牛肉の部位による、味・食感・栄養価の違い。美味しく食べるために適した料理は?

牛肉-焼肉 畜産物

牛1頭(約700kg)から取れる精肉部分は、約300kgだそうです。
それに内臓部分を含めて、部位により、同じ牛でも味や食感・栄養価も違ってきます。

食べるとその違いは分かりますが、もう少し詳しく知ることで、もっと料理にその特徴を活かすことができるようになり、効率的に栄養を摂りながら美味しく食事できるようになる気がします。

その部位の特徴や、調理法などを紹介いたします。
まずは食肉部門から。

牛肉-焼肉-焼く前

食肉部位の特徴

ネック(首)

よく動かす部位なので、筋肉が発達しておりキメが粗く硬くて筋っぽいですが、脂肪分が少なく旨み成分が豊富です。

他の部位と混ぜて小間切れやひき肉として使われてます。

肩ロース(くらした・ざぶとん)

首に近い背中の部分で、牛肉の中では大きな部位です。

よく動かしている部分なのでやや筋はありますが、キメが細かく肉質は柔らかい。
脂肪が適度に霜降りで付いていて、旨み成分があり風味の良い部位です。
カロリーはちょっと高めですが、高たんぱく質でビタミンB1、カルニチンといった成分が豊富。

薄切りにしてすき焼き・しゃぶしゃぶ・焼肉・煮込みなど、いろいろな料理に使えます。
くらした・ざぶとんとも呼ばれ、上カルビとして出す店をあります。

肩(くり・みすじ・とうがらし)

運動量の多い部位なので肉質は硬めですが、たんぱく質やコラーゲンが多く脂肪分の少ない赤身肉。

じっくり煮込むと柔らかくなるため、シチューやカレー・スープなど煮込み料理に適しています。

リブロース

背中の真ん中の部分。赤身と脂肪のバランスがよく、キメも細かく柔らかい。
サーロインに並ぶほどの高級部位。

コクがあり風味も良いので、ステーキ・ローストビーフ・しゃぶしゃぶで。霜降りのものはすき焼きに最適です。

サーロイン

リブロースからランプに続く腰に位置する部位。キメも細かく柔らかく「サー」の称号を持つ最高部位。
甘みがありジューシーで、形・香り・風味も抜群で、牛肉そのものの旨みを堪能できます。

ローストビーフやすき焼きにしても美味しいですが、ステーキが最適です。

牛肉-サーロインステーキ

ヒレ

サーロインの下あたりにあり、ほとんど運動しない部位なので、キメが細かく非常に柔らかい赤身肉。
1頭から左右1本ずつしかとれない貴重な部位。脂肪が少なく筋もない上品な味です。
最高級部位と言われるシャトーブリアンはヒレの一部の部分で、最も柔らかい。

さっぱりとステーキや、コクをプラスしたカツ・バター焼きなどに向いていますが、加熱しすぎると硬くなるので注意。

ランプ

サーロインに続くお尻の部分。ももより柔らかい赤身肉で、味に深みがあります。

焼肉・ステーキ・ローストビーフ・タタキなど、どんな料理にも使える部位です。

もも(うちもも・しんたま)

赤身のかたまりで脂身の少ない部位。たんぱく質が豊富。
塊りでローストビーフやタタキに。薄切りなら焼肉や炒め物に。

しんたまはうちももよりさらに脂肪が少なく、きめが細かく柔らかいので、刺身やユッケにも。

そともも

最も使われる筋肉部分なので、肉質は硬めで脂肪が少ない赤身肉。高たんぱく質です。

キメがやや粗く、薄切りや小間切れ・ひき肉にして、煮込みやハンバーグなどに。

バラ(ともばら・かたばら)

アバラ周辺の赤身と脂肪が層になったいわゆる三枚肉。焼肉で定番のカルビの部分です。

脂肪が多いので濃厚な風味が特徴で、焼肉や牛丼・煮込みなど、どんな料理にも使えます。ひき肉にしてハンバーグにも。

すね

足のふくらはぎ部分。筋が多く硬いですが、長時間煮込むとコラーゲンが溶け出し柔らかくなります。

ダシをとるには最適な部分で、シチューやポトフなど煮込み料理にオススメです。

内臓部位の特徴

タン(舌)

焼肉を食べる時に、必ず注文する人も多いのではないでしょうか。

付け根の方には脂肪があるので柔らかいですが、舌先に向かって筋っぽくなり、弾力のある独特の食感が特徴です。
全体としては筋肉の塊で、脂肪分が少なくたんぱく質が豊富。ビタミンAやタウリンを含んでいてヘルシーです。

塩焼きにしてレモン汁でいただくのが定番ですが、長時間煮込むと柔かくなるので、シチューやマリネでも。

カシラニク(こめかみ・頬)

こめかみと頬の部分。
よく動かす部分なので、ミオグロビンを多く含む筋肉で筋が非常に多いですが、煮込み料理にすると、柔らかくとろりとした脂のおいしさを楽しめます。
赤ワインで煮込むことで、赤ワインに含まれるタンニンがお肉を柔らかくします。
薄くスライスして焼肉でも、ほどよい脂の甘みと筋を噛む歯ごたえが味わえます。

ハツ

心臓の部分。名前の由来は英語の「ハート」から「ハツ」とか、ココロ・シンゾウなどと呼ばれています。ビタミンB12などが豊富。

綺麗な赤みで肉厚、脂肪が少ないのが特徴。こりこりとした歯触りがあります。

サガリ

横隔膜の肋骨の方。
1頭から5kgほどしか取れない希少部位。

脂の量が少なく、あっさり としています。柔らかい肉質で焼肉などに向いていますが、ロースや肩ロース、バラなどと比べると低カロリーでヘルシー。

ハラミ

横隔膜の中でも背中の方の薄い部分。サガリより若干脂の量は多く、旨みがあり濃い味です。

赤身肉と肉質が似ているので焼肉やシチュー・カレーなどの煮込み料理に向いています。

ミノ(第一胃)

牛には胃が4つあり、ミノはその第1の胃。4つの胃の中で最も大きく、白い色をしています。食べるときは包丁で切り込みを入れる場合が多く、広げた時の形が蓑傘に似ていることでミノと呼ばれているようです。

軟骨に似たコリコリとした食感で噛みごたえがあり、独特の臭みがありますが、しっかりと下処理をすると淡泊でクセのない味になります。
肉厚の部位は、上ミノとして焼肉として提供している店もあります。

ハチノス(第ニ胃)

ハチの巣のようなボコボコとした凹凸があることからこう呼ばれます。
モニュッとした弾力とさっぱりした味わいが特徴です。

イタリア語でトリッパとも呼ばれ、トマトとの煮込み料理が人気です。

センマイ(第三胃)

胃壁がひだのように幾層にも重なった、独特な形をしていることから「千枚」からセンマイと呼ばれるようです。
味はあまりなく、コリコリとした歯ごたえが特徴です。

焼肉やもつ鍋、一度茹でたものを酢味噌などと和えていただきます。

ギアラ(第四胃)

他の胃と比べて赤みがさし美しく脂ものっているため、肉に近い食べごたえで人気があります。

噛みしめるほどに濃厚な旨味と甘さが出てくるので、焼肉や鍋に最適です。

レバー(肝臓)

約700kgの牛から約5~6kgほど取れます。
栄養価が高くビタミンA、鉄分、ミネラルを多く含んでおり、濃厚で味に深みがあります。

以前は生食できましたが、牛肉はO157を含んでいるため、食の安全の観点から生食は現在では禁止されています。

マメ(腎臓)

豆が密集したような形をしていることからマメと呼ばれています。
ホルモンの中でも希少部位として知られています。脂肪が少なく栄養的には鉄分やビタミンB群が豊富です。

味はレバーに似ていて、薄切りにして塩焼きやバター焼き、味噌煮込みにも適しています。

ヒモ(小腸)

シロともマルチョウ・コプチャンとも呼ばれる細長くて薄い部位。
柔らかくて脂には甘みがありプリプリして弾力もあるので、比較的食べやすいです。
ビタミンB12が豊富です。

シマチョウ(大腸)

ヒモと比べると太くて厚めで噛みごたえがあります。焼肉ではテッチャンとも呼ばれています。
脂は少なめで、ホルモンと言えば「シマチョウ!」と言っていいほどの存在です。
もつ鍋でもよく使われている部位です。

牛肉-もつ鍋

テール

しっぽの部分。よく動かしているので筋肉がしっかりとしており、肉の味が非常に濃厚で硬いのが特徴。
コラーゲンが多く含まれ、長時間煮込むとゼラチン化して柔らかくなり濃厚なダシがとれます。
水から茹で下ごしらえをしてから、スープや煮込みに。

牛肉を美味しく食べるために

肉質の柔らかい部位は、ステーキやグリル・焼肉などに向いていますが、加熱し過ぎると硬くなるので注意です。
硬い部分の肉は加熱するほどに柔らかくなるので、シチューなど煮込み料理に適しています。

厚めの肉を調理をする時は、肉が冷たいと表面だけに火が入り中まで加熱できないので、調理する約30分前には冷蔵庫から取り出し常温に戻しておきます。
塩を振るのは肉汁を内側に閉じ込めるためですが、あんまり早く振っていると、肉は水分量が少ないため硬くなってしまいますので、調理をする直前に振りかけるようにしましょう。

牛肉の栄養素と効能|バランスのとれたタンパク質とアラキドン酸で至福のひと時を
牛肉や豚肉の赤身に豊富に含まれているトリプトファンが脳に取り込まれ、しあわせホルモンのセロトニンを作ります。アラキドン酸は脳内でエタノールアミンという物質と結合しアナンダマイド(至福)に変化します。これが肉を頬張った時に感じる幸福感の正体。

出典・参照させていただいたサイト:
日本食肉消費総合センター「牛肉の魅力」
エバラ「お肉」の参考書

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