カニの王様、あるいはレッドキングとも呼ばれるタラバガニ。太い脚の身が肉厚でプリプリとした食感が魅力で、食べ応えがありますよね~。
カニの中ではこれが一番好き、という方も多いと思います。
でも正確にいうと、タラバガニはカニではないそうです。
「そんなこと、美味しければどうでもいいじゃない」という声が聞こえてきそうですが、宴会などでカニを食べている時の話のネタにもなりそうなので、タラバガニ・ズワイガニ・毛蟹の違いについてまとめてみました。
まずは「タラバガニがカニではない」という話から。
タラバガニ

特徴
生物学的には十脚目(エビ目)ヤドカリ下目タラバガニ科で、カニではなくヤドカリの仲間に属しています。
平均して甲羅幅が25cm、脚を左右に伸ばすと1mを超えるぐらい大きな大型甲殻類。
カニと違う一番大きな特徴は、カニは爪部分を含め脚が10本あるのですが、タラバガニは8本です。
生きている時は、紫がかった焦げ茶色のような色をしており、カニは横方向に移動しますが、タラバガニは縦方向にも移動できるのだそうです。
水深が30~350m程度の水温の低い海に棲んでいて、主な漁場はオホーツク海やベーリング海。
日本でも北海道でのみ水揚げされていますが、流通しているほとんどがロシア・アメリカ・ノルウェーからの輸入品なのだそうです。
食用として水揚げされると、ほとんどがすぐ急速冷凍されています。
ボイル(茹でる)されてから急速冷凍されたものは、流通する時には殻が赤橙色になっていますね。
タラバガニの名前は、鱈の漁場と同じ所に生息してたので「鱈場にいる蟹」ということで、そう呼ばれるようになったのだとか。
よく網に引っ掛かり網を切ったりしていたので、昔は厄介者扱いで、鱈と一緒に水揚げされても捨てられていたのだそうです。今考えると、もったいない話ですね。
食用としての旬と食べる部分

ロシアやアラスカなどの外国の漁期は4~5月と9~10月。オホーツク海は4~5月と11~2月だそうです。
ギュッと身の締まった太い脚は食べ応え十分ですが、ズワイガニと比べると大ぶりな分、淡白な味といわれています。
カニミソは油分・水分が多く生臭いので、通常食べられないようです。
ボイルしたカニを販売している店などでは、ボイルする時にカニミソが入ったままだと溶け出して脚身の部分を黒くし、風味も損なわれるので、ボイルする前にカニミソは洗い流すところが多いのだとか。
同じタラバガニ属の仲間に花咲ガニやアブラガニ

花咲ガニ
漁場は襟裳から根室の太平洋沿岸と根室半島のオホーツク海で、釧路港や花咲港が主な水揚げ港になっているそうです。
名前の由来は、花咲(根室)半島で多く獲れたことと、茹でると花が咲いたような鮮やかな朱色になるから。
漁期は4月~9月。資源保護対策で「漁獲できるのは甲の長さが9cm以上のオス」とされているため漁獲量が少なく、地元や札幌・函館などでほとんど消費され、幻のカニと言われています。
エビに似た甘みとコクを持ち、根室では「鉄砲汁」と呼ばれる味噌汁が名物となっています。
アブラガニ
海に生息している時は青みがありブルーキングとも呼ばれ、タラバガニより甲羅の幅は20cmほどと小ぶり。
タラバガニは甲羅の中央に6個の突起があるのに対し、アブラガニは4個なのですぐ見分けがつくようですが、ボイルされさばかれたものは、素人見では区別がつきにくいですね。
以前、アブラガニをタラバガニと偽装表示して販売されたという事件があり問題になりました。
食べられたあげく偽物扱いをされイメージが悪くなるなんて、アブラガニにしてみればえらい迷惑な話です。
名前もちょっといけないのかな~。名前の由来は、甲羅に油を塗ったような光沢があるからだそうです。
漁期は1月~6月。
味はタラバガニと食べ比べると若干違いがあるようですが、マズいわけではなく、好みの違いぐらいだそうです。値段もタラバガニに比べると安いですし、アブラガニをあえて選ぶ人も多いようです。
ただ、アブラガニはボイルして3日ほどで急速に旨味が抜けるそうなので、茹でたらすぐ、冷凍されたものは解凍するとすぐに食べた方がよいようです。
ちなみに、ボイルされた状態のものは、脚の裏側が白いもの、爪の形が丸い印象でトゲではなく毛のものがアブラガニだそうです。
ズワイガニ

冬の味覚の王様として人気の高いズワイガニ。
ズワイは、細い木の枝のことを古語で楚(すわえ)と言い、それが訛って「ズワイ」になったとされています。脚の様子が細い木の枝に似ているように見えたのでしょうね。
山口県以東の日本海と茨城県以東の北太平洋、オホーツク海、ベーリング海の水深50~1200mの砂泥底に生息しています。
主に日本で食べられているのは、ホンズワイガニ・紅ズワイガニ・オオズワイガニになります。
ホンズワイガニ
日本で獲れる最高級品質のズワイガニは「ホンズワイガニ」と呼ばれています。
特徴
生きている時の体色は、暗赤色をしていて、大きなオスが脚を広げると70cmほどあるそうです。
メスはあまり大きくならず、オスの半分ぐらいの大きさ。
山口県以東の日本海、オホーツク海、カナダなどで水揚げされています。
日本では資源保護のために省令により海域により漁解禁日が設けられています。
新潟以北の海域ではオスメス共に10月1日~翌年5月31日。富山県以西では11月6日~翌年3月20日(メスは~翌年1月10日)。
ブランド化されていて、水揚げさせる県や漁港により呼び方も変わり色分けのタグが脚に付けられています。
- 石川県・橋立漁港 加納蟹(メス:香箱蟹)
- 福井県・越前漁港 越前蟹(メス:セイコガニ)
- 京都府・間人漁港 間人蟹(メス:コッペガニ)
- 兵庫県・津居山漁港 津居山蟹(メス:セコガニ)
- 兵庫県・柴山漁港 柴山蟹(メス:セコガニ)
- 兵庫県・浜坂漁港 浜坂蟹(メス:セコガニ)
- 鳥取県・網代漁港 松葉蟹(メス:セイコガニ)
- 鳥取県・境漁港 松葉蟹(メス:セイコガニ)
- 島根県・隠岐諸島 隠岐松葉蟹(メス:セイコガニ)
味と食べる部分
タラバガニと比べて脚が細く身の量は少ないですが、凝縮されたカニの繊細な旨味を楽しむことができます。
刺身でも、茹でても焼いてもカニしゃぶでも美味しく、カニ鍋にすると出汁にしっかりとカニの旨味が出てきます。
カニ味噌も食べられる
ズワイガニはカニ味噌も食べられます。カニ味噌とはカニの中腸線(肝臓と膵臓にあたる)で、やや苦味がありますが、大好物という人も多い部分です。濃厚な味わいが酒のつまみにもってこい!ですね。
甲羅に黒い粒子が付いているものも見かけますが、これはカニビルの卵です。これが多く付いているものほど、脱皮してからそれだけの時間が経過していて身が引き締まっている証拠で、ますます美味しいと言われています。
紅ズワイガニ
ホンズワイガニと紅ズワイガニの大きな違いは、水揚げされた時の体色の色にあります。ホンズワイガニが暗赤色をしているのに対し、紅ズワイガニはすでに赤橙色をしています。
これは生息している水深の違いによるのだそうです。
ズワイガニが生息しているのは水深約200m~400mあたり。この深さだと周りに敵も多いので、目立たないように赤色素のアスタキサンチンをたんぱく質の中に隠さなくてはいけません。
一方、紅ズワイガニが生息しているのは水深約500m~2500mあたり。ここまで深いと色もよく判別できないので、隠す必要もなく最初から赤橙色なのだそうです。
ボイルした後にも違いがあり、カニをひっくり返してお腹が白っぽいのがホンズワイガニ、赤いのが紅ズワイガニだそうです。
ホンズワイガニより水っぽく身の入りも少ないことから値段が安くなりますが、身には甘みがあります。
そのまま茹でて食べる他、加工用の原料になることが多く、カニクリームやカニ肉を使用するちらし寿司などの材料になったりしています。
漁期は9月1日~翌年6月30日。兵庫県の香住漁港や鳥取県の境漁港などで多く水揚げされているそうです。
オオズワイガニ
オオズワイガニはズワイガニの近縁種で、ホンズワイガニより茶色が濃く甲羅が横に長い。そして脚が太くて付け根がガッチリしているそうです。
主にロシアなどからの輸入品が多く、価格もホンズワイガニに比べると安いです。旨みも甘みもあるので鍋に入れたり焼きガニにすると美味しくいただけます。
毛蟹

毛蟹は北太平洋の広い海域に分布していて、日本では北海道沿岸から太平洋側は茨城県まで、日本海では島根県まで分布し、水深30~200mあたりに生息しています。
大きさはオスで甲長が10cmほどで、ずんぐりとした体型。体全体が短い毛で覆われているので、そのまま毛蟹と呼ばれているようです。
毛蟹も量が減ってきているため、資源保護で厳しい漁獲規制がしかれていて、漁獲が許されているのは甲長が8cm以上の雄のみ。
主な産地は北海道沿岸各地と岩手県ですが、場所により旬の漁期が違うため、一年中どこかで水揚げされているそうです。
旬の時期(脱皮直前)の毛蟹は、身も味噌もぎっしり詰まっており「堅(かた)カニ」と呼ばれています。
そのまま茹でるか蒸して食べるのが、毛蟹の上品な淡泊な美味しさを味わえるのでおすすめです。
カニ味噌も食べないともったいない
毛蟹のカニ味噌は、他のカニでは味わえない濃厚な味が楽しめるとの定評があります。
苦味や臭味のないクリーミーな舌触りを味わいたくて「カニ味噌が食べたくて毛蟹を選んだ」という人がいるほど。
カニ味噌を食べた後の甲羅に日本酒を入れて温める「甲羅酒」も、人気ですね。
出典・参照させていただいたサイト:
wikipedia-タラバガニ
wikipedia-アブラガニ
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