小腹が空いた時のオヤツに、酒のツマミにと、あれば食べ始めてしまい、ついつい止まらなくなってしまう落花生。
ひと昔前までは「脂質が多いので吹き出物ができるかも」と、とくに若い女性から敬遠されがちでしたが、じつは逆で、美容にも役立つ栄養素が豊富に含まれていることが判明しています。
そもそも落花生とはどういう植物なのか、含まれる栄養素の効能などをまとめてみました。
落花生とは
落花生は、南米アンデス山麓が原産のマメ亜科ラッカセイ属の一年草で、新大陸の発見とともに世界に広まりました。
保存ができるので、大航海時代に重宝されたようです。
別名「南京豆」「ピーナッツ」とも呼ばれますが、これは食用とされる種子部分のことを言い、植物全体を指すのが「落花生」です。
ピーナッツの名には「ナッツ」が付いていますが、ナッツ類ではなく豆類で、6大食用豆の一つ。ただし文部科学省では、アーモンドやカシューナッツなどのナッツ類と同じ「種実類」に分類されています。
日本に中国から琉球(沖縄)を経て、あるいは中国から長崎へ伝来したのは江戸時代で、南京豆と呼ばれてましたがあまり普及はしませんでした。
日本で本格的に栽培が始まったのは、明治7年に政府がアメリカから種子を導入して奨励してからのようで、江戸時代に伝来したものとは現在栽培されているのは品種が違うそうです。
一度は栽培が盛んだった落花生ですが、現在ではほとんどが外国からの輸入品で、国内で流通している落花生のなかで国内産は1割程度。
生産量が断然多いのは千葉県で80%以上、茨城県が10%ほど、それに神奈川県・栃木県・鹿児島県が続きます。
落花生の実(種子)は地下結実性
土の中から収穫するので、根あるいは土中の茎部分が膨らむ芋と同じ?と思われがちですが、そうではありません。
落花生は、春に撒いた種から芽が出て25~50cmほどに育ち、夏に自家受粉して、蝶が羽を広げたような可愛い黄色い花を咲かせます。
ここからユニークな行動を取り始めます。
花が咲いてから5日ほど経つと子房と花托の間の部分にある子房柄が下に向かって伸び、地中にもぐり込むのです。そしてもぐり込んだ子房が膨らんで結実するという「地下結実性」の豆。
なぜそのような行動をとるのかというと「外で結実するより鳥や動物に食べられる危険が回避され、風や鳥・動物による種子散布と比べても、地中で結実する方がリスクが少ない繁殖手段になるから」ではないかと考えられていて、これが「落花生」の名前の由来にもなっています。
秋に葉が黄色くなりだした頃、地中で膨らんだ実のサヤに網目が出てきたら収穫時期です。
国内産の落花生の品種
1955(昭和30)年より落花生の育種業務は千葉県の農業試験場だけが担うことになり、現在販売されている代表的な品種は、千葉県で生まれました。
ほとんどの品種が、落花生としては大粒種になります。
千葉半立(ちばはんだち)
1953(昭和28)年に千葉県の奨励品種に採用された、千葉県で最も多く栽培されている品種です。
収量性は高くありませんが、やや大粒。煎り豆にしたとき、濃厚で独特な風味があります。
ナカテユタカ
1959(昭和34)年に千葉県奨励品種に採用されました。
収量性が高く、粒揃いが良い大粒で、野菜等との輪作栽培に適しています。煎り豆にするとあっさりとした甘みがあり、飽きない食味です。
郷の香(さとのか)
ナタテユタカともう1種を交配し育成した品種で、1988(昭和63)年に千葉県奨励品種に採用されました。
比較的早生で収量性が高く、やや大粒でサヤが白く薄いのが特徴。煎りより茹で落花生の方が食味が良い品種です。
おおまさり
ナタテユタカと極大粒品種を交配し、2010(平成22)年に品種登録されました。
ふっくらとした形をしており、実の重さが一般品種の約2倍と大きな品種。
茹で落花生に適しており、甘みが強くてやわらかく栗のような風味があります。
Qナッツ(きゅーなっつ)
郷の香ともう1品種を交配し育成した品種で、2018(平成30)年に品種登録されました。
収量性が高くサヤは白い品種で、煎り豆に適しています。ひと口噛んだだけで感じるほど、ハッキリした甘みがあります。
Qナッツの名の「Q」には、従来のピーナッツの「P」を超える味、という意味が込められています。
「生」落花生は2種類ある
落花生は、茹でられたり炒られたり、味付けされていたり加工されていて、すぐに食べられる状態のものを購入することがほとんどだと思いますが、「生」の落花生も売られています。
「生」落花生には2種類があります。「土から掘りたてのもの」と「それを乾燥させたもの」です。
土から掘りたての生落花生
土から掘ったばかりですから、水分が多く瑞々しいです。
主に茹で落花生用で、収穫される8月~10月に期間限定で産地近くでしか手に入らなかった(家庭菜園の栽培でも)ものですが、最近は通販でも購入可能ですね。
水分が多いので傷みやすいため、購入したらすぐに茹でて冷凍で保存。
そのまま茹でる、または塩などの調味料を入れて茹でると好みの味に仕上げることができます。
乾燥生落花生
土から抜いたものをひっくり返して1週間ほどそのまま干します(地干し)。それをさらに畑に積みあげて(ボッチ)1ヶ月以上ゆっくりと太陽と風にさらさせ、天日干しして乾燥させた落花生。カラカラに乾燥させることで美味さが引き出されます。
乾燥しているので、冷蔵庫で1年以上保存できます。
自分好みに炒ることができて芳ばしい香りを愉しめ、バターピーナッツやピーナッツバター、またピーナッツ豆腐などが手作りできます。
落花生の栄養価
落花生(炒り)100gあたりのカロリーは585kcal。けっこう高カロリーです。
含まれる主な栄養素は、タンパク質・脂質・炭水化物、ビタミンB群(B1・B2・ナイアシン・B6・葉酸・パントテン酸)、ビタミンE、ミネラル類もカリウム・マグネシウム・鉄・銅・リン・亜鉛などです。
参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
主な栄養素とその効能を紹介します。
身体を作るのに必要なタンパク質
落花生には、ヒトの筋肉や皮膚・臓器など体を構成する重要な栄養素であるタンパク質が、ナッツ類に比べ豊富に含まれています。
また、エネルギー産生栄養素の一つでもあります。
落花生の脂質の多くが不飽和脂肪酸
落花生の栄養素の約半分が脂質です。
これが敬遠される理由であり、たしかに脂質は摂り過ぎると肥満の原因になりますが、落花生の脂質には飽和脂肪酸もありますが、多くはオレイン酸やリノール酸(体内で生成されないため食べ物から摂取する必要がある必須脂肪酸)などの不飽和脂肪酸です。
不飽和脂肪酸には血中の中性脂肪や悪玉コレステロールを低下させる働きがあるので、動脈硬化などの生活習慣病を予防する効果が期待できます。
また、オレイン酸は肌の皮脂に一番多く含まれている脂肪酸なので、保湿効果があり美肌の特効薬ともいわれています。
皮膚を柔らかくして小ジワや角質などを改善してくれる美肌効果や、便秘改善にも期待ができます。
落花生はGI値が低い食べ物
太る原因の一つが、食べた物が消化され血糖値が急激に上がると、血液中の糖を処理するために多量のインスリンが分泌され、一気に血糖値が下がります。それで短時間に空腹を感じ、また食べてしまうという悪循環に陥ることです。
ですから血糖値を急激に上げる食べ物は太りやすいのですが、落花生は血糖値の上昇が緩やかなのだそうです。
血糖値が上昇する度合いを表す指標にGI値(最大値100)というものがありますが、落花生のGI値は15です。食パンが95、白米が88なので、比べるとかなり低い数値ですね。
GI値の低い食べ物は、肥満や糖尿病のリスクを軽減するといわれています。
また、落花生は腹持ちがよいので、小腹が空いた時などに数粒食べるだけで満腹感が長く続くというメリットもあります。
二日酔いの予防に役立つナイアシン・アスパラギン酸
落花生にはナイアシン(ビタミンB3)が多く含まれており、これは二日酔いの原因となるアセトアルデヒドを分解し、肝臓の負担を軽減する働きがあります。
有害なアンモニアを排出する利尿作用があるアミノ酸のアスパラギン酸も含まれているので、二日酔い予防のためにもお酒のおつまみに落花生を食べるのは、理にかなっているそうです。
強い抗酸化作用のあるビタミンE
抗酸化作用の強いビタミンEは、老化の原因になる活性酸素の働きを抑えることで、動脈硬化や心筋梗塞などの生活習慣病の予防に役立つとされています。
血行を良くする働きもあるため、冷え性や血行不良による肩こりの改善、肌色を良くするなど、アンチエイジングにも効果が期待できます。
疲労回復や肌や髪毛の健康を保つビタミンB群
落花生にはビタミンB群のなかでも、ビタミンB1・B2・ナイアシン・B6、葉酸を多く含んでいます。
ビタミンB1は糖質のエネルギー代謝に関わっている補酵素で、疲労回復に役立ちます。脳や眼・神経を正常に保つ働きもあります。
ビタミンB2は脂質のエネルギー代謝に関わっている補酵素で、皮膚や髪毛などの発育を助け、過酸化脂質の分解にも関与しています。
ビタミンB6は主にタンパク質の代謝に関わっている補酵素で、免疫機能の正常な働きの維持、皮膚の抵抗力の増進、赤血球のヘモグロビンや神経伝達物質の合成にも欠かせない栄養素。
また、肝臓に脂肪が蓄積するのを防ぎ、肝脂肪の予防にも関与しています。
葉酸は赤血球の生成やDNAを正常に作る材料になっています。
心身のバランスを正常に保つのに必要なミネラル
ミネラルは、体の機能や組織を調節・強化し正しく維持する役割を持つ重要な栄養素。落花生に含まれる代表的なミネラルが以下の種類です。
カリウム
カリウムは増えてしまったナトリウムの排出を促し血圧上昇を抑え、体内の細胞を正常に保ったり血圧の調整などに働く栄養素。
高血圧予防やむくみ解消、体液のphバランスを保つ役割で、正常な筋肉の収縮や神経刺激の伝達にも関わっています。
マグネシウム
リンやカルシウムとともに骨を形成するほか、生命維持に必要な体内のさまざまな代謝を助ける成分です。
また、筋肉収縮管理や精神状態を落ち着ける、血圧や体温の調節などにも関わっています。
鉄分
鉄分は血液中のヘモグロビンの成分で、ヘモグロビンは体の隅々まで酸素を届けるよう働きます。
リン(レシチン)
リン脂質の一種であるレシチンは細胞膜の主成分で、内臓や各組織の細胞膜を活発化させます。神経伝達物質・アセチルコリンを作り出し、記憶力や認知機能を高めることにも期待ができます。
亜鉛
亜鉛は体内で作ることができない「必須微量ミネラル」で、骨や歯・内臓・筋肉に多く含まれます。DNA合成やタンパク質の再合成、免疫反応の調節などに関わります。
また、味覚を感じる味蕾細胞を作ることにも関与しています。
落花生の薄皮にも栄養が!
落花生を食べる時、少し渋味があるので剥いてから食べる人も多い薄皮ですが、この渋味はポリフェノール・レスベラトロールが含まれているからなのだそうです。
レスベラトロールは、長寿遺伝子と呼ばれているサーチュイン遺伝子を活性化させる作用があり、細胞の生まれ変わりをサポートするとされています。
強い抗酸化作用で細胞を若々しく生まれ変わらせるので、美肌効果やアンチエイジング・老化抑制効果、生活習慣病予防などが期待できます。
食べると「吹き出物ができる」という従来の落花生のイメージとは全く逆の美肌効果もあるみたいなので、オヤツやおつまみなどで食べるのなら、出来れば落花生は薄皮ごといただく方が良いようです。
外の殻にも利用方法がある
殻に入ったままの落花生は剥くのが少し面倒ですが、高い消臭効果があるので、布の袋や出汁パックなどに入れて消臭剤として利用することが出来ます。
実際、畜産小屋の敷き材、ペット用の敷物や枕の素材になっているそうです。
殻付きで売っているもののほとんどが国内産です。
商品ですのでできるだけ綺麗に見えるように洗ってありますが、殻の表面に黒い斑点が付いているものがあります。しかしこれは畑の土質によるものなのだそうで全然問題ありません。
国内産、とくに千葉県など関東平野産のものは鉄分含有量が多い土壌というのが殻が黒ずむ理由なので、むしろ、黒味が濃いほど豆全体に栄養が行き渡っているという証拠になり、中の豆の味わいが深く美味しいと感じる人もいるそうです。
ちなみに殻を剥くと散らかってしまい掃除が大変!という経験はないでしょうか?
殻はつなぎ目の部分に縦線を入れる感じで頭からお尻まで優しく押し、そのままパカっと開くと綺麗に剥くことができます。
毎日適量を食べ、くれぐれも食べ過ぎないように!
上記したように、落花生に含まれるほとんどの脂質は体に良い種類で、太りにくい食べ物とされていますが、カロリーが高いのも事実。
ましてや砂糖やバターを使用した加工品などは、ますますカロリーが高くなっているので、やはり食べ過ぎると太る原因になってしまいます。
毎日適量を食べると健康にも良い効果が期待できる落花生ですが、その適量は1日20~30粒程度とされています。
「えっ!それだけなの?」と、食べ始めるとつい止まらなくなる管理人など、20粒なんてあっと言う間に超えてしまいますね〜。
どうしたら減らせる?と考えて思いついたのが「殻付きを食べる」です。
殻付きだと殻を剥くという手間が少々かかる分、食べる量を減らせるはず。…どうでしょうか? 減らせるでしょうか?(苦笑)
落花生(ピーナッツ)アレルギーに注意
落花生(ピーナッツ)は卵や蕎麦と同様に、アナフィラキシーショックなどの危篤な症状を引き起こす人もいるとして、アレルギー表示義務のある食品です。
落花生(ピーナッツ)アレルギーの方は摂取をお控えください。 また周りの人も、無理に食べさせないようにしてください!
まとめ
いろいろ注意点はありますが、美肌効果や二日酔い予防、アンチエイジング、生活習慣病予防にも期待が持てる落花生。
適量を守り習慣的に食べていくと、美味しいだけでなく、健やかな身体作りにも役立つ食べ物かもしれませんね。
出典・参照させていただいたサイト:
公益財団法人日本豆類協会 落花生
Arima meブログ ピーナッツの栄養素とは?
SUZUUCHI ピーナッツの栄養、カロリー、驚きの効能・効果
シンクヘルスブログ ピーナッツの栄養がもたらす健康効果
Wikipedia ラッカセイ