「梅はその日の難のがれ」と言われ、保存食として、また健康維持のために昔から食べられてきた梅干し。
梅実の記事でも記したとおり、梅の実自体が栄養価の高い果実ですね。
ミネラル類やクエン酸、梅リグナンなどのポリフェノールを豊富に含んでいます。
それを梅干しにすることで、どんな食べ物になるのか。
ダイエット効果も期待できる梅干しを、いつどのように食べると効果的なのか、今回はそのあたりを中心に調べてみました。
梅干しはこうやって作られる
父方も母方の祖母も、毎年当たり前のように梅干しを作っていました。
母は作っていませんでしたねぇ。それというのも、梅干しを作るとなると、けっこう大量に出来上がります。なので、祖母も親戚のおばちゃん達からもおすそわけが届くので、作らなくても常に食卓にある状態だったからです。
私も作ったことはなく「平日仕事に出かける身としては、天気を見ながら土用干しをするのは無理だから」というのが理由なのですが、作っている人は工夫しながら作っているので、面倒くさがりやの性格なので、それを理由にしているだけかもしれません。
ですので、梅干しを作っている人から聞いた話を簡単にまとめます。
まず、アク抜きやヘタ取りなどの下処理をし、容器に入れた梅実に塩をまぶし塩漬けにし、重石を乗せて圧をかけます。
数日経つと少しずつ水分が出てきます。これが梅酢です。
水分を出すことで、果肉に含まれる酸味や苦味・渋みが実から外に出てくるのです。
その出てきた梅酢にまた塩を混ぜると、梅実に塩分が浸透し保存力が高まるのだそうです。
良い梅干しを作るのに十分な量の梅酢を出すためには、それなりの量の塩が必要なのだそうです。
昔ながらの梅干しの塩分量は22%ほど。これだけあれば、非常に保存性に優れ、保存に適した環境にあれば100年経っても、食べられる(味はともかくとしても)梅干しが出来るそうです。
22%の梅干しはかなりしょっぱいです。梅干し1個だけで、軽く白米一膳は食べられそうですね。
近年、塩分の摂り過ぎが問題になっており、スーパーなどの店に行くと、4%とか6%と減塩された梅干しがよく売られています。
しかしこれも最初から塩分少なめで作っているわけではないようで、良い梅干しを作るには、一度昔ながらの塩の量を入れ塩漬けにする必要があるそうです。
それから塩抜きをして、薄くなった味に旨み調味料やはちみつ、鰹節などを入れ味を整えています。
その分、保存性は悪くなり、賞味期限を見ると半年ぐらいになっていますね。
カロリーも塩漬け梅干し100gあたり33kcalに対し、調味漬け梅干しは96kcalぐらいになることは、ちょっと考えていた方がいいかもしれません。
参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
梅干しに期待される健康効果
1. 食中毒予防
おにぎりやお弁当の白米の上によく梅干しを入れますが、梅干しに豊富に含まれるクエン酸と塩分に強い抗菌作用があり、食べ物が傷むのを防ぎ、食中毒予防のためです。
しかも適度に酸っぱく塩気もあるので、おかずにもなるという嬉しい食材です。
2. 食欲を増進させ消化も促進させる
梅干しは見ただけでも口の中がすっぱくなり唾液が出てきますが、唾液の分泌が増えると、食欲を増進させます。
唾液に含まれるアミラーゼという酵素は、ご飯やパンなどのデンプン質の消化を高めて、消化吸収を助けてくれます。
また、口の中に残った食べかすも分解してきれいに洗い流し、口の中を清潔に保ってくれるという働きもあります。
3. 疲労回復や老廃物の排除
梅干しに多く含まれるクエン酸やリンゴ酸などの有機酸は、糖質の代謝を促しエネルギーへと変換する働きをスムーズにします。
その結果、疲労から体を回復させ、栄養素の不完全燃焼を改善し老廃物がたまるのを抑え、肩こりや腰痛などの緩和やアンチエイジングにも役立つことが期待できます。
4. 夏バテ予防や熱中症対策
汗をかくと水分とともにミネラルやビタミンも失われますが、梅干しの塩分やクエン酸のキレート作用(ミネラル類を吸収されやすい形に変える)で、塩分やミネラルが補給され、夏バテ予防や熱中症対策に役立ちます。
5. 動脈硬化予防や体の老化抑制
動脈硬化とは、簡単に言えば血管の老化のことで、肥満や高血圧・高血糖、中性脂肪やLDLコレステロールが多い、喫煙などが原因で起こることもあります。
血管の内側にコレステロールなどが付着して血管が狭く硬くなり、血液の流れが悪くなった状態のことです。
クエン酸には、血管の中で血小板が集まるのを防ぎ、血液をサラサラにし流れを良くする効果があると言われています。
また、梅リグナンのピノレシノールやリオニレシノールには抗酸化作用があるので、体が酸化するのを抑え、アンチエイジングにも期待できます。
6. 風邪やインフルエンザ予防
梅リグナンの一種であるエポキシリオニレシノールには、インフルエンザウイルスなどの増殖を抑える働きがあることが、研究で判明しているそうです。
昔から「風邪予防に梅干し」と言われてきたのは、この成分があるからかもしれません。
7. 二日酔い解消に
梅干しを食べると体内が弱アルカリ性になるので、胃粘膜の修復を助け、二日酔いから回復するのを早めてくれます。
お酒を飲む前に食べると、二日酔い予防にもなるかもしれません。
8. 抗炎症作用
ピノレシノールには抗炎症作用もあり、アレルギーや様々な炎症を抑える効果が期待できます。
9. 糖尿病予防
梅に含まれるオレアノール酸には、糖質の消化吸収を穏やかにし、血糖値の上昇を抑える働きがあり、糖尿病の予防効果がみこまれています。
10. 骨粗しょう症の予防
梅干しには強い骨作りに必要なカルシウムやマグネシウムが含まれていますが、それの体内での吸収を高めてくれるクエン酸もあるため、骨粗しょう症の予防に有効と言われています。
11. 脂肪燃焼効果
梅にはバニリンという脂肪細胞に刺激を与える作用がある成分が含まれています。
その刺激によって、脂肪細胞が増加することを防ぎ小さくしていくので、脂肪が減少することが期待されています。
バニリンは梅干し以外の食材にはなかなか含まれていない成分と言われています。
また、梅干しには植物性乳酸菌も含まれています。
これにより腸内環境が整うことで、便秘や肥満予防、免疫力アップ、抗アレルギー効果なども期待できます。
焼く(加熱)することで、効果が増す
梅干し自体にはありませんが、これを加熱することでムメフラールという成分が生まれます。
ムメフラールは血流を改善し血栓予防や動脈硬化などの生活習慣病予防に役立つとされています。血流が良くなることで体が温まり、冷え性の改善や肩こり解消、美肌効果も期待できます。
脂肪燃焼効果があるとされているバニリンですが、加熱すると1.3倍に増えるともいわれています。
梅干しはフライパンなどで少し焼くか、レンジで1分ほど加熱するだけでOK!だそうで、手軽にできそうですね。
おまけに、冷めても効果は変わらないのだそうです♪。
食べるのは夜がいい?!
質の良い睡眠をとるためには、副交感神経を優位にすることが大事です。
夕食に酸っぱいものを食べると、消化や吸収などといった副交感神経の働きが促進され、体がリラックスし安眠できるそうです。
カルシウムも夜に摂取した方が沈着されやすいのだとか。
梅干しは夜食べるのが効果的なようです。
ダイエットに適した食べ方は?
脂肪燃焼効果があるからといって、一度に何個もたくさん食べても効果はありません。
逆に、しょっぱいので塩分摂りすぎになってしまいます。また、梅干しには食欲を増進させる作用もあるため、いつもよりご飯など食事量が増えてしまっては、本末転倒になってしまいますね。
梅干しは1~3個までを毎日食べることを基本にしましょう。
食べ方は、ご飯と一緒に食べることが多いですが、ダイエットのために食べるのであれば、食前に食べるのがいいそうです。
梅干しには糖質の吸収速度を遅らせ、食後の血糖値上昇を抑える働きがあるからです。
自分好みの味の梅干しでいいので、毎日1~2個
昔ながらの梅干しは、だいたい一個(可食部)14gに3gの食塩が含まれているようです。
保存性は高いのですが、食塩の摂取基準量は成人男性で1日8g、女性で7gですから、1日3個も食べるとそれだけで基準量をオーバーしてしまうことになります。
塩分の高い梅干しは塩分を摂りすぎないように注意しましょう。
塩分の高い昔ながらの梅干しなどは、そのままご飯と共に食べる以外にも、惣菜として、いわしなどの魚を調理する時、調味料として一緒に煮ると魚の臭みとりにもなります。鶏肉や豚肉を梅干しの果肉と大葉で巻いて肉巻きにして食べるのも美味しいですし、サラダなどのドレッシングに入れるとちょっと酸っぱい爽やかな味になりますね。
アイデア次第で全体的に減塩することはできます。
減塩梅干しは、塩抜きの段階で梅の他の栄養素も多少流れ出てしまうということもありますし、旨み調味料などを足すのでカロリーが増えるという難点があり、健康維持のために梅干しを食べるとしたら、昔ながらの梅干しの方がよいというのが通説ですね。
ただ、「塩抜きの工程時、塩が抜けた隙間に種から梅リグナンが出てきて含有量が増える」という話もあり、どちらがいいかは一概には言えません。
無理してまで顔をすっぱくして梅干しを食べるより、好きな味の梅干しを1日1~2個、毎日継続的に食べるということが、大切なのかもしれませんね。
梅干しが赤いのは赤ジソを一緒に漬け込むから
余談ですが、よく見かける梅干しはほとんどが赤い色をしていますね。
梅実を塩漬けにすると自然に赤くなるわけではなく、途中で一緒に漬け込む赤ジソの色素により赤く染まるのだそうです。
塩漬けして十分な量の梅酢が上がってきたタイミングで、アク抜き処理をして塩で揉んだもみシソを梅実と一緒に漬け込みます。
梅干しに茶色っぽいのや真っ赤なものなど違う色があるのは、この漬け込む赤ジソの量の違いによるものです。
シソにもシソの記事でも記したように、赤ジソの色のもとになっているアントシアニンなど、抗酸化作用や強い防腐・殺菌作用があります。
赤シソを入れると見た目が鮮やかになるだけでなく、健康維持に役立つ成分が増え、また独特な爽やかな風味も楽しめますね。
天日干し(土用干し)をする時は一緒に赤ジソも干していると、梅干しと一緒に美味しく食べられる食材になるし、もっと水分を飛ばすと「ゆかり」のようなふりかけにもなります。
シソが嫌いでなければ、一緒に漬け込んだ赤ジソも梅干しと共に食べることをオススメします。
出典・参照させていただいたサイト:
紀州梅効能研究会
熊平の梅
macaroni 梅干しダイエット
毎日気になる日々のこと