今では水煮の真空パックや缶詰なども多く売られ、1年中手に入る筍ですが、旬の春に皮付きで生のまま売られているものは香りも良くて、春を感じる食材のひとつですね。
筍は「竹の子」とも書き、名前の通り竹の地下茎から出てきた若い芽、竹の子供です。
成長がとにかく速く、地表に顔を出したかと思えば、1日に数センチという勢いで伸び、10日も経てば1メートルを超えるそうです。
漢字の「筍」は、10日間を意味する「旬」から来ていると言われています。
日本で一番流通している筍は孟宗竹という種類で、これは江戸時代中期に中国から伝来したされています。
孟宗竹は寒いのが苦手で、東北より北ではあまり生育しないようです。
孟宗竹が日本に入ったのは江戸時代ですが、その前から別の種類の竹はいろいろあったようで、平安時代には竹から可愛いかぐや姫も生まれていますね♪。
他にも「根曲りだけ」や「淡竹」など、食用されている筍は10種類以上あるそうです。
今回は食物繊維は豊富そうだけど、他にも役に立ちそうな栄養があるのか、あわせて「アク抜き」の方法などを紹介します。
主な筍の種類と特徴
孟宗竹(もうそうちく)
一般的に一番流通している筍になります。
地下40cmほどの深さを横方向に這っているいる地下茎から芽を出します。
旬は3~5月頃。皮は黒斑と粗毛に覆われ太めで香りがよく、肉質は柔らかなのが特徴。
寒冷地では生育しにくいので、主に関西地域や九州で栽培されています。
土の中ではエグミ(シュウ酸など)はほとんどありませんが、掘り採って時間が経つほど固くなりエグミが強くなっていくので、できるだけ早くアク抜きをする必要があります。
選び方
穂先が土から出て日に当たると、風味が落ちどんどんエグミ(アク)が増えていきます。
ですので「タケノコ堀り」と言われるように、穂先が土から出るか出ないかの時に土を掘って収穫されているのがほとんどです。
エグミの少ない筍は、穂先が濃い緑色ではなく黄色~薄黄緑色で、ずんぐりと重みがあり皮がツヤツヤしているものです。
根元のイボが黒赤色をしているものは少し時間が経っていますので、できるだけ避けるようにしましょう。
根曲がり竹(姫竹)
長野県から北、東北地方や北海道などの涼しい地域で育つ小さなタケノコです。
チシマザサという笹のタケノコで、旬は5月下旬から7月頃。
雪の重さで横に伸びてから弓なりに立ち上がるのが、名前の由来。
土から少し顔を出した時に収穫するので、長さは20cmほどで細長い形をしています。
優しい香りがあり、穂先は柔らかく根元はコリコリとした食感です。
アクは孟宗竹より少ないので、買ってすぐの時はアク抜きせず、皮を剥きそのまま調理できますが、収穫されてから時間が経つと徐々に風味が薄れアクが強くなっていきますので、早めに食べるようにしましょう。
淡竹(はちく)
旬は5~6月頃。皮の色が少し赤茶がかっていてうぶ毛がなく、孟宗竹より細い形をしています。
地面から20~30cm位までのものを採りますが、アクが少ないのでアク抜きの必要がなく、皮を剥いて水から下茹でできます。
あっさりとした風味で、孟宗竹と同じように調理できます。
寒さにも強く北海道でも育ちますが、出回り量が少なく、あまりお目にかかれないのが残念です。
真竹(まだけ)
旬は孟宗竹より少し遅く5~7月頃。細長く皮にうぶ毛がなく黒い斑点模様があります。
地面から30~50cm位のものを採ります。採ってすぐの頃はアクが少ないので、淡竹と同じようにアク抜きをしないで調理できます。
皮は中華ちまきやおむすびを包むのに、よく使われていますね。
筍に含まれる注目の栄養成分は
いろいろな筍がありますが、ここでは食べる機会が多い孟宗竹を中心に紹介します。
筍(可食部・生)100gあたりのカロリーは26kcal、糖質1.5g、脂質0.2g。
おまけにコレステロール含有量ゼロという、とても低カロリーでヘルシー、ダイエット向きの食材。
そして、食物繊維がとても豊富です。
参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
いろいろな栄養素を持っていますが、注目したいのが、アミノ酸の一種であるチロシン・アスパラギン酸・グルタミン酸、パントテン酸、カリウム・亜鉛などの、アンチエイジングや体の調子を整えてくれる働きが期待できる成分です。
脳の働きを活発にするチロシン
切ったり茹でた筍に白い結晶のようなものが見られますが、あれがチロシンです。
神経細胞の伝達物質であるドーパミンやアドレナリン・ノルアドレナリンなどの原料になり、脳の働きを活発にする栄養素です。
自律神経の調整を行う甲状腺ホルモンや皮膚や髪の毛の色素になるメラニンの材料にもなり、白髪予防やストレスの緩和にも働きます。
代謝を促進するアスパラギン酸
体内でエネルギーを生み出すにはカリウムやカルシウムなどのミネラルが必要です。それらを体内に摂り込むのをサポートするのが、アミノ酸の一種でうま味成分でもあるアスパラギン酸。
なのでアスパラギン酸を摂ると、エネルギー代謝が促進され、体調を整え疲労回復へと導いてくれます。
免疫や筋肉を強化するグルタミン酸
グルタミン酸もうま味成分で、胃や腸の保護する粘膜を作り消化吸収を促進する働きがあります。
またリラックス成分であるGABA(ギャバ)を生成したり、免疫や筋肉を強化したり、アンモニアの排出や体脂肪の代謝を促すなど、ヒトの生命維持に大切な働きをします。
エネルギー産生をサポートするパントテン酸
パントテン酸は水溶性ビタミンのひとつで、糖質・脂質・タンパク質の代謝に関与しエネルギー産生に大事な栄養素です。
善玉コレステロール・ホルモン・抗体の合成にも関与していることから、お肌や粘膜の健康維持を助ける働きもあります。
むくみ解消にカリウム
体内に増えすぎたナトリウム(塩分)を排出させ、水分量のバランスを一定に保つ働きがあるため、むくみ解消や高血圧予防に効果が期待されます。
味覚を正常に保つ亜鉛
骨や筋肉・内臓など様々な細胞の生成と新陳代謝、エネルギー代謝に関わり、体内の様々な働きを正常に保つようにサポートする働きがあります。
とくに舌にある味細胞は、次々と細胞を生まれ変わらせているため常に亜鉛を必要としています。亜鉛が不足すると味覚異常が起きることがあります。
腸の調子を整える食物繊維
食物繊維には水溶性と不溶性がありますが、筍に多く含まれているのは不溶性食物繊維。
不溶性食物繊維は水に溶けずに水分を吸収し膨らみ、腸を刺激してぜんどう運動を活発化させ、排便につなげます。
その時、体にとって不要な老廃物を吸収して水分と一緒に排出してくれます。
筍(孟宗竹)のアク抜き
春になると、普通のスーパーでも皮付きの生の筍が売られています。アク抜き済みの水煮の商品も売られていますが、生の筍は香りも良いですし、時間があれば「アク抜き」からやってみるのもいいですね。
皮付きの生の筍を買った時すぐにアク抜きをするのは上記したとおりで、収穫されるとすぐにエグミの元となるアクが出始め、時間が経てば経つほど、どんどん強くなっていくからです。
よくテレビのグルメ番組などで、山で掘り出したばかりの筍を刺身で「美味い!」とバクバク食べるシーンがありますが、あれは採ったばかりだから美味しいのです。
店で売られている時はすでに時間が経っていますので、アク抜きが必要です。
用意するものは、筍(皮付き1本、約250g)に対して、米ぬか1カップ、赤唐辛子1本。
1. 外側の汚れが付いた皮を2~3枚だけ剥きます。
この時皮を全部剥いてはいけないのだそうです。皮が付いていた方が、うま味を逃さず、じっくりと時間をかけて茹でることができるので、アクがよく抜けるのだそう。
2. 筍の穂先3cmほどのところを斜めに切り落とし、さらに縦に2cmほど2本切り込みを入れます(火の通りをよくするため)。
3. 筍がすっぽり入る深めの鍋に、筍・米ぬか・赤唐辛子・全体がかぶるくらいの水を入れ、最初は強火にかけ沸騰したら弱火にして、1時間ほどじっくりと茹でます。この間、筍が浮き上がらないように落し蓋をしておき、時々アクをすくい取りましょう。
米ぬかが無い場合は、米のとぎ汁または米(無洗米はぬか部分が無いのでダメ)ひとつかみでも代用できます。
4. 根元の固い部分に竹串がスッと入れば茹で上がりですので、火を止めます。
5. そのまま、お湯が自然に冷めるまで(8時間以上)置いておきます。
置いておくことで、さらにアクが抜け、逆に抜けたうま味が筍に戻るのだそうです。
6. 筍の穂先と根元を両手でそれぞれ握り、逆方向にひねって穂先を上に引き抜く。
皮を剥いた筍は根元・中央・穂先と固さが違うので、穂先は柔らかいので和えたり汁物に入れる、根元や中央は煮物や炒め物にと、料理によって使い分けてもいいでしょう。
保存方法
アク抜きの下処理をした後、すぐに食べない時は保存しましょう。
タッパーなどに、筍の全体がひたるように水を入れ、冷蔵庫で保存。毎日水を取り替えれば1週間ほど保ちます。
もっと保存したい場合は、アク抜きしたものを煮沸殺菌した瓶に詰め、水煮にするといいそうです。
一度に食べすぎないように
上記のように、低カロリーで体にも良い成分をいろいろ持っている筍ですが、そればかりを一度に大量に食べるのは、かえって体に良くないことになる可能性があります。
不溶性食物繊維は、便のかさを増し腸を刺激して排便につなげますが、摂りすぎると腸を圧迫して腹痛を引き起こす要因になります。
またエグミの元になっているシュウ酸は、アク抜きをしても完全には取り除けないそうです。シュウ酸は結石の原因にもなりますので、摂りすぎ注意です。
さらにチロシンには脳の働きを活発にしたり白髪予防など良い効果もありますが、作り出すメラニンには、紫外線から体を守る働きもある一方、摂りすぎるとシミ・ソバカスの原因にもなります。
なんだか~、色々な食材を紹介する最後に「食べすぎ注意!」と書くことが多いなぁという感じですが、様々な栄養素がつながり合って体の中で働いているということなので、いろいろな食べ物を毎日少しずつ摂るということが体にとって良い、ということになるのでしょうねぇ。
出典・参照させていただいたサイト:
野菜ナビ タケノコ
旬の食材百科 タケノコ
未来想像webマガジン 栄養豊富!「たけのこ」
もぐうぇる 筍
Foodie たけのこのゆで方