金柑と聞けば「のど飴」を思い浮かべる人も多いでしょう。
実際、咳や喉の痛みを伴う風邪に効果があるとして、昔から金橘(きんきつ)という名前で民間薬として使われてきました。
柑橘系ミカン科では最も小さい金柑ですが、その小さな体の中に喉の痛みを緩和するだけでなく、他にも効能が期待できる様々な栄養成分を豊富に含んでいます。
今回は寒い冬によく見かける金柑を紹介いたします。
金柑とは
金柑は、ミカン科キンカン属の常緑低木で、温暖な地域でよく育ちます。
花や小さい実が可愛らしく、育てやすい樹なので、家の庭や鉢植えで育てている人も多いですね。
7~9月に白い小さい花を咲かせます。
11月末~3月に黄色からオレンジ色の球形の実を付けそれを食用とします。
金柑の実はミカン科の中では一番小さく、食べようと思えば、丸ごと1個が口の中にすっぽりと入る大きさです。
金柑の歴史
金柑の原産地は中国の長江中流域とされ、日本には鎌倉時代末から室町時代初期に伝えられたといわれていますが、あまり浸透しませんでした。
江戸時代(1826年)、中国逝江省で古くから栽培されていたニンポウキンカンは、逝江省寧波(にんぽう)から日本人を長崎に送り届けるはずの船が難破し、修理のため静岡県の清水港に寄港した際に、そのお礼にと金柑の砂糖漬けをもらい、その種子を撒いてみると上手く育ったので、そこから各地に広がったそうです。
咳や喉の痛みを伴う風邪に効果があるということは昔から知られていました。
それで、もちろん生でも食べられていましたが、皮がまだ固く少し苦味やえぐみ・酸味もあり、あんまり甘くなかったので、もっぱら砂糖漬けや甘露煮に加工されて食べられてきました。
1981(昭和56)年に、柑橘類を多く栽培している温暖な宮崎地方を大寒波が襲いました。
県内のみかん産地は甚大な被害を受け、霜などで果実は壊滅し、樹自体も回復に数年かかるという半枯死状態になってしまいました。
「ビニールで覆って樹を守らなくては!」ということで、温州ミカンやポンカンなどをビニールハウスで育て始めましたが、その柑橘類の中に金柑もありました。
いろいろ試行錯誤している中で、十分に摘果した少数先鋭の金柑を、樹上で完熟するまで育ててみました。
すると、実は大きく皮は柔らかく、想像以上に甘い金柑が出来上がったのだそうです。
宮崎県は、これを県の特産品にしよう!と、糖度が16度あるものを「たまたま」、それ以上のものを「たまたまエクセレント」と命名し、生産に力を入れました。
現在、日本での金柑の生産量は70%以上を宮崎県が占め、2位鹿児島県、熊本県・佐賀県・和歌山県が続いています。
温州ミカンと金柑の違い
ミカン科といっても、ミカン科キンカン属の金柑は、温州ミカンなどのミカン科ミカン属とは種類が少し違います。
大きく違うのは、温州ミカンなどは皮を剥いて中身を食べます(皮も薬味などに使うこともある)が、金柑は皮が柔らかいので皮ごと、むしろ皮メインで食べることです。
含まれる栄養素は似ていますが、皮を食べるか食べないかで、栄養価に違いが出てきますね。
金柑のカロリーや栄養素の効能
金柑にもいろいろな種類があり、日本でよく見かけるのはナガミキンカンとニンポウキンカン。また上記のようにハウス内でブランドとして育てられているものや種無しのプチマルという品種などもありますが、ここでは一般的な金柑について紹介します。
金柑(生)のカロリーは、100gあたり283kcal(金柑1個で約20g)。
主な栄養素として、ビタミンC、ビタミンB群(B1・B2・B6・ナイアシン・葉酸・パントテン酸など)、カロテノイドの一種・β-クリプトキサンチン、ビタミンE、ミネラル類のカリウム・鉄・カルシウム・マグネシウム、食物繊維(ペクチン)、有機酸のクエン酸、ポリフェノール類のヘスペリジン(ビタミンP)などを含んでいます。
参考出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
喉の痛みを軽減したり、風邪などの感染症予防に
金柑の皮に含まれるヘスペリジンには、喉や扁桃腺の炎症を抑え腫れや痛みを軽減する作用があるとされていて、咳止め効果は果皮に含まれるシネフリンの気管支の筋肉弛緩作用の効果によるものといわれています。
そして金柑にはビタミンCが豊富に含まれています。
ビタミンCは白血球の働きを高め体外から侵入してきた細菌やウィルスと闘う力を持っています。
ヘスペリジンにはビタミンCの吸収率を高めサポートする働きもあるので、免疫力を高め風邪などの感染症を予防したり、また病気の回復を早める効果があるとされています。
ビタミンCは、丈夫な血管や筋肉、骨、肌などをつくるコラーゲンの合成に必要不可欠な成分でもあり、金柑にはカルシウムやマグネシウムも含まれているので、骨などを丈夫にする効果も期待できます。
便秘の解消に
金柑にはミカンやグレープフルーツと比べて、5倍近くの食物繊維が含まれています。
水に溶けるとゼリー状になり、腸内の有害物質を体外に排出する水溶性食物繊維と、便のかさを増やして腸を刺激して排便を促す不溶性食物繊維のどちらも含まれています。
食物繊維の豊富に含まれるペクチンは強い粘性で、腸内の有害物質を吸着させ体外に排泄する働きがあります。
腸内の善玉菌を増やし、腸の調子を整えてくれる効果も期待できます。
冷え性や肩こり・腰痛の改善に
金柑には血管を広げ血行を良くする働きがあるビタミンEと、毛細血管を強化して血流を良くする働きのヘスペリジンが含まれています。
この2つの成分の働きにより、血行不良が原因で起こる冷え性や肩こり・腰痛の改善に期待ができます。
高血圧や動脈硬化を予防・改善に
血液中の悪玉(LDL)コレステロールが増加すると、血管の内壁が脂質で分厚くなり血管を狭めるため、高血圧や動脈硬化などの原因になります。
金柑に豊富に含まれる抗酸化作用のあるビタミンCやβ-クリプトキサンチンには、血中の悪玉コレステロ-ルを減少させ血液をきれいにする働きがあります。
ヘスペリジンには血圧を下げる働きがあるので、これも高血圧や動脈硬化の予防や改善に役立ちます。
糖尿病の予防に
食物繊維のペクチンには、急激な血糖値の上昇を抑える働きがあるので、血糖値が高くなることで起こる糖尿病の予防に効果的です。
β-クリプトキサンチンには高血糖が原因になって起こる肝機能障害を予防する働きもあります。
ストレスをやわらげる
豊富に含まれるビタミンCには、ド-パミンやGABAなどの神経伝達物質と、ストレスをやわらげる副腎皮質ホルモンの合成をサポ-トする働きがあります。
また、金柑の香り成分であるテルペンにも、興奮した神経を落ち着かせ、ストレスをやわらげることが期待できます。
美肌・美白つくりに
強い抗酸化作用のあるビタミンCやビタミンEには、シミやそばかすを予防し、ハリのある若々しい肌を保つ効果が期待できます。
ビタミンCにはメラニンを作り出すチロシナーゼという酵素の働きを抑制し、メラニン色素の沈着を防ぐ働きがあるからです。
ビタミンEには血管を広げて血行を良くする働きがあるので、新陳代謝を活発にし肌にハリを与える効果が期待できます。
疲労回復にクエン酸
過度な運動や不規則な生活が続くと、細胞が酸化されて疲労物質の乳酸がたまり疲れてきます。
クエン酸は、乳酸を分解しエネルギ-に変える働きがあるため、疲労の蓄積を抑制してくれます。
エネルギー代謝がスムーズに行われるようになると細胞も元気になるので、疲労回復へとつながります。
効率的に栄養を摂るには「皮ごと」「生」で
上記のように、皮に含まれるヘスペリジンには様々な働きがあることと、生で食べることで加熱に弱いビタミンCなどの成分も無駄なく摂ることができます。
また、柑橘類の色素成分や果皮には、発ガン抑制効果のある成分が多く含まれているといわれていますので、皮ごと食べると効率的に栄養が摂れるということになりますね。
洗ってヘタを取るだけでそのまま食べてもいいですが、酢の物やサラダ・スムージーにしても美味しくいただけます。
生の皮に抵抗がある時は、甘露煮に
皮に抵抗があったり苦味や酸味が強い場合など、砂糖やハチミツを加え煮込んだコンポートや甘露煮・ジャムに加工すると、皮は柔らかく甘くて食べやすくなり、違った美味しさを味わえますね。
ハチミツと金柑の喉飴もあるように、ハチミツにも喉の痛みを緩和する殺菌作用があり、エネルギー源としても優れていますので、疲労回復にも役立つでしょう。
ただし、砂糖やハチミツを加えた分、カロリーや糖質は高くなり、ビタミンCなどの量は減ってしまうことは、考えておくとよいかもしれません。
金柑の1日に食べる目安
金柑には食物繊維が豊富で、腸内環境を整える作用があるのは上記したとおりですが、食物繊維も摂り過ぎると消化に時間がかかったり、逆に便秘になってしまう可能性があります。
また、食べ過ぎると舌や唇の痺れや胃の不調などを起こしてしまうこともあるそうです。
生の金柑は1日5個、甘露煮などは2~3個を目安に食べると良いといわれています。
金柑の保存
金柑は、冬場の暖房の効いていない10℃以下の部屋なら、常温でも保存が可能です。
通気性の良いザルなどに出来るだけ重ならないように並べて置くと、1週間程度は保存できます。
冷蔵庫保存
金柑は皮が薄く乾燥しやすいため、4~5個をペーパータオルで包みポリ袋などに入れて、冷蔵庫の野菜室で保存。
2週間ほど保存できます。
冷凍保存
生の食感は失われますが、冷凍保存も可能です。
下処理として、洗って水気をしっかり拭き取り下手を取ります。半分にカットして中の種を取り除いていると、後々便利です。まとめてラップで包んでからフリーザーパックに入れて冷凍庫へ。
これで1ヶ月ほど保存可能。半解凍で食べると、シャーベットのような食感になるそうです。
まとめ
最近は、管理人が子どもの頃食べていた金柑と比べても、ハウス栽培で大事に育てた甘みが強く美味しいブランド品種だけでなく、一般的な露地栽培の金柑も、苦味が少なくなり甘みが増えて食べやすくなっているように感じます。
種無しの品種もあったり、食べやすさも増してきていますね。
金柑は小さな実の中に、様々な抗酸化作用を持つ成分がぎっしり含まれていて、栄養豊富な果実であることが分かりました。
風邪予防のためだけでなく、皮ごと食べるようにして、寒い冬を元気に乗り切りましょう。
出典・参照させていただいたサイト:
シンクヘルスブログ 金柑にはどんな栄養があるの?
ベジクル 小さいのに栄養の宝庫!驚きのキンカンの効能とは。
わかさの秘密 キンカン
旬の食材百科 キンカンの栄養価と効用
ニチレイ ほほえみごはん キンカン の食べ方ガイド