胡麻は何かと頻繁に食卓に登場しますね。
胡麻粒の形はしていなくても、胡麻油やゴマドレッシングなどもあるので、常備している方も多いでしょう。
ところで、日本で市販されている胡麻には白胡麻・黒胡麻・金胡麻と3種類ありますが、栄養的に違いはあるのでしょうか?
今回は、そのことを中心に紹介いたします。
胡麻の歴史と日本の生産量
起源地はアフリカのサバンナ地帯で、5,000年以上前からナイル川流域やインドで栽培されていたとされています。
日本では縄文時代の遺跡から胡麻種子が出土されており、奈良時代には栽培され、胡麻油を作り調理に使ったり燈油として、また菓子や薬として利用されていた記録があります。
ただし現在では、日本で流通している胡麻は、99.9%以上(毎年約16万トン)が輸入されたものだそうです。
1970年代はもう少し生産量が多かったようですが、現在の生産量が0.1%に満たないのには理由があります。
胡麻は暖かく乾燥地帯を好む植物なので、湿気の多い日本では育ちがあまり良くないということで、もともと畑の隅やあぜ道で、農家さんも自分の家庭用に栽培していた植物でした。ですので、消費量が増えてきても、簡単には作付面積を増やせないうえに、機械化がしにくく遅れてしまい、手間がかかる割に収益性が低いので、積極的に栽培しようという農家さんは増えず、むしろ高齢化も進み減ってしまったのが理由のようです。
毎日のように胡麻の食品を食べているのに、この現状は驚きですね。
胡麻はゴマ科ゴマ属の一年草。成長すると丈が1m50cm前後になり、1本から約20g~30gの胡麻が採れるそうです。
2021年の日本の輸入相手先は、ナイジェリア・タンザニア・パラグアイ・グアテマラ・モザンビークなどです。
世界には色や形・大きさの違いにより3000種類ほどあるそうですが、日本で売られているのは、大きく白胡麻・黒胡麻・金胡麻の3種類です。
胡麻の栄養成分
白・黒・金の色の違いなどで若干の違いはありますが、含まれる栄養成分はほとんど同じです。
炒り胡麻100gあたりのカロリーは605kcal。
「健康に良い」というイメージを持っている方も多いでしょうし、実際、胡麻の栄養価は高いです。
主な栄養成分は脂質(約54%)・タンパク質(約20%)・炭水化物(約18%)ですが、ビタミンもビタミンA・ビタミンB1・B2・B6・ナイアシン・葉酸・ビタミンE、ミネラル類もカリウム・カルシウム・マグネシウム・リン・鉄分・亜鉛・セレンなどが含まれています。
参考:文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
胡麻の脂肪酸は必須脂肪酸
胡麻の脂質に含まれる脂肪酸は、人体で合成できない必須脂肪酸のリノール酸やオレイン酸が非常に多く、次に多いのがパルチミン酸やステアリン酸です。
ホルモンや細胞膜をつくる材料として使われ、また、私たちが生きるために必要不可欠なエネルギー源にもなります。
不溶性食物繊維が豊富
胡麻には約10%の食物繊維が含まれています。
不溶性食物繊維が多く、腸内で水分を吸って膨らむことで腸を刺激し排便を促してくれ、コレステロールの排出も促し、便秘解消に役立ちます。
ミネラル類の中でも、カルシウム・鉄分が多い
丈夫な骨作りに必要なカルシウムですが、一部は血液や筋肉・神経内にあり、体のさまざまな機能を調整する働きもしています。
不足すると、骨粗しょう症やイライラや肩こり、そして高血圧の原因にもなります。
鉄分も不足すると、立ちくらみや疲れがとれない、女性の場合は生理の時に辛いなど、貧血症になってしまいます。
毎日少しずつでも摂取するようにすることが大事です。
ゴマリグナンのセサミン
胡麻の種子に含まれるリグナンをゴマリグナンといい、胡麻成分の約1%を占めています。この中には、セサミン・セサミノール・セサモリン・エピセサミン等のたくさんの抗酸化成分が含まれています。
サプリとしても売られているので、セサミンが一番耳慣れている成分でしょうか。ゴマリグナンの50~60%がセサミンです。
セサミンは胃腸では分解されず肝門脈で吸収されるので、肝臓に直接作用し肝機能を高める効果があるといわれています。
アルコール分解を促進し二日酔いや悪酔いを予防し、肝臓への負担の軽減が期待されます。
また、善玉コレステロールを増やし悪玉コレステロールを減らす働きや活性酸素を取り除く抗酸化作用があるため、動脈硬化予防・細胞の老化防止、アンチエイジングなどにも期待ができます。
セサミンは、ゴマ粒のままだけでなく、ごま油などの加工された食品からも摂ることができるそうです。
白胡麻・黒胡麻・金胡麻の特徴や違い
白胡麻
白胡麻は見た目のとおり皮が白く薄いです。噛むと口の中でプチッと弾けるくらいで、わずかにナッツのような香りと甘みがあります。
控えめな味なので、幅広く色々な料理に合わせることができ、そっと風味を良くするので、和え物やスープ・味噌汁に入れたりと使い勝手がよいです。
黒胡麻より脂質のリノール酸やオレイン酸、ゴマリグナンのセサミンが多く、胡麻油の原料としても使われていて、国内での使用量が一番多い胡麻です。
黒胡麻
黒胡麻は白胡麻より皮が黒く厚いのが特徴です。
噛み切れないほどではないですが種皮がやや固いので、摺って使用することが多いです。白ゴマより香りとコクが強く、他の食材と合わせても、胡麻の風味を感じます。
胡麻の香りや風味を感じるための料理やクッキー・プリンなどもあり、また淡い色の料理の彩りとして、大学芋などのトッピングに使われていますね。
黒胡麻は白胡麻より、ポリフェノールやカルシウムを多く含んでいます。
黒いのは、ポリフェノールの一種であるアントシアニン。抗酸化作用があり、とくに目の機能回復に働くとされている成分です。
金胡麻
白や黒より脂質や香りが高くコクがあり食感も良いので、きんぴらやゴマドレッシングなどに。
製造に手間がかかるため少し値段が高く、懐石料理などで使われることが多いです。
種皮には抗菌作用があるフラボノイドが含まれているそうです。
加工胡麻の種類と使い方
洗い胡麻
洗い胡麻は鞘から出して異物を取り除き乾燥させただけの胡麻。自分好みに炒ることができます。
胡麻は跳ねるためフタをして、焦げないように鍋(フライパン)を動かしながら炒りましょう。
炒り胡麻
洗い胡麻を炒ったもの。
炒ることで、香ばしさが出て消化吸収も高まるそうです。すり鉢や卓上ゴマ摺り器で、食べる直前に摺ると、香りもふわっっとして食欲をそそります。
摺り胡麻
炒り胡麻を摺った状態のもの。
摺り胡麻として売られている商品もあり、袋から出すとすぐに調理に使えるので便利です。
含まれる油分が滲み出ていて、ややしっとりとした感じです。
練り胡麻
胡麻を完全に粉砕し、ペースト状にしたもの。
これに植物油や調味料を入れると芝麻醤になります。タレや胡麻豆腐を作るのにオススメです。
胡麻油
胡麻には50%以上の油(脂質)があるので、搾って胡麻油としても売られています。
上記で説明したゴマリグナンは脂質の酸化を防ぐ働きがあり、胡麻油が他の油より酸化しにくいのは、これのおかげだそうです。
煎り胡麻を材料にして独特の香りを出したものが、茶褐色の焙煎胡麻油。
煎らないで精製し、胡麻本来の旨みを出したのが太白油・白胡麻油になるそうです。ほぼ無色透明で胡麻油特有の香りやクセがないので、他の食材の邪魔をせず、揚げ物や炒め物、サラダやスープ・お菓子など、どんな料理にも使えます。
葉も利用されている
胡麻の若葉は青汁の材料としても利用されているそうです。食物繊維・ビタミン・ミネラルがあり、抗酸化作用のあるポリフェノールの一種・アクテオシドが含まれています。
できれば、有機JAS認定マーク付きを選ぶ
化学物質に頼らないことを基本に自然界の力で生産された食品として、農林水産大臣の認証を受けた機関から格付認定されている食品には「有機JAS認定マーク」が付いています。
有機JAS認定マークがついている胡麻には、栽培過程で農薬や化学肥料が一切使われていません。
手間もかかっているので価格も少し高くなりますが、品質の良さが保証されています。
炒り胡麻より摺り胡麻・練り胡麻の方が、栄養を効率的に吸収できる
炒り胡麻も摺り胡麻・練り胡麻も栄養価は同じですが、胡麻の表皮は人間の体で消化吸収されにくい性質があります。
ですので効率的に栄養を摂取するには、炒り胡麻より摺り胡麻・練り胡麻の方がよいです。
炒り胡麻を食べる場合は、よく噛んで食べるようにした方がよいようです。
食べ過ぎに注意
穀物類ですが、米や小麦のように主食で食べることはないので、胡麻をを食べすぎるというのはあまり考えにくいですが、健康に良いからと一度にたくさん摂ってしまうことはあるかも知れません。
胡麻の脂質は50%以上ですので、過剰に摂取すると太りやすくなってしまいます。
また、上記でも説明したように、胡麻の食物繊維は不溶性が多いので、一緒に水分もしっかり摂るようにしないと、逆に便秘になってしまう危険性があるので注意しましょう。
胡麻アレルギーにも注意
このように健康に良いとされる胡麻ですが、子供を中心に「胡麻アレルギー」も報告されています。
小さなお子さんが、胡麻食品を食べた後に、蕁麻疹、浮腫、喘鳴、呼吸困難やアナフィラキシーショックなどの症状が起こったら注意が必要です。
胡麻は他の食材と一緒に摂るといい
小さいのに栄養豊富な胡麻。健康のために継続的に食べるのであれば、一日に大さじ2杯ぐらいでいいそうです。
まず、胡麻だけを食べるというのは稀で、何か別の食材と一緒に食べることが多いと思いますが、その方が栄養も効率的に摂れます。
例えば野菜と一緒に食べると胡麻に無いビタミンCも摂れますし、タンパク質を含む豆腐などと一緒に食べると、胡麻に含まれない必須アミノ酸、魚と一緒ならEPA・DHAといったようにバランスよく栄養が摂れますね。
色々な料理に振りかけるだけでも食べられる手軽さもあるので、毎日の食事に取り入れてみるのもどうでしょうか?
出典・参照させていただいたサイト:
農林水産省 ゴマについて、黒ゴマ、白ゴマなど種類がありますが、何が違うのですか。
EPARK ごまの栄養価まとめ
ShinSei 学ぶ・楽しむ
Wikipedia ゴマ