ニンニクを刻んで炒めていると、独特の香りが漂い、なんだか食欲が湧いてきますね~。
ニンニクは、生で薬味としても、炒めても、和食・洋食・中華料理を問わず「何でもござれ!」の使い勝手の良い食材。
疲労回復や滋養強壮のスタミナ食材として有名ですが、どういう栄養素が含まれているのでしょうか?
ニンニクとは
ニンニクはヒガンバナ科ネギ属の多年草。
玉ねぎなどと同じように根もとの球根(鱗茎)部分の食材です。
中央アジアのキルギス地方が原産地とされ、紀元前3000年以上も前の古代エジプトやギリシャなどでは、すでに栽培されていたそうです。
あのピラミッドを築いた労働者達に、厳しい労働に絶えられるように与えられていた様子が、ピラミッド内部の壁画に描かれているそうで、疲労回復や滋養強壮に効果があることは、大昔から知られていたようです。
日本に入ってきたのは奈良時代頃ですが、肉や油をほとんど摂る習慣がなかった日本では刺激が強すぎ、またニオイがキツイのであまり普及せず、薬や強壮剤として食べるぐらいだったようです。
大きく普及したのは第二次世界大戦後。洋食や中華料理を食べることが多くなってからだそうです。
日本の市場に出ている生鮮にんにくの約65%が輸入されたもので、中国産がその90%を占めていますが、スペイン産もあります。
日本産では青森県が一番多く全体の70%ほどで、国内各地でも栽培されています。
ニンニクの種類
国産は中国産に比べて多少高額ですが、色が白く1粒1粒がしっかりとしており、大きくて均等、ホクホクとしていてうま味が強く、マイルドな味とニオイで、値段が高いだけの良さがあります。
福地ホワイト六片
青森県で栽培されている品種で、名前の通り雪のように白く鱗茎がおおむね6つに分かれています。
一粒一粒が大きく、表面に張りがあり実が引き締まり、香りの良さが特徴です。
最上赤にんにく
最上地域で古くから大切に受け継がれてきた伝統野菜のにんにくで、外皮が赤紫色で、大粒で貯蔵性に優れているのが特徴。
生で食べると一般のニンニクより辛みが強いですが、加熱すると辛味が甘味に変わり、ほくほくとした食感になります。
一片種にんにく
一片の大きさは、直径約25mm~50mm。ニンニクの風味がやや控えめでわずかに香りがあります。
外観はタマネギに似ていて、白い皮に紫色の縞模様があることが多いです。
ジャンボニンニク
ジャンボニンニクはネギ科ネギ属に分類される鱗茎で、厳密にはニンニクとは別種のリーキの仲間です。
大きさは200g位から大きいものだと800gになるものもあります。
ニンニク特有の臭いが少ないのが特徴で、無臭ニンニクと呼ばれる品種もあります。主に薬味や香り付けに使いますが、大きさを活かして丸ごと食べたりします。
ニンニクに含まれる栄養素
ニンニク可食部(おろし)100gあたりのカロリーは170kcal。
含まれる栄養素は、タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミンB群(B1・B2・ナイアシン・ビオチン)、β-カロテン、ミネラル類のナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム・リン・鉄・亜鉛・銅・マンガン・ヨウ素・セレン・クロム・モリブデン、香り成分のアリイン(アリシン)。
出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
タンパク質・脂質・炭水化物が含まれますが、主食としては食べないので、エネルギー源にはなりません。
ミネラル類もまんべんなく含まれていて、とくにリンが多いですが、これもエネルギー源にはなりませんね。
では何がニンニクを疲労回復や滋養強壮のスタミナ食材にしているのかというと、香り成分のアリイン(アリシン)、そしてスコルジニンの効力が大きいです。
リン
まずリンですが、これの85%ほどはカルシウムやマグネシウムとともに骨や歯を作る成分になり、15%ほどはエネルギー生成をサポートしたり細胞のphバランスを正常に保つなど、健康な体維持のために働く成分です。
しかし、現代の食生活では不足することはまれで、むしろ摂りすぎに注意した方がいい成分になっています。ニンニクは一度に沢山食べることはないので、あまり気にしなくてもいいでしょう。
アリシン(アリイン)の働き
アリインはニンニクやネギなどに含まれる成分で、イオウを含むアミノ酸の一種です。
とくにニンニクに多く含まれており、擦る・刻む・潰すなどで細胞を壊したり加熱すると、アリナーゼという酵素と反応しアリインが分解され、香り成分であるアリシンに変化し、ニオイを発するようになります。
皮付きで丸いままの生のニンニクが臭わないのは、まだ含まれる成分が無臭のアリインだからです。
アリシンには疲労回復だけでなく、様々な体への効能があるとされています。
疲労回復・滋養強壮
ニンニクの疲労回復・滋養強壮効果は、アリシンの働きによるものです。
アリシンは、糖のエネルギー代謝を助ける補酵素のビタミンB1と結びつき、体を動かすエネルギーを作り出します。
ビタミンB1は、別名「疲労回復のビタミン」と呼ばれるように、エネルギーを作り出すことに欠かせない成分です。ビタミンB1が不足すると、倦怠感や動悸・息切れなどの症状が現れます。
アリシンはビタミンB1と結びつくとアリチアミンという物質になり安定化します。
ビタミンB1は水溶性ですぐに体外に排出され、体内に長く貯蔵できませんが、アリチアミンはビタミンB1と同様の効果がありながら、血液中で長時間維持されます。さらに脂溶性で吸収されやすいのです。
よって、ビタミンB1とアリシンを一緒に摂ることで、疲労回復・滋養強壮効果を長く継続させることができます。
血液の流れを正常にする
アリシンを含むイオウ化合物には、血液が固まりやすくなるのを防ぎ、血栓が作られないようにする働きがあります。
血栓が作られないことで、動脈硬化や心筋梗塞・脳梗塞の予防にもつながります。
また、血行を促進する効果もあるので、血液をサラサラの状態に保ち新陳代謝を高めてくれます。
足の先まで血液が巡るようになるため、足の冷えや冷え性の改善に役立ち、身体を温めてくれます。
血糖値の上昇を抑える
血糖値は血液中のブドウ糖の量を示す数値で、上昇し過ぎると糖尿病を引き起こしやすくなります。
糖尿病とは、摂取した糖が体内でうまく細胞に取り入れられずに血液中に残ってしまうことで、血糖値が高くなってしまう病気です。
糖尿病が悪化すると動脈硬化を引き起こし、心疾患や脳卒中などの危篤な病気にもなる危険性があります。
アリシンはビタミンB1と結びつくことで、血糖値を正常に維持するホルモンのインスリンの分泌を促し、血糖値の上昇を抑える効果があるとされています。
血中コレステロールの上昇も抑える
コレステロールは脂質の一種で、細胞をつくるのに重要な成分ですが、摂りすぎると血液中のコレステロールが増加し、これも動脈硬化を進ませる危険があります。
アリシンは、血糖値だけでなく血液中のコレステロール値の上昇を抑えるのにも効果があるとされています。
免疫力の低下を防ぐ
アリシンには、活性酸素から細胞が傷つけられるのを守る抗酸化作用もあります。
細胞が傷つけられ酸化すると、免疫力が低下し、身体や血管の老化が進んだり、シミやシワなど肌あれなどの肌トラブルが起こったり、生活習慣病やさまざまなトラブルの原因になってしまいます。
抗酸化作用で活性酸素の増加や免疫力の低下を防ぐことは、老化防止や病気にかかりにくい健康な身体をつくることに貢献します。
感染症を予防する
アリシンには抗菌・静菌という強い殺菌力があります。
風邪の予防に役立つだけでなく、サルモネラ菌・チフス菌・コレラ菌をはじめとする病原菌から体を守る働きがあり、食中毒を防ぐための薬味としての作用もあります。
食欲増進
ニンニクの力を最大限に引き出すには、ビタミンB1が水溶性で熱に弱い性質なので、茹でたり加熱すると半減するため、生で食べることがオススメと言われています。
ですが、ニンニクを生で食べると辛みなどの刺激があるので、苦手とする人もおられるでしょう。
それに炒めたり焼くなどといった加熱調理をすると、ニンニクは甘くて香ばしい独特のニオイを放ちます。
このアリシンが放つニオイは、唾液や胃液などの消化液の分泌を促し胃腸の働きを活発にさせるので、食欲を増進させ、また消化吸収を高めるという良いことも期待できます。
効果は多少減少するかもしれませんが、自分の好みで美味しく食べることが一番のような気がします。
スコルジニンの働き
スコルジニンは、アリシンを加熱することで生まれる成分です。
体内の栄養素の燃焼を活発化させてエネルギー生産の効率を高めてくれます。
そうすると、新陳代謝が活発になり、血行やホルモンの分泌が促されるため、冷え性改善に効果があるといわれています。
またアリシンと同様に、血流をスムーズにする働きや悪玉コレステロールを低下させる働きもあります。
悪玉コレステロールの増加が抑えられると、血液が固まりにくくなるので、動脈硬化や心筋梗塞・脳梗塞などの予防にも効果が期待できます。
食べ過ぎには注意しましょう!
ニンニクは上記の通り、健康作りに役立つ食材です。
しかし刺激の強い食材のため、食べ過ぎると下痢や腹痛など体を壊してしまうこともあります。
殺菌作用があるのは良いのですが、過食してしまうと大切な善玉菌まで殺してしまい、腸内環境のバランスが崩れて腹痛や下痢などの原因になるのだそうです。
腸内にはビタミンを生成してくれる菌なども存在しますが、その菌も殺してしまい、肌荒れや口内炎、皮膚炎による痒みや湿疹などを引き起こしてしまうこともあるそうです。
また、体臭や口臭の原因になったり、胸焼けや胃のむかつきなどの胃粘膜障害も起こしやすくなります。
一度に食べすぎて身体が不調になったら本末転倒ですよね。
1日に食べる量は生なら2片、加熱したものなら4片まで、2~3日に一度程度が推奨されています。
新鮮なニンニクの選び方
輸入物もあり一年中出回っているニンニクですが、国産の収穫は5月中旬から6月。
新ニンニクはみずみずしく、まろやかなのにうま味が濃くて美味しいので、旬の時期に味わいたいですね。
選ぶ際のポイントは2つです。
実に固さがありつつ綺麗な丸みのもの
全体がふっくらと丸みを帯びているものは、水分を多く含んでいます。
ずっしりと重みを感じるもの
手で持ってみて重みを感じるものを選びましょう。同じくらいの大きさでも重い方が水分をたっぷり含んでいます。
保存方法
ニンニクは、すぐ食べるのであれば常温でも保存できます。しかし水分がどんどん抜けていくので、それだけ栄養も美味しさも減っていきます。
常温保存では、2~3週間を目処にしましょう。
冷蔵保存
冷蔵庫で保存する場合は、必ず外皮を剥いてからジップ付きの保存袋に入れ、冷蔵室かチルド室で保存。乾燥やニオイが気になる時は、1片ずつキッチンペーパーで包んでから保存袋へ。
これで1ヶ月ほどは保存できます。
外皮を剥き冷蔵室かチルド室で保存するのは、外皮付きのまま野菜室で保存すると、野菜室は10℃ほどあるので芽が出てきてしまうこともあるからです。
醤油などに漬け込んでから冷蔵する
内皮を剥いて、醤油などと共に容器に入れ冷蔵するという方法もあります。
薄切りやみじん切りでもできますが、ニオイが強いので、しっかり密閉できる容器に入れましょう。1週間ほどは保存できます。
冷凍保存
外皮を剥き1片ずつに分けます。一度に使う2~4片ごとラップに包みジップ付きのフリーザーパックに入れ冷凍しましょう。
ニンニクは冷凍しても固くならないので、調理する時もそのままカットできます。
薄切りやみじん切り・擦りおろしてからも冷凍保存できます。
保存目安は2週間程度です。
芽が出たニンニクも食べられるのか?
すぐ食べる予定で常温で置いていて、気がついたら発芽していたという経験をした人もおられるでしょう。
「この芽には毒があるのか?食べてもいいのか?」と悩まれたりしてないでしょうか?
結論を言えば、ニンニクの芽には毒は無いそうです。
ニンニクの栄養は発芽に使われて少なくなっていますが、鉄分・亜鉛・カルシウム・GABAなどの栄養素は増えているのだとか。
発芽ごと調理して食べても大丈夫です。
ちなみに、「ニンニクの芽」という野菜も売られていますが、あれは正確に言うと「芽」ではなく、それから育った「茎」の部分です。
出典・参照させていただいたサイト:
charging Life にんにくのすごい効果効能とは?
トクバイニュース にんにく
シンクヘルスブログ にんにくの栄養と効能効果
ふるさと納税DISC VERY にんにくで滋養強壮!
charging Life 毎日でも摂りたいにんにく、芽が出てしまったものは栄養には問題ない?