておしり(花落ち部分)から皮を剥くときれいに手で剥けます。
皮を剥いたら、ビワに含まれるβ-カロテンやポリフェノールなどはすぐ酸化し変色しやすいので、すぐに食べるようにしましょう。レモン汁を振りかけておくと、少し長持ちします。
ゼリーやジャムに加工したり、果実酒にしても美味しくいただけますね。
ビワの葉の効能
果実を食べるようになる以前から、民間療法として利用されてきたビワの葉。
葉には、抗酸化作用のあるポリフェノールの一種・タンニンや、免疫力向上・血流改善・咳や痰を抑える作用のあるサポニンが含まれています。
漢方薬のビワヨウ(枇杷葉)
漢方薬にもビワヨウというのがあり、名前のままビワの葉を乾燥させたもので、鎮咳・去痰・利尿・健胃薬として、長びく咳、暑気あたり、浮腫などに用いられてきました。
また民間薬として、皮膚炎やあせもなどの皮膚トラブルに対し、あぶったものをそのまま患部にあてたり、煎じた汁を湿布したり、浴剤としても用いられています。
びわの葉茶「枇杷葉湯」
枇杷葉湯は、ビワの葉を乾燥させて肉桂・甘草・莪蒁(ガジュツ)・甘茶などを合わせて煎じたもので、江戸時代には晩夏の季語になるぐらい盛んに飲まれていたそうです。
その煎じ湯はのどの渇きを潤したり、夏バテで疲れた体をいたわるだけではなく、食中毒の防止、下痢止めの薬としても飲まれていたようです。
ビワの種は食べないようにしましょう
以前「ビワの種に含まれるマミグダリンという成分が、ガン治療に有効だ」という情報が流れていたそうですが、国立健康栄養研究所での臨床研究の結果、現在では「効果がない」と否定されているそうです。
マミグダリンにはシアン化合物が高濃度で含まれていて、これを食べ胃腸で分解されると青酸という有害物質が発生し、大量に摂取すると健康被害や、最悪の場合死亡するおそれがあるのだそうです。
「ビワの果実を食べた場合、種まで食べることは稀だと思われますが、種を乾燥させ粉末に加工させた食品の場合は、一度に大量に食べてしまうこともあり危険性が高まりますので気をつけましょう」と農林水産省も呼びかけています。
まだ成熟しきっていない若い緑色の果実にも含まれているので、鮮やかな黄橙色に成熟したものを食べるようにしましょう。
ただし、ビワの種をホワイトリカーなどの酒に長時間漬け込むと毒素が分解されるので、一度に大量に飲まなければ大丈夫だそうです。
ほのかに杏仁の香りがして、通の間で好まれているようです。
ビワの花
開花は12~2月。
枝の先に小さい白い花が固まって咲きます。
木枯らしが吹く寒い冬の時期、道を歩いていてほんのりと甘い香りを感じたら、近くでビワの花が咲いているかもしれません。
出典・参照させていただいたサイト:
旬の果物百科 ビワ
KAWASHIMAYA 読みもの びわ
公益財団法人 東京生薬協会
ビワ-Wikipedia