梅雨の頃、鮎漁が解禁になったという話を耳にすると、夏が来るんだな~と感じますね。
「土用鮎」として夏によく食べられる魚ですが、初秋の頃はまた違った味覚が愉しめる魚です。
その鮎を、私はずっと川魚だと思っていたのですが、本来、河川と海を回遊する回遊魚なのだそうです。
しかし近年、さまざまな環境の変化でその数が激減しているらしく、その危惧が唱えられているようです。
なぜ激減しているのか。また、初夏から秋口まで愉しめる鮎の栄養やその効能について紹介します。
鮎の生態について
鮎は北海道南部から東アジア一帯に分布していますが、その多くが日本の河川を遡上する一年魚。
夏の終わり頃から河川を下り、河口付近で産卵します。孵化すると河口から遠くない範囲の海で、プランクトンなどを食べ成長しながら冬を越します。そして春になると5~10cmほどの稚魚になり、生まれた河川を遡上しながら、岩藻を食べ生魚へと成長していきます。
育つ海や河川の岩藻の種類が違うことで、香りにも繊細な違いあり、香りも愉しめるので「香魚」とも呼ばれています。
鮎は、資源保護のために11月~5月は禁漁となっているところが多いです。
地域によって多少違いますが、梅雨の頃に漁が解禁になり「稚鮎」「若鮎」として市場に出てきます。旬は、漁解禁から8月頃といわれています。
若鮎は、10~15cmほどで、体色は灰緑色、背びれの後ろあたりに黄色い斑紋が出てきます。味はみずみずしく淡白ななかにも甘みがあり、骨も柔らかくて全部食べられます。
成熟すると20~25cmほどになり、体全体の黄色味が強くなります。脂がのっていてふくよかで、食べごたえがあります。
夏の終わり頃からのものは「落ち鮎」といわれ、オスはあまり餌を食べなくなり、メスは卵に養分を奪われていますが、甘みとともに成熟したうま味が加わっています。そして産卵前の「子持ち鮎」もなんとも美味しく、好んで食する人もいます。
琵琶湖などの湖で育つ鮎の種類
琵琶湖のような大きな湖を海の代わりとして成長する鮎もいます。
そのなかには、春になると琵琶湖に流入している河川を遡上して、岩藻を食べながら大きく成長するものと、湖にとどまり大きくは成長しない系統がいます。大きく成長しない鮎は「小鮎」と呼ばれています。
湖で生活している鮎は、すでに海水では生きていけない体質に変化しているそうです。
琵琶湖産の鮎を放流している河川も多いですが、そこで生まれた稚魚もまた海では生きられない体質になるようで、それが回遊魚が減ってきている原因のひとつです。
もう一つは、養殖魚が増えていることなのでしょうね。
鮎に含まれる主な栄養素と効能
鮎は、天然と養殖、あるいは獲れる時期により、カロリーや栄養価に若干の違いがあります。
天然の成魚のカロリーは、生で可食部(内臓含む)100g当たり161kcal。1尾が約150gですから242kcaぐらいでしょうか。
主に含まれる栄養素はタンパク質・ビタミンA・ビタミンB1・ビタミンB12・ビタミンE・オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)・カルシウム・マグネシウム・鉄分・タウリンなどです。
参考:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
タンパク質
三大栄養素であるタンパク質は、筋肉や皮膚などの生物の重要な構成成分であり、またエネルギー源です。
常に分解・生成を繰り返しているので、毎日摂る必要のある栄養素です。
タンパク質量には、天然ものと養殖ものにそんなに差はありません。
貧血予防になるビタミンB12
水溶性のビタミンで、葉酸とともに血液中のヘモグロビンの生成を担っています。不足すると赤血球が減り、巨赤芽球性貧血という悪性の貧血を引き起こすこともあります。
含まれる量は天然ものの方が多く、100gあたり10.3㎍。養殖ものには2.6㎍ほどが含まれています。
ただ、葉酸量は若干ですが、養殖ものの方が多いようです。
生活習慣病を予防するオメガ3脂肪酸(EPA・DHA)
オメガ3脂肪酸の一種であるEPAは、血液サラサラ効果や中性脂肪の低下、高血圧やアレルギーなど、様々な生活習慣病予防や改善に役立つ栄養素。
これは養殖ものの方が多く、100gあたり天然もので89mg、養殖ものでは180mgほどを含んでいます。
同じオメガ3脂肪酸の一種のDHAは、人の脳や目の網膜の脂質成分となり、記憶力や集中力の向上や認知症予防、目の健康維持に働くといわれています。
こちらも養殖ものの方が多く、100gあたり天然もので58mg、養殖物で440mgのDHAを含んでいます。
内臓部分に多く含まれるビタミンA
ビタミンA(レチノール)は、目の神経伝達物質となったり、皮膚や粘膜の細胞を正常に保つ働きがあります。また、抗酸化作用があり活性酸素を抑え、心筋梗塞や動脈硬化などの生活習慣病を予防する効果が期待できます。
鮎の内臓にはビタミンAがたくさん含まれています。焼いて食べた場合、天然もので内臓には100gあたり2000㎍、養殖ものはもっと多く、6000㎍ほどもあります。
鮎は、新鮮なものなら内臓も食べられる魚で、とくに7月頃までに獲れる若い鮎は、内臓にも苦みやクセが少ないので食べやすいです。頭やはらわたも一緒に食べると、多くのビタミンAが摂取できます。
また、ビタミンAは脂溶性の栄養素ですので、油で揚げて天ぷらなどで食べたり、脂質の多い食材と一緒に食べるようにすると、より多くのビタミンAが摂取できます。
骨を丈夫にするカルシウムが豊富
カルシウムは骨や歯の主成分で、欠乏すると骨粗しょう症や骨折しやすくなります。また、止血を助け、神経伝達や筋肉の動きを促したりと、生命活動の維持に欠かせない栄養素のひとつです。
含まれる量は天然と養殖ではあまり変わらず、100gあたり、天然もので270mg、養殖もので250mgほどが含まれていて、これは真イワシの3倍以上となる豊富な量だそうです。
7月頃までに獲れる若い鮎や琵琶湖産の小鮎は骨まで柔らかいので、丸ごとでも食べやすく、多くのカルシウムが摂取できます。
疲労回復に役立つビタミンB1やタウリン
鮎にはビタミンB1やタウリンも含まれていて、疲労回復や夏バテ防止にも役立ちます。
夏が旬の鮎は、夏に食べるのに最適な魚なんですね。
新鮮な鮎の選び方
ヒレが黄色く、胸ヒレの後ろ側に黄色い楕円形の班が出ているものが脂がのっています。目に透明感があり腹にハリがあって、全体的につややかなものが新鮮です。
鮎の保存方法
鮎は、鮮度の落ちやすい魚です。購入あるいは釣ってきた当日に食べるのが一番です。
冷蔵保存する場合でも、2日以内に食べきるようにしましょう。
下処理として、鮎のお腹の部分を軽く押してフンを出しきり、流水で洗い水気をふき取り、一つずつラップに包んで冷蔵庫で保存しましょう。
落ち鮎の愉しみ方
鮎は夏の終わり頃から初秋にかけて、産卵のために河口付近まで河川を下りてきます。
体色は鉄サビのような色に変化することから「さび鮎」とも呼ばれます。
初秋の鮎の代表的な食べ方は腹子(卵)を味わう塩焼きです。プチプチとした食感で、身と卵が混ざり合うことで生まれる淡白な味わいが、口のなかに広がります。
骨はけっこう硬くなっていてそのまま食べるのは難しいですが、塩焼きにした後に残ったその骨を、さらに炙り、熱燗の日本酒を注ぎ骨酒として味わうこともできます。
落ち鮎でしか作れない「子ウルカ」というものもあります。鮎の腹を割き、メスは卵を、オスは精巣を取り出し混ぜ合わせて塩で漬け込んで作るもので、獲れたての新鮮な鮎でしか作れないので、地元以外ではあまり出会えない珍味として喜ばれているそうです。
一度味わってみたいものです。
出典・参照させていただいたサイト:
旬の食材百科 鮎
NANIWA SUPLI MEDIA 鮎の栄養
まごころケア食 鮎
瓢喜 落ち鮎は塩焼きが最高