貝類のなかでは特有のクセがなく、淡白な感じなのに深い味わいのあるホタテ。
生でも刺身などで食べられていますが、炒めたり焼いたり和洋中どんな料理にも合うということで、苦手な人はあまりおられないのではないでしょうか?
とくに日本産のホタテは、質が高いうえに大きいということで、海外でも人気です。
今回は、そのホタテに含まれる栄養素とその効能の話を中心に紹介いたします。
ホタテとは

ホタテはウグイスガイ目イタヤガイ科に分類される貝殻が丸い扇のような二枚貝で、1個の大きな貝柱があるのが特徴。
低い海水温を好み、日本では太平洋側が千葉県、日本海側が能登半島より以北の、水深10~30メートルの砂地に生息しています。
主な産地は北海道や青森県など。
天然のホタテの旬は年に2回あり、貝柱が大きく育つ5~8月と、産卵前の2~3月頃。
現在は海洋資源保護もあり、ほとんどが天然稚貝を漁業海域などで採捕し、静穏な海域で1年程成長させたものを海底に放流し、2~4年自然成長させた貝を漁獲しています。
養殖も盛んに行われています。
ホタテ貝の解剖図

貝柱(閉殻筋)
体の中で最も大きい器官で、食用としてもメイン部分。
ホタテ貝も他の二枚貝のように生まれた時は2つありますが、大きくなるにつれ1つが退化し残った1つが大きくなります。
鰓(えら)
呼吸をしたり、海水中からエサを取り込んだりしています。
加熱すると食べることができますが、生では食べられない部分です。
ヒモ(外套膜)
貝殻の形成をしている、通称・ヒモ(外套膜)と呼ばれる部分。
筋肉の塊なので、高タンパク質でタウリンやビタミンB1などの栄養がしっかり詰まっています。
さばきたての新鮮なものは、ヌメリを取らなくても刺身で食べられますが、サッと湯通しすると臭みがなくなります。
少し硬さはありますがコリコリとしてあっさりとした食感。
よく、乾き物として酒のつまみになっていますね。
黒いものが点々とありますが、これは眼で明るさを感知しています。80個ほどあるそうです。
生殖巣
時期(産卵期)により大きくなったり、小さく見えなくなったりします。
白っぽいクリーム色が雄、赤くオレンジ色が雌です。
ウロ(中腸腺)
蝶つがいの近くにある黒い部分。
「貝毒」が溜まりやすく、食中毒(下痢や麻痺)を引き起こす可能性があります。
定期的に検査が行われており規制値を超えるものは出荷されませんが、万が一があるので、刺身や調理する前に取り除くのが無難です。
この部分を除去すれば(生で食べる時は鰓部分も)、安全に食べられます。
稚貝(ベビーホタテ)
サイズが小さいホタテ貝も店頭で売られていますが、これは生後1年ほどの貝。
養殖などでホタテを育てていく過程で間引いていく必要があり、出荷されたものです。
成貝と比べると小さいですが、含まれる栄養素は同じです。
しかも、成貝のヒモ部分は少し硬くなっていますが、稚貝はまだ柔らかいので貝柱と一緒に食べられます。
ウロ部分も成貝ほどは気にしなくてもいいようです。

ホタテの栄養価
ホタテ(生)可食部100gあたり66kcal。
三大エネルギー産栄養素では、タンパク質が断トツに多く、脂質と炭水化物はあまり含まれていないので、高タンパク質低カロリー。
他に主に含まれる栄養素は、ビタミンB群のビタミンB1・ビタミンB2・ナイアシン・パントテン酸・ビタミンB12・葉酸、ビタミンE、ミネラル類のナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム・リン・鉄・銅・亜鉛などです。
参考:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
ホタテの美味しさのもとはグリコーゲン
貝柱に多く含まれるグリコーゲンは、糖タンパク質の一種でホタテの甘みのもとです。また、グルタミン酸やイノシン酸などのうま味成分も含まれているため、その相乗効果でより美味しさが増します。
グリコーゲンは、普段は肝臓や骨格筋などに蓄えられ、運動を行う際のエネルギー源、あるいは空腹時の血糖維持に利用され、疲労回復に役立ちます。
肝臓の働きを助けるアラニンというアミノ酸も含まれています。

他の栄養素も見ていきましょう。
タンパク質
タンパク質はエネルギー源になるだけでなく、筋肉や皮膚・髪・爪・内臓など体のさまざまな組織をつくる材料として欠かせない栄養素です。
他にも酵素・ホルモン・免疫物質として、体の機能を調節する大切な役割があります。
不足すると免疫機能が低下して抵抗力が弱くなり、病気にかかりやすくなったり、筋力が低下したりすることだあるので、積極的に摂取することが大切です。
タウリン
アミノ酸の一種であるタウリンの働きは、胆汁の生成や神経系の伝達、浸透圧の調整、解毒作用、細胞膜の安定化、血圧のコントロール、そして心臓機能の強化や肝機能のサポートです。
その結果タウリンを摂取すると、疲労回復や二日酔いの緩和などの効果を感じます。
タウリンは、よく栄養ドリンクにも配合されていますが、この効果への期待からですね。
ビタミンB群
ビタミンB群は、三大栄養素のエネルギー代謝を行うのを助ける補酵素としての働くのが主な役割の水溶性ビタミンです。
ビタミンB1
ビタミンB1は糖質のエネルギー代謝を助ける補酵素として働きます。ブドウ糖からのエネルギー産生を助けるので、脳や神経の働きを正常に保ちます。
また、疲労物質である乳酸を溜まりにくくするため疲労回復に役立ちます。
ビタミンB2
ビタミンB2は糖質・脂質・タンパク質、その中でもとくに脂質のエネルギー代謝を助ける補酵素。
皮膚や髪・爪・粘膜などの再生に役立ち「発育のビタミン」「美容のビタミン」ともいわれています。
ビタミンB12
赤血球を生成するのを助ける補酵素。
細胞の遺伝物質である核酸(DNA・RNA)やタンパク質の生合成にも関わっていて、末梢神経を正常に保つ働きもあります。
葉酸
葉酸も赤血球を生成するのを助ける補酵素で、ビタミンB12と共に「造血のビタミン」と呼ばれています。
正常な核酸(DNA・RNA)の合成にも関わり、胎児の成長に伴う細胞分裂にも関わるので、とくに妊婦さんに積極的に摂って欲しいビタミンです。
ナイアシン
三大栄養素のエネルギー代謝を助ける補酵素として働きます。
細胞の生まれ変わりを助ける働きもあり皮膚や粘膜の健康維持や、毛細血管を広げる働きで血行促進も。
アルコールの分解にも関わる成分なので、二日酔い予防にもつながります。
パントテン酸
コエンザイムAという補酵素の構成成分で、これも三大栄養素のエネルギー代謝を助ける補酵素。
「抗ストレスホルモン」とも呼ばれ、摂取するとストレスを和らげる効果、また、免疫抗体や善玉コレステロールの合成の促進にも関わっています。
ビタミンE
強い抗酸化作用を持つ脂溶性のビタミンで、過酸化脂質の生成を防ぐのに役立ちます。
また、動脈硬化や血栓の予防、悪玉コレステロールの減少、血圧を低下させる、細胞膜を健全に保つなどの働きがあるので「老化防止ビタミン」とも呼ばれています。
紫外線や外的刺激から肌を守るバリア機能を安定させます。血行促進作用もあり、皮膚の新陳代謝を高め、シミ・ソバカスの原因になるメラニンの排出を促してくれます。
カリウム
カリウムは、ナトリウムとともに細胞の浸透圧を維持しています。
現代人が摂り過ぎ傾向にあるナトリウム(食塩)を体外に排出する作用があるので、血圧を下げる効果が期待できます。
また、神経刺激の伝達や心臓機能・筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応を調節するなどの働きもしています。
鉄・銅
体内に入った鉄は、ヘモグロビンとなり酸素の輸送に関与し、筋肉中に酸素を蓄えるミオグロビンの構成成分になります。
銅はその鉄の血液中の輸送や代謝に関わっていて、銅が不足するとヘモグロビンが作れなくなるので、鉄と共に必要な成分です。ただし現代の日本人は銅は摂り過ぎ傾向にあるので、不足することは心配しなくてもいいようです。
亜鉛
何百という酵素の働きを助け、ホルモンの合成や分泌の調整、免疫反応の調節、DNAやタンパク質の合成などに作用し、身体の成長と維持に必要な栄養素。
味覚に関わる細胞をつくる働きもあるので不足すると味を感じにくくなったり、お腹の調子が悪くなったりします。
亜鉛は不足気味な人が多いので、積極的な摂取を心がけた方が良いそうです。
効率よくホタテの栄養を摂るには

出来ればウロと鰓以外は全部食べる
貝柱だけで売られていることも多いホタテですが、ヒモ部分などにもミネラル類が多く含まれています。
出来ればウロと(生食の場合は鰓部分も)以外は丸ごとを食べた方が栄養素は効率的に摂取できます。
生で刺身などで食べる場合も、洗うのなら軽く
ホタテの主な栄養素であるビタミンB群やカリウムは水溶性なので、水に流れ出てしまいます。
しかも、うま味成分も表面部分に多くあります。
ウロと鰓部分さえ取り除けば、食中毒などの心配もまずありませんので、水で洗わずそのまま調理しても大丈夫です。
気になるようであれば、軽く洗いよく水分を拭き取りましょう。
水溶性の栄養素が多いということで、煮たりする料理では汁ごといただくようにすると、栄養がくまなく摂れることになります。味噌汁やスープ・シチュウなどに入れると効率的ですね。
他の食材と一緒に
ホタテには様々な栄養素が含まれていますが、足りないものもあります。
例えばビタミンC。
ビタミンCはコラーゲンの合成や、亜鉛の吸収を助けるそうです。ビタミンCを多く含むレモンやブロッコリーなどの野菜と一緒に食べると効率よく栄養が摂取できます。
どんな食材でもいえることですが、一つの食材で栄養が事足りるということはないですし、他の栄養素との相乗効果も期待できますので、いろいろな食材と共に食べるようにしましょう。
干し貝柱の栄養価は生より高い

ホタテの貝柱にはタンパク質が約20%もありますが、茹でて天日干しして干貝柱にすると約65%にもなるそうで、超高タンパク質食材です。
貝柱にはグリシン・アラニン・グルタミン酸・イノシン酸といったうま味成分のアミノ酸が、たっぷり含まれていることは先に記しましたが、他にも様々な栄養素が含まれています。
生の貝柱を乾燥させた干貝柱は、ホタテ本来のうま味や栄養価が更に凝縮されているので、食材として美味しいだけではなく、古くから漢方薬としても用いられてきました。
そのままでも食べられますが、水で戻して調理することもできますね。
戻し汁にはうま味があるので、出し汁としても美味しく利用できます。戻す際はひと晩ほどの時間をかけてじっくり戻すと、うま味も損なわないそうです。
殻付きのホタテを選ぶ場合
店の鮮魚売り場、または通販などで殻付きのホタテを購入することもあるでしょう。
新鮮な二枚貝のホタテは、口が少し空いていて、触るとすぐしっかり口を閉じるものを選びましょう。
貝柱の身が厚くて透明感のあるものが活きがいいホタテです。
刺身など生で食べる場合はウロと鰓部分は取り除いてからさばき、焼く場合は貝殻の色の濃い左殻を外し、ウロ部分を取り除いてから焼きましょう。
保存方法
殻から貝柱・ヒモ・卵の部分を外し、軽く洗ったら薄い塩水にさっとくぐらせ、水気をよく拭き取ってください。
冷蔵保存は、一つずつラップで包み冷蔵庫のチルド室で。2日目ぐらいまでは刺身でも食べられますが、食べる前に様子を見ましょう。
冷凍保存は、それぞれラップで包んだものをファスナー付きのフリーザーパックに入れて保存します。保存目安は1ヶ月ほどです。
まとめ
ホタテは、あっさりとしていながら甘みが多く、大人だけでなくお子さんにも人気がある海の幸。
美味しいだけでなく、タウリンや亜鉛・カリウムなど、カラダの健康にも役立つ栄養成分が豊富に含まれていることが分かりました。
お刺身など生での食用だけでなく、煮ても焼いても、和洋中問わずいろいろな料理で食べられる万能食材というのも、嬉しいポイントですね。

出典・参照させていただいたサイト:
Macaroni おいしいだけじゃない!ホタテの栄養と効率良く食べる方法
PREZO ホタテに含まれる栄養素がすごい!知って納得の健康効果
根室市 根室産ホタテミニ百科
北海道ぎょれん ほたての栄養
wikipedia ホタテガイ
美的.com ホタテの「栄養」と「糖質」まとめ