インド原産の茄子が日本に入ってきたのは8世紀で、奈良時代には食されていたとされています。
くせのない味で他の色々な食材とも組み合わせられるため、和洋中問わず広く料理に使われている便利な野菜ですね。
長なす・米なす・賀茂なす・水なすなど種類も多く、今では一年中手に入る野菜ですが、旬は6~9月。
一番美味しいとされている時期は少し秋を感じ始める9月頃とされ、実が引き締まり味も凝縮されています。
「秋茄子は嫁に食わすな」ということわざ。「秋の茄子は美味しいから嫁に食わすのはもったいない」という嫁いびりの言葉とされていますが、「茄子は体を冷やす作用があり、また種が少ないので、子供ができないといけないから」という嫁を大切に思う言葉という説もあります。
夏になると頻繁に料理に出てきて美味しい茄子ですが、あまり栄養がないとも言われています。
本当にそうなのか、調べてみることにしました。
茄子に含まれる栄養素
全体の約93%が水分の茄子は、100gあたり22kcal、糖質2.9gと低カロリーです。
水分が多くて、カリウム以外はビタミン・ミネラルなど無くあまり栄養がない野菜と思われていますが、じつは微量ですがまんべんなく含まれています。
カリウム
カリウムは豊富に含まれています。体の中の余分なナトリウム(塩分)を排出してくれる働きで、むくみ取りや高血圧予防で有名ですね。その他にも体の熱を逃してくれる働きもあるため、暑い夏に食べると効果的です。
また、赤血球やDNAの合成を助け貧血を防ぐ働きのある葉酸も含まれるため、夏バテ予防が期待できます。
β-カロテン
体内でビタミンAに変わり、皮膚や粘膜、目の角膜の健康を維持したり、免疫力を高める働きをする色素成分のβ-カロテンも含まれています。
食物繊維
消化・吸収されずに小腸を通り大腸まで届く食物繊維は、食後の血糖値の上昇を抑える働きがあります。
腸内のビフィズス菌などの善玉菌のエサになり腸内環境を整えたり、便のかさを増やして排便をスムーズにしてくれます。
紫色の皮にあるナスニン効果
茄子の皮には、ポリフェノールの一種ナスニンが豊富に含まれています。
ナスニンはブルーベリーや赤シソに含まれるアントシアニン系の色素成分で、強い抗酸化作用があります。
老化やガン・生活習慣病のもとになる活性酸素の生成を抑え、アンチエイジングや美容に役立つだけではなく、コレステロールの吸収も抑える働きがあると言われています。
また、眼精疲労の回復にも効果が期待されています。
ナスニンは鉄イオンと結合すると色素が安定し量が増える特徴があり、色がさらに鮮やかになるので、漬け物に鉄クギなどを入れるのはそのためだそうです。
新たに発見された成分「コリンエステル」
ナスは、カリウムや食物繊維、ナスニンぐらいで、目立った栄養価がないと言われてきましたが、研究の結果2016年にコリンエステルという栄養成分が含まれていることが発見されたそうです。しかも含有量が非常に多く、他の野菜の1000倍以上!
コリンエステルとは神経伝達物質のひとつで、神経系の働きを調節して、血圧上昇を抑え改善させる効果やリラックス効果があるとされています。
ナス全体に含まれ、嬉しいことに熱にも強く、加熱料理でも成分は減少しません。
ただし鮮度が落ちると減少するそうなので、できるだけ新鮮なうちに食べるとよいそうです。
美味しい茄子の選び方
皮に張りやツヤがあり、表面に傷の無いもの。
ヘタの部分の棘がしっかりと立っていて触ると痛いようなもの(※最近は収穫する時、生産者がこの棘で怪我をしないように、棘を無くした品種も開発されているようです)。
手に持った時にずっしりと重みを感じるもの。
90%以上が水分なので、新鮮で水分を豊富に含んだものが美味しいということになります。
保存方法
茄子は低温に弱い野菜なので、温度が8~12℃の冷暗所で保存袋に入れて常温で保存するのがよいそうですが、出来れば購入したり手に入れたその日に食べるのが一番。
冷蔵庫で保存
無理な場合は、冷蔵庫だと低温障害を起こし硬くなり傷みも早くなりますので、暑い時期は冷蔵庫の野菜室で保存するようにしましょう。
その場合は茄子を1つずつラップに包み水分が抜けないようにし、それを保存袋に入れて保存すると10日ほどは保つそうです。
冷凍で保存
それより長く保存したい時は、冷凍保存しましょう。
使う大きさに合わせ輪切りや乱切りし、出来るだけ重ならないように冷凍用保存袋に入れ冷凍庫へ。保存の目安は1ヶ月ほど。
使う時は解凍させるとベチャッとなるので、そのまま加熱調理しましょう。
茄子の栄養成分を上手に摂取する調理法
皮ごと調理する
茄子特有の抗酸化作用のある栄養成分・ナスニンは皮部分にあるので、出来れば皮ごと調理して食べるのがオススメです。
紫色の皮がある方が料理を華やかにし、美味しく見せてくれるでしょう。
アク抜きする時は、水に浸ける時間は短く
一般的な茄子にはアクがあり、切ったあと黒く変色したりエグミを感じたりするので、見た目や風味のためにアク抜きをすることが推奨されています。
しかし水に浸けてしまうと、ナスニンやカリウムなどは水溶性なので、せっかくの栄養が流れ出てしまいます。水につける場合は短い時間で。
カットした切り口にパラパラと塩をふり、切り口に出てきた茶色いアクを水分と共に拭き取る方法もあります。
じつはこのアクの正体はポリフェノールの一種であるクロロゲン酸で、抗酸化作用のある成分なのです。
茄子のアクは体に悪い成分ではないので、味などが嫌でなければ、そのまま調理した方が栄養面としてはオトクです。
煮物にする場合は、汁ごと食べるようにすると、栄養を逃がさず摂ることができます。
「水ナス」や6月頃に収穫された茄子の中にはアクがほとんど無いものもあるので、それはアク抜きをせず生のままでも食べられるそうです。
カリウムは加熱すると働きが弱くなる
体の熱を逃がし体を冷やす作用のあるカリウムですが、加熱するとその働きが弱まるそうです。
暑い夏の時期に体を冷やすために茄子を食べるのであれば、漬物やサラダなど加熱しないものを食べると効果的です。ただし、冷やしすぎるのもあまりよくないので、生姜などを添えると良いようです。
漬物といえばぬか漬けの茄子が思い浮かびますが、とても良い食べ方だそうです。
ぬかのビタミンB1が茄子に染み込んでいるので、ビタミンB1も一緒に摂れます。ビタミンB1は、糖質をエネルギーに変える補酵素として働くので、茄子のカリウムや葉酸などとの相乗効果で、疲労回復に役立ちます。
低カロリーの茄子は、ダイエット向き
茄子はクセのない味わいで、色々な食材との相性も良く、炒める・煮る・焼く・揚げるなど様々な調理法で食べることのできる野菜ですね。
足りない栄養素はピーマンや肉など他の具材で補いつつ、カロリーの低い茄子を加えることで、料理のカサを増やし満腹感を得られる料理ができるので、ダイエット向きの野菜とも言えます。
煮物などにする場合、一度高温でさっと揚げてから煮るほうが旨みが出て、色の変化やナスニンの流失も抑えられるそうですが、油との相性もよく、油を吸いすぎてカロリーが増えてしまうので、この点は注意が必要です。
出典・参照させていただいたサイト:
せたがや日和 ナス
Diet Plus なす
旬の食材百科 ナス