昔というか今も有名ですが、アメリカのアニメ「ポパイ」というのが放映されていて「ほうれん草の缶詰」は憧れの食べ物でした。
悪役のブルートが恋人のオリーブをかっさらって意地悪をしようとすると、オリーブが「ポパイ、助けて!」と叫び、その声を聞いたポパイが常備しているほうれん草の缶詰を、缶切りも使わず手の握力だけでカパっと開け(これだけでも凄い力持ち?笑)、ガバッと飲み込み、パワー200%全開になってオリーブを助け「やっぱりポパイって頼もしいわ~♡」で一件落着、という話が延々続くアニメでした。
子供の頃、この「ほうれん草の缶詰」が美味しそうで、食べたくてダダをこね、よく母を困らせていました。
ポパイは「全米ベジタリアン協会」という団体が、野菜をもっと広く食べて欲しいために作ったキャラクターらしく、ポパイが放映されてからアメリカでもほうれん草の缶詰が製造され始めたらしいのです。
アメリカは広いので、生のほうれん草を届けるのが難しい地域も多かったそうで。。。
今もほうれん草の缶詰は売られているそうですが、缶詰にするために熱処理を施されたほうれん草は、缶の中でグニャっとしていて、そのまま食べるというよりは、スープなどの具材の一つとして調理に使われることが多いようです。
ポパイのように食べると筋肉もりもりパワー全開!! とまではいきませんが、美容や健康に有効な栄養素がたっぷり含まれている野菜だそうです。
ほうれん草の主な種類
東洋種
日本で江戸時代頃から作られていた品種。葉に深い切れ込みが2~3段あり、とがった形をしている。根元の赤みが濃く葉が薄くアクが少ないのが特徴。
西洋種
葉は丸みを帯びていて、少し厚みがある。土臭くアクが強いのが特徴。ポパイが食べていたのはこの種でしょうねぇ。
一代雑種
現在市場に出回っているもののほとんどがこれです。上記の東洋種と西洋種の交雑種で両方のいいところを残しています。葉に切れ込みが少しあり東洋種に近い剣葉系と、ほとんど切れ込みがない西洋種に近い丸葉系があります。
寒じめちぢみほうれん草
主に関東で寒い冬の時期に露地栽培されている種。
通常はハウスやビニールで覆うトンネル栽培で育てる野菜ですが、あえて氷点下の環境で栽培します。すると寒さに耐えられるように日光を多く取り入れようと葉を広げ、凍らないように水分を減らすので、葉が厚くなり縮れた状態になります。その分糖度が上がり味も濃く甘くなり、栄養も凝縮されるのだとか。
サラダほうれん草
アクを減らし生でも食べられるように改良されたもの。※後述します。
ほうれん草に含まれる栄養素
ほうれん草(生)100当たりのカロリーは18kcal。
「ほうれん草は栄養価も高い」ということは昔からよく聞く話なので、ご存知の方も多いでしょう。
緑黄色野菜であるほうれん草には、アンチエイジングや美容に効果が期待されるビタミン類(ビタミンD・ビタミンB12を除く)、ミネラル(満遍なく)、食物繊維など豊富な栄養素が含まれています。
出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
その中でも代表的な栄養素とその効能についてご紹介します。
鉄分
昔から「貧血気味な人はほうれん草を食べよう」と言われているように鉄分が非常に豊富です。
鉄分は、血液中に含まれ酸素を体の隅々まで運搬するという大切な働きをするヘモグロビンの重要な材料の一つ。不足すると貧血状態になり、疲れやすい、動悸・息切れ・めまい・頭痛といった症状があらわれます。
ほうれん草の鉄分は非ヘム鉄というもので吸収されにくい鉄なのですが、ビタミンCやヘム鉄を含む肉類と一緒に摂ることで、吸収率をアップさせることはできます。
ただし、コーヒー・紅茶・緑茶などに含まれるタンニンは鉄の吸収を阻害しますので、一緒には摂らないように。飲む時は30分ほど時間を空けてからにしましょう。
ビタミンC
鉄分の吸収を高めてくれるビタミンCもほうれん草自体に含まれています。
抗酸化作用があり、コラーゲンの合成をサポートし皮膚や粘膜の健康維持に役立ちます。
β-カロテン
β-カロテンは、プロビタミンAともいわれ、摂取すると必要に応じて体内でビタミンAに変わります。
目や皮膚・粘膜の健康を保ち、成長期には発育を促し、生活習慣病の予防にも効果が期待できる成分。ビタミンCと同じく抗酸化作用があり、免疫力を高める働きもあります。
マンガン
ほうれん草の赤い根の部分にはマンガンという栄養素が含まれていて、骨の形成を助ける働きがあります。
そのほかにも、正常な赤血球をつくる働きのある葉酸や、ナトリウムの排泄を促し血圧を下げる作用のあるカリウム、ビタミンB1・B2、カルシウム、マグネシウム、ナイアシン、パントテン酸など、たくさんの栄養素を含んでいます。
旬の冬のほうれん草にはビタミンCが通常の約3倍!
今では一年中売られているほうれん草ですが、旬の冬(11月~1月)に収穫されたものは全体的に栄養価が上がり、ビタミンCの含有量は夏に比べ約3倍、β-カロテン量も約2倍に増えていると報告されているようです。
糖度も上がって味も美味しくなっているそうで、やはり旬の時期に旬のものを食べておきたいですね。
ほうれん草の選び方と保存方法
選び方
葉の緑色が濃くみずみずしくて張りがあるもの。根の部分の赤が濃く鮮やかで、ふっくらしているものが甘みがあり美味しいです。
冷蔵保存
ほうれん草は乾燥に弱いので濡れた新聞紙などで包み、ジップロックなどの袋に入れ(完全密封はしない)、冷蔵庫で保存します。なるべく根の部分を下にして立てて入れておくようにすると、1週間ほど保ちます。
冷凍保存
切らずに一度サッと茹で(50秒ぐらい)冷水に落としてしっかりと水気を絞り、それから切って使う分ずつ小分けしてラップで包み、フリーザーバックに入れ、出来るだけ中の空気を抜いて冷凍しましょう。
2ヶ月ほど保ちます。
茹でる前に切っちゃだめ
ほうれん草のアクには、尿路結石の原因にもなるシュウ酸などが含まれていて、エグミのもとでもあるので、シュウ酸を減らすためにも下茹でした方がいいのですが、そうすると水溶性であるビタミンCやビタミンB1・B2、カリウムも一緒に流れ出ていきます。
ただし茹でる時間も1分程度ならば、ビタミンCなどの残存率も70%ほどとそんなに流出しないようです。
(出典:KAGOME VEGEDAY)
ですが、茹でる前に切ってしまうと、切り口からもどんどん流れ出てしまいます。
茹でた後、氷水(冷水)に浸ける時間もできるだけ短くしましょう。
浸ければ浸けるほど、どんどん水に溶け出してしまいます。
鍋での茹で方
- 流水にあて根元を開きながら、太いときは包丁で十字の切り込みを入れ洗う。
- ほうれん草1束(約200g)で、水量は約1リットルほど。塩小さじ1を入れて沸かす。
- 茎だけを先に30秒茹でた後、全体を沈めて30秒茹でる。
- 氷水に取って色止めをし冷めたらすぐ引き上げる。
- 好みの長さに切り、さらに軽く絞る。
フライパンでの茹で方
直径26cmの深めのフライパンで一度で1束(約200g)茹でられます。鍋より時短です。
- 流水にあて根元を開きながら、太いときは包丁で十字の切り込みを入れ洗う。
- 深めのフライパンに深さ2~3cmの湯を沸かし、塩小さじ1を入れる。
- ほうれん草を広げて入れ30秒蒸し、裏返して30秒蒸し、取り出す。
- 氷水に取って色止めをし冷めたらすぐ引き上げる。
- 好みの長さに切り、さらに軽く絞る。
電子レンジで加熱
電子レンジで加熱すると500Wで2分とかなり時短ですし、水溶性ビタミンなど栄養素が逃げないのは良いのですが、シュウ酸もそのまま残るので、レンジから取り出してから5分ほど水に浸けアク抜きをしましょう。
炒める
炒めると、水溶性ビタミンなどの栄養素はそのまま残るし、β-カロテンは脂溶性なので油で炒めると吸収率がアップします。
ですが、シュウ酸が残りやすいので、気になる方は炒める前にサッと茹でるのがいいかもしれません。
根元の赤い部分も捨てずに食べる
根元の赤い部分には茎よりも栄養があるそうです。
根から吸い上げた栄養素を茎を通して葉先に送るために根の部分に栄養素を溜め込んでいて、マンガンやポリフェノールなどは、茎や葉以上に含まれているのだそうです。
調理する時つい切り落としてしまいがちですが、甘みもあって食べやすく、栄養があるなら食べた方がいいですよね。
サラダほうれん草って?
最近よく見かけるサラダほうれん草。
ほうれん草は栄養価の高い野菜ですが、アク(シュウ酸)が含まれているため下茹でしなければならず、ひと手間かかるし栄養も減ってしまうのがネック。
それを無農薬で水耕栽培するという方法でシュウ酸の量を極端に減らし、生のままサラダなどでも食べられるようにしたのが、サラダほうれん草です。
収穫の2~3日前に培養液を水に替えると、シュウ酸がほとんど無くなってしまうのだとか。
葉は柔らかく、味にもエグミが無いのでシャキシャキと生でも食べやすいのが特徴。
サラダだけではなく、少し火を通すと甘みがもっと出るそうなので、β-カロテンと油の相性も良いですし、パスタやソテーなど、ほうれん草の料理のバリエーションもますます増えていきますね。
ポパイがこの現状を見たら、すっごく羨ましがることでしょうね、たぶん♪(笑)。
出典・参照させていただいたサイト
暮らしーの ホウレンソウ
旬の食材百貨-ほうれん草
食べ物と私たち野菜(緑)-サラダほうれん草