鰆はスズキ目・サバ科に属する青魚。
北海道南部から本州沿岸、東アジアの亜熱帯・温帯域に分布しています。
成長するに従い呼び名が変わる出世魚で、50cmまでをサゴチ、60cmまでをナギ、それ以上になると鰆(サワラ)と呼ばれるようになります。回遊しながら青魚やイカなどを食べ成長し、1m以上にも大きくなるものもあるそうです。
鰆という名前なので旬は春かと思っていましたが、地域によって違うようです。
秋から冬は産卵前なので脂が乗っていますが、冬は海の深い所に生息しているので、獲れる量も少なく「寒鰆」と呼ばれ貴重なのだそうです。
関東方面では、脂も乗っていてコクがあるのにあっさり食べられると、こちらの方を好まれ「旬は冬だろう」という人もおられるようです。
春になると産卵のために沿岸に寄り、瀬戸内海などに多く集まり水揚げ量が増えます。
それで、漁獲量の増える春から初夏を旬という人もいます。
春の鰆は脂がほどよく抜け、ほんのりと甘く淡白で上品な味わいになるので、日本では冠婚葬祭などの懐石料理に欠かせない魚ですね。
西日本方面で多く漁獲されてきた魚ですが、昨今は温暖化の影響で、東北や北陸での漁獲量も増えてきているそうです。
新鮮なものは刺身やタタキ・西京焼きや塩焼き・蒸し物・煮物など、あらゆる料理で食べられ、見た目もあまり赤くないこともあり、白身魚と思われがちですが、カタクチイワシなどをエサとして食べ、時速100kmで泳ぎ回る魚なので、含まれる成分からは赤身魚になるそうです。
今回は出世魚・鰆の栄養とその効能、新鮮な鰆の見分け方などを紹介いたします。
カロリーと主な栄養成分
鰆(生)切り身100gあたり177kcal。
参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
白身魚のような淡白な味ですが、天然真鯛142kcalと比べると少し高め。しかし、サバが194kcal、イワシが217kcalなので、青魚としては低めですね。
栄養成分としては、タンパク質、脂質、ビタミンB2・ビタミンB6・ビタミンB12・ナイアシン・ビタミンD、ミネラル類ではカリウム・リン・マグネシウムを多く含みます。
良質なタンパク質
タンパク質を構成するアミノ酸のうち、体内で生成できない9種類の必須アミノ酸(イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジン)の含有率を、100を満点とし数値化したのが「アミノ酸スコア」です。9種類のうち一つでも100より低いものがあると、その数値がスコアの数値になってしまいます。
鰆のタンパク質は「アミノ酸スコア100」という、必須アミノ酸がバランスよく揃っている良質なものです。
タンパク質は三大栄養素の一つであり、筋肉や臓器、肌や髪の毛・爪といったヒトの身体を作るのに不可欠な栄養素。
エネルギー源になるほか、抗体や白血球の原料にもなり、日々使われるので、健康な身体を維持するために欠かさず摂る必要があります。
鰆のタンパク質は十分な必須アミノ酸を含んでいるため、効率的に摂取できます。
EPA・DHAなど不飽和脂肪酸が多い
青魚に分類されている鰆には、不飽和脂肪酸のオメガ3系であるEPA・DHAが含まれています。
EPA・DHAは血管や細胞膜を柔らかくし、血液をサラサラにして流れを良くする効能で知られる栄養ですね。それにより、脂質異常症や高血圧、動脈硬化や心筋梗塞・脳梗塞の予防に効果が期待できます。
他にも、アレルギー性疾患を改善する、脳細胞を活性化するなどの働きがあるとされており、認知症予防にも期待が持たれているようです。
ビタミンB群の中でもビタミンB2・ビタミンB6・ビタミンB12・ナイアシンが豊富
ビタミンB群は、三大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)のエネルギー代謝に関与している大切なビタミンです。
これの関与が無いと、タンパク質・脂質・炭水化物を上手くエネルギーに変えることができません。
鰆にはビタミンB2・ビタミンB6・ビタミンB12・ナイアシンなどのビタミンB群が豊富ですので、タンパク質や脂質を効率的にエネルギーに変えることができ、疲労回復に役立ち、お肌や髪などの健康を保つことにもつながります。
カルシウムの吸収に必要なビタミンD
丈夫な骨や歯を作るには、カルシウム、そしてリンやマグネシウムなども必要ですが、カルシウムは吸収されにくいミネラルです。
そこに脂溶性のビタミンDがあると、小腸や腎臓でのカルシウムの吸収を促進させ、血液中のカルシウム濃度を保ってくれます。
ビタミンDは日光に当たることでも体内で生成されますが、鰆にもビタミンDが含まれています。
免疫力を高める働きもあるので、健康維持や美容のためにも不足しないように摂りたいビタミンです。
魚類の中ではカリウム含有量が多い
鰆は魚類の中ではカリウムの含有量が多いという特徴があります。
カリウムは、ナトリウムとバランスをとりながら、細胞状態や血圧を調整し、常に一定したよい体内状態を維持する役割があります。
過剰摂取傾向にあるナトリウム(塩分)の体外への排出を促し、高血圧予防やむくみ解消へと働きます。
鰆の選び方
大きくなると1mにもなる大きな魚なので、魚屋やスーパーで売られているものは、ほとんど切り身の状態だと思います。
選ぶ時のチェックポイントは、皮がみずみずしくハリがあり、銀色に光っていて斑紋が鮮やかなもの。
身にできるだけ透明感があって、血合いの部分に鮮やかな赤色が見られるもの。
一般的な魚は頭の方に向かって美味しいとされていますが、鰆は尾の部分の方が美味しいとされているので、選ぶ時は尾部分に近い方を選ぶのをオススメします。
鰆の調理ポイント
調理する時の注意点は、鰆の身は柔らかいのですぐ身割れするため、下処理として塩で締めておくと余分な水分や臭みも取り除け、扱いやすくなるそうです。
両面に塩を振り10分ほど置いておき、ペーパータオルなどで優しくふき取ります。
鰆はほんのりと甘く淡白でシンプルな味の魚なので、様々な食べ方がありますね。
刺身やタタキ、塩焼き、照り焼き・西京焼き・漬け焼きのなどの和食だけでなく、洋食・中華にも適している万能食材。
身は柔らかく丁寧に扱わないとすぐ身割れしてしまいますが、鱗がなく皮が柔らかいので食べやすい魚です。
栄養的にも、良質なタンパク質、不飽和脂肪酸のEPA・DHA、カリウムなどを含み、生活習慣病予防にもアンチエイジングにも効果が期待できます。
ただし調理の仕方によってはカロリーがグン!と上がることはあるので、それには注意して、季節を感じながら美味しく食べていきたいですね。
出典・参照させていただいたサイト:
食品の効果効能辞典 サワラ
良好倶楽部 さわら
日本educe食育総合研究所 サワラ
まごころ食 鰆