数ある柑橘類の中で、ミカンといえば圧倒的に収穫量の多い「温州ミカン」のことをいうそうです。
温州ミカンより先に昔から日本には「紀州みかん」というものがあり、小ぶりで甘く、江戸時代はミカンと言えば「紀州ミカン」だったようですが、実の中に種があり食べにくいということで、明治時代頃より種が無く玉も大きい温州ミカンの方が人気が出て、生産が盛んになったそうです。
「温州」は中国浙江省の地名ですが、原産地は鹿児島県長島とされており、中国から伝わった柑橘類から偶発実生で産まれたミカンとされています。
有田みかんや三ヶ日みかん・西浦みかん・宮川早生温州など多くの品種がありどんどん増えていますが、これはそれぞれの産地で栽培改良されたブランド名の温州ミカン種になるそうです。
生産量が多いのは、和歌山県・愛媛県・静岡県。九州の熊本県や長崎県・佐賀県なども生産量を伸ばしています。
昔から商品として栽培するだけではなく、自家用に栽培している家も多く、管理人が子どもの頃は、おばちゃん達は秋冬にどこかに出かけるとなると、袋にミカンを2~3個入れていましたね。
そんなにかさばらないし、少しの衝撃では潰れないし、常温で大丈夫。皮は手で簡単に剥けるし、ちょっと小腹がすいた時や水分補給に丁度良かったのでしょう。私も停留所でバスを待っている時に、隣に座っていた知らないおばあちゃんから「食うか?」とミカンを1個もらった思い出があります。
ミカンというと、ビタミンCが多いイメージですが、他にどんな栄養素があるのか、また冬の時期だけでなく秋から出荷されているミカンの特徴などを紹介していきます。
収穫時期によるミカンの種類
極早生温州
9~10月頃に出荷されるミカン。果皮に青みが残っていて酸味がやや強めですが、果肉がジューシーです。
じょうのう袋が柔らかく食べやすいので、酸味が好きな方や、サラダなどに加えるのもよいでしょう。
早生温州
10~11月頃。果皮がほぼオレンジ色に染まっていて、ほどよい酸味と甘みが楽しめます。
じょうのう袋はまだ柔らかく食べやすいです。
中手・普通温州
11月下旬~12月に出回るミカン。酸味が少なく甘みが強くなっています。じょうのう袋がやや厚めになってきており、歯ごたえがあります。
普通に旬といった時期のミカンですので、一番出回り量も多く、日持ちも良いです。
晩生温州
12月下旬~3月頃に出荷されるミカン。基本的に1ヶ月ほど貯蔵して甘みを強くしてから出荷されるそうです。
じょうのう袋が厚いので貯蔵性が高いです。コクのある甘みとほどよい酸味が味わえます。
ハウスミカン
温度調整されたハウスで栽培されているため、5~9月頃に果皮もきれいなオレンジ色で出荷されています。
甘みは強く食べやすいのが特徴ですが、手間がかかっているので、値段が少し高くなります。
温州ミカンのカロリーや栄養素の効能
温州ミカンのカロリーは、M1個分あたり約34kcal。水分が多いこともあって、意外に低カロリー。
主な栄養素として、ビタミンC、ビタミンB群(B1・パントテン酸・ナイアシン・葉酸など)、ビタミンE、ミネラル類のカリウム・鉄・銅・カルシウム・マグネシウム、β-クリプトキサンチン、食物繊維、果糖、有機酸のクエン酸、ポリフェノール類のヘスペリジンなどを含んでいます。
免疫調整機能アップや美容に役立つビタミンC
抗酸化作用のあるビタミンCには体内の白血球を助けウイルスを撃退する役割があり、免疫力調整をアップするので風邪の予防にもなると言われているわけですが、ストレス低減やシミ・そばかす予防など肌の健康を整える作用が期待でき、美容にも効果的です。
また脳梗塞・心筋梗塞などを引き起こす悪玉(LDL)コレステロールの減少にも働く栄養素です。
体内で必要に応じてビタミンAに変換されるβ-クリプトキサンチン
β-クリプトキサンチンとは、カロテノイド成分の一種で、抗酸化作用のある色素成分です。
柑橘系果実によく含まれていて、その中でも「温州ミカン」には特異的に豊富に含まれていることが、研究の結果わかりました。農産物で初めて科学的根拠に基づいた機能性表示が認められた栄養素になるのだそうです。
β-クリプトキサンチンは、体内で必要に応じてビタミンAに変換され、ビタミンAは視覚・皮膚・粘膜の正常化に働きます。
血中にβ-クリプトキサンチン量が高い人ほど、骨代謝の働きを助け骨粗しょう症の発祥リスクが低くなることや、脂質代謝の改善などで糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病になりにくいことなどが研究で判明しているそうで、アンチエイジング効果が期待できます。
疲労回復にクエン酸
過度な運動や不摂生な生活が続くと、細胞が酸化されて疲れてきます。その酸化された細胞を修復させる時のエネルギーを作り出す時にサポートするのがクエン酸。
エネルギー代謝がスムーズに行われると細胞も元気になり、疲労回復に繋がります。
ミカンはじょうのう袋に付いている白い筋も一緒に食べた方がいい理由
皮の裏側に付いている白い筋は「アルベド」。それが皮を剥いて袋に付くと「維管束」と呼ばれ、それにはヘスペリジン(ビタミンP)というビタミンが多く含まれているそうです。
ヘスペリジンはビタミンCと一緒に働き、毛細血管の強化に働いてくれます。
毛細血管が強くなると血行も良くなり、免疫調整アップや悪玉(LDL)コレステロールの減少にも一役買ってくれるそうです。
アルベドにはたくさんの食物繊維も含まれているので、腸内環境の改善にも役立つでしょう。
温州ミカンの選び方
形が扁平で、重量感のあるもの
ミカンを選ぶ時、つい丸くて形のよいものを選びがちですが、横から見て扁平の方が良いそうです。
扁平なほど、皮と実の間に余計な空気が入っていないことになり、実がギュッとつまり、味も濃いそうです。
果皮にハリがあり色づきのよいもの
果皮にハリがあり、すべすべしている方が、甘い傾向があるそうです。
太陽をたっぷり浴びていると色にムラが無く濃くなるので、栄養をたくさん蓄えています。
ただ、お尻の方はでこぼこしている方が甘みは強いようです。
ヘタの切り口の小さいもの
ヘタの切り口の小さいものは軸が細いということになり、軸が細い方が枝からの水分が少ないわけで、その分栄養が多く送られます。ですので濃い味のミカンになるそうです。
ミカンの保存方法
購入してすぐに食べれば問題ないのですが、お歳暮で大量にもらったり箱買いすることも多いミカン。
気づいたら萎びていたりカビがはえてしまったりしますよね。上手に保存すると2~3週間ほどは鮮度を保ちながら保存できるそうなので紹介します。
常温で保存が基本
涼しくて日のあたらない、通気のよい場所で保存しましょう。その場合ヘタ部分を下にした方がいいそうです。
ハウスミカンなど、気温の高い時期に買ったものは、冷蔵庫の野菜室で。乾燥しないようにペーパータオルか新聞紙で包み、ポリ袋に入れ、この時もやはりヘタを下にすると乾燥を防げるようです。
箱で購入した場合
一度箱からすべてのミカンを出し、萎びれているものやカビがはえているものは取り除いておきましょう。
箱の下にペーパータオルか新聞紙を敷き、ヘタが下になるようにミカンを並べて入れます。
1段目がいっぱいになったら、その上にまたペーパータオルか新聞紙を敷き、ヘタを下にしながら並べて入れます。3段目までは重ねても大丈夫だそうです。
食べる時は一番下の1段目から食べるようにして、傷んでいるものを見つけたら取り除いておきましょう。
冷凍保存もあり
2週間では食べきれないなあ、というほど数があったりした場合は、冷凍保存もできます。
少し昔は、駅で弁当と一緒に冷凍ミカンも売っていました。なんか懐かしいですね。
冷凍すると1ヶ月ぐらい保存できるそうで、冷凍させると甘みが増すというメリットもあります。
出来るだけ急速冷凍
ミカンを軽く水洗いし、金属のトレイに入れて、出来るだけ急速にしっかり凍らせます。
皮付きミカンは2度凍らせる
凍ったミカンを一度取り出し、水にくぐらせてからまた冷凍。そうすることにより皮の表面に膜ができて乾燥を防ぐことができるのだそうです。
凍ったらフリーザーパックなどに入れて保存。
皮を剥いたミカンは、ラップに包み、金属のトレイに乗せて冷凍。
ミカンの皮も捨てないで活用しよう
ミカンの皮には、じつはすごいパワーがあり、漢方では陳皮(ちんぴ)と呼ばれ重宝されていますね。
皮に含まれるヘスペリンやリモネンという成分が、血流の改善やストレスの抑制、咳や痰などの喉の病気や胃もたれなどの改善に働くからだそうです。
皮を水で洗い、天日で1週間ほど干して乾燥させ、細かく刻んでお湯で溶いて服用する人もおられるようです。
また、ガーゼやお茶パックに入れてしっかりと口を縛り、湯船に入れると、冬でもポカポカになり良い香りを楽しむこともできます。
乾燥させずに、皮ごとジャムにしても美味しそうです。
他にも、水で煮出すと掃除にも使えます。油汚れも取れたうえ、リモネンの爽やかな香りに部屋が包まれ、一石二鳥ですね。
こたつでミカンは、幸せな光景
こたつに入りながら、猫と戯れながらのんびりミカンを食べる。昔から日本によくある絵ですが、なんだか平和で幸せそうですよねぇ。
ビタミンCなど栄養が豊富で、美味しくてつい手が出て何個も食べてしまいそうになるミカンですが、あまり食べ過ぎると手のひらや足の裏が黄色くなる「柑皮症(かんぴしょう)」になることもありますので、1日2個ぐらいをメドに、ほどほどに美味しく食べていきましょう。
出典・参照させていただいたサイト:
果物ナビ 温州みかん
Woman.excite. E・レシピ みかん
東邦大学 大橋病院 栄養部 温州みかん
春夏秋凍 みかん