干し椎茸の栄養。うま味成分であるグルタミン酸が増え、さらにグアニル酸が生成される

干し椎茸-2 うま味-調味料

椎茸は古来より食べられていて、鎌倉時代には精進料理のだしを取るために無くてはならないものでしたが、その頃は栽培が不可能だったため、自生しているものを採取するしかなく、とても高価な食材だったそうです。

生の椎茸は約90%が水分なので鮮度を保つのが難しく、乾燥させるという保存方法が考え出されたのでしょうが、乾燥させることで成分がギュッと濃縮され、うま味も栄養価も驚くほど高くなるのだそうです。
人工栽培は江戸時代より始まったらしく、現在では生の椎茸も容易に手に入るようになっていますが、干し椎茸は常備保存できることと、うま味や栄養価が高くなるという利点で、根強く流通しています。

干し椎茸の種類

干し椎茸-種類

干し椎茸は、生椎茸を天日干しあるいは熱機械で乾燥させたもので、乾物として扱われています。
3種類に分けられていますが、これは品種が違うわけではなく、収穫した時の椎茸の状態で分けられているそうです。

冬菇(どんこ)

春先の気温が低い時期にゆっくり成長したものをカサが開ききらないうちに収穫したもので、ふっくらと肉厚で丸みを帯びています。
だしがたっぷりと取れ、肉厚で形も良いので、そのまま食感を楽しむ煮物や鍋物、天ぷらなどによく使われています。

その中でも、カサの茶色が薄く亀の甲羅のような美しい模様が入っているものは、めったに収穫出来ないので「花冬菇」と呼ばれ、高級品です。

香信(こうしん)

気温や湿度が高い時に短時間で成長したものを収穫し、カサが7分以上開いた状態で、大きいですが厚みがなく全体的に平たい形になっています。
他の食材と味を引き立てあうので、細く切って、ちらし寿司や炒め物に使われています。

香菇(こうこ)

冬菇と香信の中間のようなもので、冬菇ほどではないものの厚みがあり、香信に近い大きさがあります。
和食から中華まで、いろいろな料理に使うことができます。

干すことで増える栄養価と効能

干し椎茸-煮しめ

生椎茸と干し椎茸の栄養価を比べてみると

●生椎茸(菌床栽培)100gあたり
カロリー…19kcal
水分…90.3g、食物繊維…4.2g、カリウム…280mg、ビタミンB1…0.1mg、ビタミンB2…0.2mg、葉酸…75μg、ビタミンD…0.4μg

●干ししいたけ100gあたり
カロリー…182kcal
水分…9.7g、食物繊維…41.0g、カリウム…2100mg、ビタミンB1…0.5mg、ビタミンB2…1.4mg、葉酸…240μg、ビタミンD…12.7μg
日本食品標準成分表2015年版(七訂)

と、これは干すことで水分が減るから増えているわけなのですが、それでも、食物繊維が4.2gから41.0g、カリウムにいたっては280mgが2100mgになるなど、全体的にギュッと凝縮され栄養価が高くなっていることが分かります。
これによって、効能も高くなります。

免疫力・抗腫瘍力のアップ

不溶性食物繊維・β-グルカンの一種であるレンチナンには、風邪などの外敵ウイルスから体を守る免疫力をアップさせるだけでなく、ガンなどの抗腫瘍効果もあることが研究により分かってきています。

食物繊維が増えると、便秘解消や腸内環境改善にもなり、食後の血糖値の急激な上昇を抑える効果も期待出来るので、ダイエットにもつながりますね。

生活習慣病予防効果

椎茸特有の栄養成分であるエニタデニンには、総コレステロール値を下げ、血液の流れを良くし血圧調整作用があるので、高血圧症や動脈硬化などの生活習慣病の予防に効果がもてます。

また、生椎茸にはあまり含まれていなかったカリウム量が増えることで、体の中の余分なナトリウム(塩分)を排出させる働きが高まり、血圧を下げたりむくみ予防に効果が期待できます。

骨粗しょう病の予防

平均的なデータによると、カルシウムやリンの吸収をサポートする働きのあるビタミンDの量も増えています。
ビタミンDが増えると、骨や歯が丈夫になり骨粗しょう症予防に期待がもてますし、神経を鎮めてイライラを防ぐとも言われています。

ただ、市販されている干し椎茸は、天日干しのものと熱機械で乾燥させたものがあり、熱機械で乾燥させたものは旨味成分は増えていますが、ビタミンDの量はあまり増えていないものもあるらしいです。
日光に当てるとビタミンDに変化するエルゴステロールも豊富に含まれているので、できれば干し椎茸も、水で戻す前に1時間ほど日光に当てるようにすると、干し椎茸のひなた臭さが取れ、ビタミンD量もアップするようです。

乾燥させるとうま味成分が増える

乾燥させると香りや旨さが高くなる理由は、乾燥する過程で、酵素や熱の働きによってレンチオンという香り成分、グルタミン酸といううま味成分が増え、さらにグアニル酸といううま味成分が生成されるから。
グアニル酸は、調理する乾燥→水戻し→加熱の過程で細胞が変化し、大量に増えていくのだそうです。

グアニル酸はうま味成分ですが、他にも前記で紹介したエリタデニンと協力して、血小板が集まり塊になるのを抑制したり、血中コレステロール値を下げる働きがあり、血液をサラサラにし、これも生活習慣病予防に効果があると言われています。

干し椎茸の美味しい戻し方・保存方法

干し椎茸-水で戻す

まず戻したい量をサッと水洗いし、密閉性の高いタッパーや密封袋に入れます。そこに冷たい水(約5℃ぐらい)を椎茸がかぶるくらい、ひたひたに入れ蓋をします。蓋が無い容器の場合は落し蓋状にラップをしましょう。
冷たい水を入れるのは、その方が吸収も良く、うま味成分のグアニル酸が沢山出てくるからです。

それを冷蔵庫(低い温度)に入れじっくり戻していきます。肉厚のどんこで9~12時間。香信で4~7時間。
そんなに待てない、と思う人もいるかもしれませんが、夜に冷蔵庫に入れておけば翌朝には戻っているので、そんなに大変ではありません。
冷たい水でじっくり戻すことで、肉質もふっくらと膨らみ、柔らかくなるそうです。

どうしても時間が無い場合は、耐熱容器に入れひたひたくらいの水で浸し、ラップをかけて常温で10分程おき電子レンジで温めるという方法もありますが、苦味が出てきて美味しくならないので、あまりオススメしません。

干し椎茸の保存は、高温多湿の場所は避け、乾燥剤を一緒に入れた密封容器で。光と湿気を避けるために冷暗所か冷蔵庫で保存すると1年ぐらいは保つようです。

戻し汁にもうま味がたっぷり。捨てずに料理に活用しよう

干し椎茸-うどん

戻し汁には香りが移っているだけではなく、椎茸から溶け出したうま味成分のグアニル酸がたっぷり含まれていて、美味しいだしになっています。
これと昆布から出るうま味成分・グルタミン酸は相性がいいので、組み合わせるのもいいですね。

だしではなく食材としての椎茸が目的であっても、捨てずに鍋や煮物、スープ・味噌汁などに使いましょう。

水で戻した椎茸は冷蔵庫で約一週間ほど保ちます。
戻し汁も余った場合は、フリーザーパックや製氷器に入れ冷凍庫で凍らせておくと、いつでも使えて便利です。

おまけ

干し椎茸を時間がある時などに粉末にしておくと、手軽に椎茸の栄養が摂れますね~。
作り方はフードプロセッサーにかけるだけ。
煮物や味噌汁などの料理にパパッと入れるだけで、うま味や栄養が増えるのでいいアイデアだと思います。

出典・参照させていただいたサイト:
ヒトシア しいたけの栄養
姫野一郎商店 しいたけの豆知識
Rassic 干し椎茸と生椎茸、どう違うの?

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