昆布の栄養と効能。食物繊維・ミネラルが豊富な昆布は、種類によって適した用途が違う

昆布巻 魚介類

縄文時代にはすでに食されていたと言われる昆布は、うま味たっぷりで栄養もあり保存もできるという優秀な食材。

鎌倉時代頃より盛んになった交易船により、産地である北海道から本州の各地へと伝わっていきました。
江戸時代中期北前航路が拓かれると、これを「昆布ロード」と言い、北海道から日本海沿岸を通り、北陸・京都・大阪、薩摩から琉球(沖縄)を経て清(中国)まで達しました。

日本各地に広がるにつれ、昆布はその土地に合わせていろいろな調理方法で食べられるようになります。
北海道では主にだし用でしたが、北陸ではとろろ昆布、関西では佃煮、沖縄では豚肉などと一緒に炒めるなどの方法が生み出されました。
昔から「名前が“喜ぶ”に通じる縁起物の昆布を、どういうふうに食べたら美味しいか」をたくさんの人が考え、いろいろな郷土料理が編み出されてきたのでしょうね。

今ではその郷土料理の枠を越え、日本中でいろいろな料理や加工食品で食べられていますが、いろいろな調理法があるのは、昆布には採れる場所により種類があり、だしに適切なもの、惣菜に適しているものと、様々な種類があるからのようです。

今回は昆布の種類についてと、含まれる栄養とその効能についてご紹介します。

昆布の種類とその特徴

昆布は海中で生きる海藻で、胞子により繁殖します。海中深さ5~7mあたりで、葉部分で光合成を行い、栄養を吸収しながら成長します。
根は栄養を吸収するためのものではなく岩に固着するためのものですが、葉部分で吸収した栄養を葉の一番下の根っこ部分に貯蔵庫としてため込んでいます。ですので、この部分に多くの栄養を含有しています。店などで「根昆布」という商品が売られていますが、栄養が豊富な部分です。
収穫期は夏から秋にかけて。晴天で波が穏やかな日に2年生(細目昆布は1年)の充分に成長した昆布を採取し、採取すると根元を切り落とし、すぐに日干しし乾かします。

日本の昆布の約9割は北海道全域、その他は東北の三陸海岸沿いで採れ、採れる場所によって昆布の種類も違うそうです。

昆布-地図

真昆布〈主にだし用〉

生産地:函館沿岸を中心とした道南
厚みがあり幅が広い。昆布の最高級品とされ、透き通っていて上品な独特の甘さのあるだしがとれます。
大阪でこの味が好まれ、国内の90%ほどが大阪で取り扱われているそうです。
他にもおぼろ昆布、佃煮、塩昆布、大阪寿司のバッテラに使う白板昆布に加工。

羅臼昆布(オニコンブ)〈主にだし用〉

生産地:羅臼海岸あたり
真昆布と並ぶ最高級品。茶褐色で、香りがよく黄色みを帯びた濃厚でコクのあるだしがとれ、関東・北陸地方での消費量が多い。
他にも佃煮やおやつ昆布に加工。

利尻昆布〈主にだし用〉

生産地:利尻島・礼文島、稚内沿岸
真昆布よりやや固め。風味がよく澄んでいる高級なだしがとれ、素材の色を変えないので懐石料理や煮物などで重宝されています。
京都での消費が多く、千枚漬けや湯豆腐などに使われています。
他にも肉質が硬いので、高級おぼろ昆布やとろろ昆布に加工されています。

細目昆布〈主に加工用〉

生産地:松前~道北の留萌あたりの日本海側沿岸
他の昆布とは違い寿命が1年のため、1年目で採取されます。幅が細く粘りが強く、切り口が白いため、とろろ昆布や刻み昆布・納豆昆布などに加工されることが多い。

日高(三石)昆布〈主に煮て惣菜用(だしもとれる)〉

生産地:太平洋側の日高沿岸
濃い緑色で黒に近い。繊維質が多く、早く煮え非常に柔らかくなるので、昆布巻やおでん種・佃煮など、昆布そのものを食べる料理に適しています。
関東での消費が多く、一般的なだし用の昆布としても使われています。

昆布-おでん

長昆布〈主に惣菜用〉

生産地:釧路・根室地方沿岸
長いものは15mにもなり、生産量は最も多い。だし用には向いていませんが、うま味成分は多く柔らかいので一般的に昆布巻やおでん種・佃煮にして食べられています。
昔から野菜代わりに刻んだものをサラダ風に食べたり、沖縄などでは豚肉との相性が良いので一緒に炒めたりして食べられてきました。

厚葉昆布〈主に惣菜用〉

生産地:釧路・根室地方沿岸
葉に厚みがあります。長昆布と同じ地域ですが長昆布とは異なり、波の穏やかな場所で生育します。表面に白い粉のようなマンニットを帯びていて、独特の刺激があります。
昆布巻に使われたり、佃煮・塩昆布・酢昆布などに加工されています。

ガゴメ昆布〈主に加工用〉

生産地:函館沿岸を中心とした道南あたり
葉の表面に籠の編み目のような模様があるため、こう呼ばれています。
粘りが強くとろろ成分も多いので、とろろ昆布や納豆昆布・松前漬けなどの加工品に使われています。
昔は、だしはとれないのに真昆布に混じって生育するため雑海藻と見なされ、他の昆布より低価格で取引されていました。
しかし、多く含まれる粘りの成分「フコイダン」が、健康維持につながる機能性成分ということが分かり、一時期価格が急騰しました。
現在は栽培方法も確立されて、生産量も安定してきているようです。

とろろ昆布とおぼろ昆布の違い

どちらも甘酢に浸し乾燥させたものを削っているので似ていますが、製造工程が違うそうです。

とろろ昆布は、甘酢に浸した乾燥昆布を重ねて厚くしてしたものの側面を薄く削ったもの。

おぼろ昆布は、厚い葉の昆布を甘酢に浸し乾燥させたものの表面を薄く削ったもの。
最初に削る黒い表面の部分は甘酢がよく染みているので、酸味が多い黒おぼろになります。内側が太白おぼろ。
最後に残った昆布の芯の部分がバッテラ寿司や押し寿司に使われる、白板昆布になるそうです。

昆布-バッテラ

昆布の主な栄養素と効能

料理にもよりますが、昆布の平均的な1食分あたりのカロリーは5kcal未満だそうで、低カロリーな食材。
栄養素はおおまかに昆布の27%ほどが食物繊維、糖質34.5%、ミネラル20%、タンパク質8%、脂質1%、水分9.5%だそうです。
まこんぶ/素干し 食品成分データベース

生活習慣病予防やダイエットに役立つ食物繊維がたっぷり

昆布には水溶性食物繊維であるアルギン酸フコイダンが豊富に含まれています。

アルギン酸

昆布のヌルヌルとしたぬめり成分がアルギン酸です。
アルギン酸は消化吸収されず腸へ届き、ゼリー状に変化して、余分なナトリウム(塩分)や有害物質を取り込み、体外へ排出する働きがあります。
その働きから、血圧や血糖値の上昇抑制作用や動脈硬化の予防、便秘解消などが期待できます。

フコイダン

もうひとつのヌルヌル成分であるフコイダンも、生活習慣病予防のために役立つ成分であることが分かっています。
免疫力の正常化、血糖値やコレステロール・中性脂肪の低下作用、ピロリ菌の抑制、抗腫瘍や抗ガン・抗アレルギー、肝機能向上作用などが期待されています。

ガゴメ昆布-フコイダン

五大栄養素のひとつであるミネラル成分が豊富

ミネラルは、細胞組織や体の機能を維持したり調節したりする重要な役割を担ってくれている大事な栄養素。

海中で育つ昆布は海水の様々なミネラルを吸収しているので、人間にとっても必須とされているミネラルのほとんどを含んでいます。
現代人に不足していると言われている、カルシウムマグネシウム亜鉛も豊富です。
たとえばカルシウム。骨や歯の形成に必要なミネラルで、カルシウムといえば牛乳を思い浮かべる人も多いと思いますが、昆布にはその6倍ほどが含まれているそうです。

ヨウ素(ヨード)の含有量が食品中でもトップレベル。
ヨウ素は甲状腺ホルモンの主原料です。甲状腺ホルモンは新陳代謝を高めたり、子どもの成長を促進させる働きをするため、体になくてはならないミネラルです。

ただし、ヨウ素は海藻類に沢山含まれているミネラルで、海藻をよく食べる日本人は基本的に足りていて、普段食べている量でヨウ素不足になることはほとんどありません。
過剰に摂取しすぎると甲状腺機能低下症という病気になる可能性がありますので「ミネラルが豊富だから」「健康やダイエットにいいらしいから」と、むやみに昆布ばかり食べるのは避けましょう、とのことです。

脂肪の燃焼を助けるフコキサンチン

海藻に含まれるカロテノイドの褐色の色素成分フコキサンチンには、脂肪の蓄積を抑え、体内にたまった脂肪を燃やすUCP-1というタンパク質を発現させるという機能があることが、研究の結果分かってきているそうです。

うま味成分であるグルタミン酸が豊富

昆布の特徴としては、うま味成分であるグルタミン酸が豊富で、美味しいだしがとれるということはご存知のとおり。

グルタミン酸はタンパク質を構成する20種類のアミノ酸の一つで、筋肉や免疫力アップに働いています。
効能的には、脳の機能を活性化する効果やアンモニアの解毒・利尿効果、脂肪の蓄積を抑制する効果などに期待が持てます。
なにより、うま味があると塩分少なめでも美味しく食べられるので、無理なく減塩ができ、高血圧予防にもなりますね。

このように昆布は食物繊維・ミネラルが豊富な優秀な食材ですが、だしとしても使われていますので、意識しなくても日頃から何かと摂っている食材です。
これからも上手に美味しく食べていきたいですね。

とろろ昆布-うどん

出典・参照させていただいたサイト:
こんぶネット
フジッコ 発見!昆布のチカラ
北海道ぎょれん こんぶの栄養
wikipedia コンブ

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