エノキタケの栄養と効能。天然物と人口栽培種では、姿形や味も全然違う

エノキタケ-醤油煮 きのこ

比較的安価で、一年中スーパーなどの店で購入できるエノキタケ。味にクセがないので、汁物や炒め物などジャンルを問わず使いやすい食材で、とくに寒い鍋の季節に大活躍しますね。

ところで、エノキタケといわれると「白くてひょろひょろと細長く、先っぽの傘が丸いキノコの束」を思い浮かべる人が大多数だと思いますが、これは完全な人工栽培のエノキタケで、天然の物は姿形や味も全然違うのだそうです。

なぜ、そんなに姿形や味が違うのか、また一般的に売られているエノキタケに含まれる栄養素や効能を調べてみましたので紹介します。

エノキタケとは

エノキタケ-天然

天然のエノキタケ

天然のエノキタケは、晩秋から初春という気温の低い寒い季節に、エノキやクワ・ポプラなどの広葉樹の枯れ木や切り株に寄生して生えるキノコなので、エノキタケと呼ばれてきました。
キノコ菌としては弱いので、気温が高くなり他の菌の活動が活発になると生えなくなる、という寒い季節にしか見つけられない貴重なキノコなのだそうです。

上写真のように、柄(軸)部分は短く、傘は2~10cmと広く、天然のエノキタケは日光にあたるので、メラニン色素が作られ栗色から黄褐色をしており、傘には強いヌメリと光沢があります。
柄(軸)の部分は固いのでほとんど切り除かれるのですが、傘部分は汁物などに使うと、適度なヌメリがあって舌触りが良く食べ応えもあり、濃厚な出汁が出て旨さが引き立つのだそうです。

白色人口栽培種

一般的に現在よく見かけるものです。

大正末期頃、エノキタケを栄養のあるオガクズに米ぬかを混ぜた培地(菌床)で育てることに成功。
その頃のものは、低温で光を当てずに暗室で育てていたので、エノキは光を求めて柄を細長く伸ばし、色もうっすらとした茶色でした。
その中でも白っぽいものが人気だったので、改良が重ねられ、現在売られているのは光を当てても茶色くならない白色品種になっているのだそうです。

農薬を一切使わない清潔な低温工場で、瓶に培地を詰めエノキタケの菌を植え付け菌糸を培養し、発芽したエノキタケが2~3cm程度伸びたら「紙巻き」を行います。
紙巻きをするのは、光ではなく酸素を求めて真っ直ぐ育つよう、また外側が乾かないようにするためだそうです。
エノキタケの下部に縛ったような線があると思いますが、あそこが瓶の頭部分ですね。

ブラウンエノキ

ブラウンエノキは天然のエノキと人口栽培種の白いエノキを掛け合わせたエノキ。
天然物の特性も引き継いでおり、ヌメリやコクのある風味豊かなエノキタケになっています。
食物繊維は白色人口栽培種よりも多く含んでいて、シャキッとした歯応えがあるのが特徴です。

エノキタケの栄養と効能

エノキタケ-2種

ここでは白色人口栽培種を中心に紹介します。
白くてひょろひょろと細長い姿なので、栄養があるようには見えませんが、以下のようにさまざまな栄養素が含まれています。

カロリーは可食部100gあたり34kcal。
主に含まれるのは、タンパク質炭水化物(糖質+食物繊維)・ビタミンB群(ビタミンB1・ビタミンB2・ナイアシン・パントテン酸・ビタミンB6・葉酸)ビタミンDカリウムリン鉄分亜鉛などです。
参考:※参照:「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

エネルギー代謝に関与するビタミンB群

エノキタケに多いビタミンB群は水溶性ビタミンで、主に糖質・脂質・タンパク質のエネルギー代謝が円滑に行えるように働く補酵素として関与します。
糖質・脂質・タンパク質だけを摂取しても、ビタミンB群が不足していると代謝がスムーズに行われなくなり、体力が衰えてしまいます。

ビタミンB1は糖質の代謝に、ビタミンB2は脂質の代謝に、ビタミンB6はアミノ酸の再合成を助ける補酵素として働きます。
ナイアシンもエネルギー代謝に関わり数種類の酵素の働きを助け、パントテン酸はエネルギー代謝とエネルギー産生に不可欠な酵素を補助しています。
葉酸は、ビタミンB12と協力して赤血球の生成を助けます。また、胎児の正常な発育に役立ったり、成人においても、脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患を防ぐということが研究結果で報告されています。 

カルシウムやリンの吸収を助けるビタミンD

ビタミンDには、体内でのカルシウムとリンの吸収を促進する働きがあり、丈夫な骨をつくることを助け、血液中のカルシウム濃度を保つ働きもあります。また、免疫力をアップする効果にも期待ができます。
キノコ類であるエノキタケにも多く含まれています。

ビタミンDは食品から摂取する他に、日光に当たることで紫外線により合成されます。

腸内環境を整える、食物繊維

エノキタケには水溶性と不溶性の食物繊維が含まれていますが、とくに多い不溶性食物繊維は、腸の中で水分を吸い込んで膨らむことで腸を刺激し、便通を促して便秘の解消や有害物質を排出させるのに役立ちます。
それにより、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の予防にも効果が期待できます。

また、しっかり噛んで食べると満腹感が得られ、おまけに低カロリーなのでダイエットにも役立ちます。

塩分(ナトリウム)の排出を促すカリウム

カリウムは、身体に余った塩分(ナトリウム)を排泄する働きのあるミネラル。
キノコ類のなかでもエノキタケには多く含まれていて、食物繊維との相乗効果で血圧の調整作用やむくみ解消に期待が持てます。

免疫機能改善が期待できるキノコキトサン

キノコキトサンとは、β-グルカンを含む多糖類で食物繊維のひとつです。
体の免疫を改善し体外から入ってきたウイルスなどを撃退し、細胞の活性化や高血圧などの生活習慣病から体を守る働きがあります。また、がん細胞の増殖を抑制する効果もあるとされており、研究が進められています。
糖質や脂質の吸収を抑える効果や、整腸作用も期待できます。

白色栽培種のエノキタケの選び方

エノキタケ-鍋

新鮮なエノキタケは綺麗な乳白色をしています。
なるべく白い色で、軸が太くシャキッとハリがあり、傘が小さめで開いていないもの。
また水分に弱いので、袋の内側やエノキタケに水滴が付いているものは、時間が経っていますから避けるようにしましょう。

保存方法

エノキタケは寒冷な気候で育つキノコなので、15℃以上の常温で保存していると、1~2日ですぐ腐りはじめてしまいます。
エノキタケを保存する場合は冷蔵や冷凍で、できるだけ長く新鮮な状態をキープするようにしましょう。

冷蔵保存

水気に弱いので、入れてある袋から出し石づき部分が付いたままキッチンペーパーに包み、冷蔵庫の野菜室に、石づき部分を下にして立てて保存しましょう。
エノキタケの保存温度は10℃ぐらいがよいといわれているので、冷蔵庫の野菜室は適温です。1週間ほど保存できます。

冷凍保存

もう少し長く保存したい場合は、冷凍すると1ヶ月ほど保存できます。
その時は、水洗いはせず、石づき部分はカットして1本ずつにほぐしてからフリーザーパックに入れ、空気に触れると酸化が進み劣化が早まるので、できるだけ空気を抜いてから保存しましょう。

冷凍保存すると良いこともあります。
一つは、脂肪の燃焼を促進しダイエットに役立ったり、免疫機能の改善など生活習慣病予防にもなるキノコキトサンの量が、12倍ほど増えるそうです。
もう一つは、凍らせると細胞壁が壊れるので、うま味を作り出す酵素が働き、うま味がアップします。
それで一時期ブームになった「エノキ氷」にして保存するという方法もあります。

エノキ氷の作り方

エノキ氷

材料はエノキタケ300gと水400ml((1袋は100gですが石づき部分を廃棄すると85gほどになるので、それに合わせて水の量を調整してください)。

  1. エノキタケと水をミキサーに入れ30秒ほど粉砕
  2. それを鍋に入れ、強火で1~2分加熱
  3. 弱火にし焦げないように30秒ほど加熱
  4. 粗熱をとり、製氷皿に入れて冷凍庫で保存(製氷皿に入れて冷凍させると、使う分だけ取り出せるので便利です。)

一度作っておくと、味噌汁などのスープや鍋物・炒め物などに入れて、毎日手軽にキノコキトサンを摂取できますね。家庭の冷凍庫で保存する場合は、3週間ほどを目安に使い切ってください。

その他の保存方法

エノキタケ-なめ茸

なめたけを作る

よく瓶入りで売られているなめたけは、京都・嵐山の「錦」という料亭が、1958年ごろに創作し普及させたもので、エノキタケを醤油・みりん・砂糖といった調味料で煮て仕上げたものだそうです。
これは家庭でも作ることができ、冷蔵庫で5~6日保存できます。

乾燥させて保存

  1. 石づきをカットする
  2. 小房に分け、ザルやネットに並べる
  3. 時々上下を返しながら、3日ほど天日干しする
  4. 乾燥剤と一緒に清潔な保存袋などに入れて、冷蔵庫で保存

1ヶ月ほど保存でき、水分が無くなるのでうま味が凝縮され、日光に当てることでビタミンDが増えるという利点があります。
しかし、乾燥が中途半端だと水分が残ってしまいカビが生えたりするので、注意が必要です。

美味しく栄養を摂るための注意点

エノキタケ-味噌汁

洗わない

エノキタケだけでなくキノコ類全般にいえることですが、洗うと水溶性の栄養素が流れ出てしまうだけでなく、風味や食感も悪くなってしまいます。
汚れが気になる場合は、乾いたフキンやキッチンペーパーで拭き取るだけにして調理しましょう。

必ず加熱調理

エノキタケは、赤血球を壊してしまう「フラムトキシン」という毒性のタンパク質を含み、また、食中毒の原因になる「リステリア菌」に感染している可能性があるので、生では食べられません
これらは加熱すると不活性化・死滅するので、必ずクタっとするまでしっかり加熱してから食するようにしましょう。
※最近では生食用のエノキタケも販売されているようです。しかしそれには「生食用」と明記されているはずですので、それがない場合は、やはりしっかり加熱しましょう。

スープや煮汁も残さず一緒にとる

エノキタケにはビタミンB群などの水溶性の栄養素が多く含まれています。
スープや煮汁に溶け出していますので、それも一緒に食するようにすると、効率よく栄養を摂取できます。

油で炒めたり、油も一緒に食べる

含まれるビタミンDは脂溶性のビタミンなので、油で炒めたり一緒に食べると吸収率がアップします。
また、カルシウムが豊富な小魚や牛乳・チーズなどの乳製品と一緒に食べると、ビタミンDはカルシウムやリンの吸収を助けるビタミンなので、さらに効果的に栄養を摂取できます。

エノキタケ-揚げ物

まとめ

いかがだったでしょうか?
エノキタケというと、白くてひょろひょろと細長いキノコだとずっと思っていましたが、人工で生まれた栽培種だったんですね。
天然物は全然姿が違うことが分かり、びっくりしました。
寒い季節にしか生えてこないという天然物のエノキタケ。機会があれば食べてみたいものです。

出典・参照させていただいたサイト:
旬の食材百科 エノキタケ
Kurashriru えのきたけの選び方と栄養素
まごころケア食 えのきたけの栄養について
BE-PAL 野生のエノキタケ
wikipedia エノキタケ

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