人間の味覚とは舌の表面の味蕾という感覚器官で感じとる味のことで、長い間それは「甘味」「塩味」「苦味」「酸味」の4種類とされてきました。
明治時代、調味料について研究していた池田菊苗博士が、昆布が入った料理(湯豆腐?)を食べながら「このおいしさは何だろう」と関心を持ち研究を進め、それが昆布に含まれるグルタミン酸であることを発見!
博士はこの新しい味覚をうま味と名付け、人間の5番目の味覚として発表しました。
グルタミン酸自体は、それより前にドイツで発見されていましたが、「うま味」という味覚成分があることまでは分かっていませんでした。
その後次々と、干し椎茸のグアニル酸、鰹節・煮干しのイノシン酸も「うま味成分」であることが解明されました。
今回は「うま味」の発見の元となった昆布の「おいしさ」について調べてみました。
昆布の「おいしさ」を作る3つの成分
昆布のおいしさは、主に3つの味のトライアングル効果でできています。
1. うま味(アミノ酸)
グルタミン酸
前述したように第5の味覚成分として、最初に昆布から発見された「うま味」のグルタミン酸。
タンパク質を構成する20種類のアミノ酸の一つで、人間の体内で一番多く存在しているアミノ酸です。
脳神経の伝達物質として脳の活性化やアンモニアの解毒・利尿効果、脂肪の蓄積を抑制する働きなどもあります。
アスパラギン酸
こちらもアミノ酸の一種で、カラダの疲労の原因となる乳酸を分解してエネルギーを生み出すため疲労回復に役立ちます。
新陳代謝を活発にしタンパク質の合成を促進するため、お肌の調子を整える働きます。
うま味は「UMAMI」として世界共通語になっています。
2. 甘味(マンニトール)
乾燥した昆布の表面に白い粉が付いているのを見ると思います。あれがマンニトールです。
元々昆布の中に含まれている甘味成分で、乾燥する時に水分と共に外に出て表面に付着したものです。
糖アルコールとして、甘味料にも使われています。
3. 塩味(ミネラル)
ナトリウム(塩分)は、現代人は摂りすぎ傾向にあり悪者扱いされることが増えてますが、ヒトの体に必要なミネラルの一つ。
他にもカリウムやマグネシウム、微量ミネラルも多く含まれています。
この3つの味がうまく合わさって、昆布だしのおいしさを作り出しているそうです。
昆布の保存方法
一般的に乾物屋やスーパーなどで売られている乾物の昆布にとって、水分が一番の大敵です。カビなどが生えないよう気をつけて、湿気が少ない場所で保存しましょう。
まず使いやすい大きさにカットし(だし用なら10~15センチの長さ)に切り揃え、しっかり密閉できるジッパー付きの保存袋か缶に入れて保存すると、使う時に便利です。
湿気のない乾燥した場所なら常温保存でよいそうです。冷蔵庫での保存は、逆に湿気が発生しやすく臭い移りがあるのでやらない方がいいようです。
晴れて乾燥している日に、袋から出し天日干しをすると、さらによい状態で保存できるそうです。
おいしい昆布だしのとり(引き)方
だしをとるのに適している昆布は、真昆布・羅臼昆布・利尻昆布・日高昆布の4種類。
店で売っているのは袋に「だし用」と表示してあるので分かりやすいと思います。
まず、表面に付いているマンニトールが流れてしまうので水洗いはせず、汚れが気になる場合は、硬く絞った濡れ布巾などでサッと拭き取る程度にしましょう。
水はミネラルが悪影響を及ぼすので軟水がオススメですが、日本の水はほとんど軟水ですね。
水だし
ピッチャーや鍋などに水1リットルあたり昆布20gを入れます。
そのまま2時間以上おき、昆布をピッチャーや鍋から取り出します。ゆっくりと引き出されるため上品なだしがとれます。
ストックしやすいですが、昆布は入れっぱなしにはしないでください。
湯だし
鍋に水1Lあたり昆布20gを入れ、しばらく(30分ぐらい)浸けた後に中火にかけます。
煮立つ前(湯温が80℃以上になると昆布が浮いてくるので、そのタイミング)に昆布を取り出します。
昆布を入れたまま沸騰させると、ぬめりなどのうま味以外の成分が出てきてしまい、風味が悪くなるので注意しましょう。
昆布を取り出してから、くさみをとるために沸騰させます。
一番だし(昆布+鰹節)
鍋に水1Lあたり昆布20gを入れ、しばらく浸けた後に中火にかけます。
煮立つ前に昆布を取り出し、鰹けずり節を30g程度入れます。
ひと煮立ちしたらすぐに火を止め、アクをすくって取り除きます。
鰹けずり節はかき混ぜたりせず、自然に沈むのを待ってから布巾やキッチンペーパーで漉して取り出します。
昆布を入れ火にかける時、弱火にしてお湯の温度を60℃に保ち40分ぐらいかけてゆっくり煮出すと、プロの味になるそうです。
二番だし(追いがつお)
一番だしで使った昆布と鰹節を再利用するので、香りはやや弱くなりますが、うま味が凝縮され経済的です。
鍋に水500mLと一番だしで使った昆布と鰹節を入れ沸騰させます。
沸騰したら弱火にし5分ほど煮出します。
新しい鰹節10gほどを加え、さらに弱火で2分ほど煮出して火を止めます。
鰹節が沈んだら布巾やキッチンペーパーで漉します。
濃い味のだしがとれ、みそ汁や煮物、炊き込み御飯などの醤油・味噌・みりん・砂糖などの調味料で味付けする料理に適しています。
だしの保存方法
冷蔵庫保存
作っただしをよく冷まし、ピッチャー・タッパー・ジッパー付きの密封保存袋に入れ保存します。
鮮度が落ちるのが早いので、2~3日で使い切ってください。
冷凍庫保存
冷蔵庫保存と同じで、よく冷まし、ジッパー付きフリーザーパックやタッパーに入れ凍らせて保存できます。製氷器で凍らせていると、小分けで保存できるので便利です。
冷凍しておけば3週間ほど保ちますが、他の臭いが移ることもありますので、早めに使うようにしましょう。
だしをとった後の昆布にも栄養が残っている
だしをとった後の昆布にも、まだまだ栄養成分がたっぷり残っているそうです。
カリウム・マグネシウムなどのミネラル類や、とくに食物繊維の一種であるアルギン酸はだし殻にほとんど残っているのだそう。
アルギン酸は昆布のヌルヌルとしたぬめりの成分。腸でゼリー状に変化して余分なナトリウム(塩分)や有害物質を取り込み、体外へ排出する働きがあり、血圧や血糖値の上昇抑制作用や動脈硬化の予防効果が期待できる注目の成分です。
だし用によく使われている昆布は、肉厚でうま味が豊富な真昆布や羅臼昆布・利尻昆布などなので、そのまま食べるにはだし殻でも硬くて食感がよくないので、捨ててしまう人が多いと思います。
ですが栄養成分がたっぷり残っている昆布のだし殻。少し工夫すると美味しく食べられるので、あわせてご紹介します。
お酢をかける
昆布のだし殻を細かく切って酢をかけるだけで、美味しく食べられるようになるそうです。
だしをとった後の昆布は、細胞が水を含んで膨らんでいる状態になっていて、これがボソボソした食感の原因。しかし酢をかけると、昆布の細胞が水分を排出して細胞が引き締まるので食感を良くしてくれるのだそうです。
佃煮にする
昆布を千切りか角切りにして、鍋やフライパンで油で炒めます。しんなりしてきたら醤油・砂糖・みりんなどで味付けし、蓋をして煮詰めると佃煮の完成です。
ふりかけにする
昆布や鰹節、煮干し・ちりめんじゃこ・いりごま・大根の葉・生姜など、好きなものをフードプロセッサーなどで細かくし、醤油・酒・みりんなどで味付けしてフライパンで炒めれば、自分好みのふりかけができます。
炊き込みご飯の具にする
油揚げやごぼう・椎茸など、いつもの炊き込み御飯の具の一つとして細かく刻んだだし殻昆布も入れてみましょう。
昆布からだしも出て、いっそう美味しい炊き込みご飯ができるはず。
昆布チップスを作る
好みの大きさに切り、レンジで加熱して塩をふる。あるいは小麦粉をつけて低温で油で揚げて、塩をパラパラと振りかけると、ヘルシーな昆布チップスができます。ちょっとした、おやつや酒のつまみにもなります。
だし殻昆布も保存できる
すぐに食べなくても、だし殻昆布も保存できます。ラップなどでぴっちりと包んで冷蔵庫で3日ほど、冷凍で1ヶ月ほど保存できます。
栄養がたっぷり残っているだしをとった後の昆布も、できれば上手に活用していきたいですね。
昆布のだしが海中では出ないのはなぜ?
昆布を水に浸けるとだしが出てきます。ではなぜ海の中では昆布からだしが流れ出ないのか疑問に思ったことはないですか?
答えは「チコちゃんに叱られる(NHK)」のチコちゃん的な言い方をすると「生きてるから~」。
昆布のだしのうま味成分のグルタミン酸などはアミノ酸で、昆布の細胞の中に存在し、昆布が生きていくためにとても大切な成分です。生きている間は細胞膜によって体内に閉じ込められていて、外には出ないようになっています。
しかし、昆布は海から引き揚げられると栄養が得られなくなるので死んでしまい、細胞膜のガードも壊れるので、生きている間は中に閉じ込められていたアミノ酸などが、水に浸けると外にしみ出せるようになり、美味しいだし汁ができるのだそうです。
いったん水揚げされてすぐの生の昆布でもだしはとれるのですが、冷凍しても1週間ぐらいしか保たないため、保存のために乾燥させるのだそうです。
出典・参照させていただいたサイト:
こんぶネット だし・うま味について
フジッコ まめこん図鑑
北海道ぎょれん こんぶ料理の“基本とコツ”
たべるご