胡椒の成分と効能。辛み成分のピペリンや香り成分が健康維持に役立つ

胡椒-肉-ニンニク 香辛料

胡椒はけっこう身近にある香辛料の一つですね。
食卓に常備している、というご家庭も多いでしょう。
今ではそんなに高くはありませんが、昔は金・銀と交換されるほど効果な香辛料でした。
それの1番の理由は殺菌力があることで、肉や魚などの食料品の長期保存ができるからですね。
それだけではなく、健康のためにも様々な効能があるということで、薬としても重宝されたようです。

今回は、16世紀以降のヨーロッパの経済・文化にも深い影響を及ぼした胡椒のお話です。

胡椒の歴史

胡椒の原産地は、インド南部の熱帯雨林。主に東南アジア(18世紀ぐらいから南米などでも)の熱帯地域で栽培されています。

紀元前4000年頃には東南アジアを中心に栽培されていたという記録があり、古代ローマ時代に陸路で地中海地域にも伝わりました。しかし当時は非常に貴重で高価な香辛料だったため、富裕層しか手に入れることができませんでした。
中世になると、アラブ商人によりヨーロッパ各地で広く流通するようになったので、庶民にも手が届くようになりました。

15世紀、オスマン帝国の地中海進出により東方(陸路)貿易が困難になった等の理由で、航路でのインド到達が試みられます。
ポルトガルの援助を受けたバスコ-ダ-ガマが、1498年にアフリカ経由の航海でインドに到達した話は有名ですね。
この後ポルトガルは、アジアに進出し、インドのゴアや中国のマカオを拠点に胡椒をはじめ香辛料などの貿易を行うことで、大きな利益を上げました。
地球は丸いことを信じていたコロンブスは、西方へと向かい、インドには辿り着けませんでしたがアメリカ大陸を発見します。
胡椒を欲する人々が多かったことが、大航海時代の原動力になったともいえるでしょう。

江戸時代には庶民も食することができるようになり、暑い夏には、ご飯にだし汁とともに胡椒をかけ、暑気払いとしても食べられていたようです。

胡椒の種類

胡椒-実

胡椒には黒・白・緑・赤とありますが、これは品種が違うわけではありません。
胡椒の成長過程や加工の仕方で色が変わってきます。
黄緑色の小さな花が10~20cmに吊り下がった穂状に咲いた後、丸い果実が房状に実ったのが胡椒。
果皮の色が、緑色から熟すにつれて黄色から赤色へと変化します。

黒胡椒(ブラックペッパー)

最もよく使われている胡椒で、熟す前に収穫した実を日干ししたものです。
果皮に辛み成分が多いので辛みが強く、肉料理などの臭み消しになります。

白胡椒(ホワイトペッパー)

赤く完熟した実の果皮を取り除いて乾燥させたもので、黒胡椒より香りや辛みがマイルド。
生薬として利用されるのは、一般的にこれです。

緑胡椒(グリーンペッパー)

まだ緑色の未成熟のうちに収穫し、機械乾燥または塩漬けしたものです。
フレッシュで爽やかな香りと辛みがあります。

赤胡椒(ピンクペッパー)

完熟して赤くなった実を乾燥させたもので、香りや辛みがマイルド。
料理に華やかさをプラスするのによく使われますが、加熱すると風味が飛ぶので、サラダやマリネに。
よく似たものにウルシ科サンショウモドキ属の植物や西洋ナナカマドの赤い実があり、同じく「ピンクペッパー」と呼ばれています。

「コショー」という品名で売られているものがありますが、これは黒胡椒と白胡椒をブレンドしたものが多いそうです。

胡椒の成分と効果・効能

胡椒-鴨肉

胡椒(黒)100gあたりのカロリーは362kcal。
といっても、一度に100g食べることはまず無いと思うので、カロリーは気にすることはありませんね。
タンパク質・脂質・炭水化物も含んでいますが、これもエネルギー源になる量ではありません。
ビタミン類はβ-カロテン・ビタミンB1・ビタミンB2・ナイアシン・ビオチン、ミネラル類はナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム・リン・・亜鉛・銅・マンガン・ヨウ素・セレン・クロム・モリブデンなどを含んでいます。
ただし摂取する量はかなり少ないことになります。
出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

胡椒が持つ効能は、辛み成分のピペリンや香り成分のβ-カリオフィレンなどがもたらしてくれます。

ピペリンには、食品の栄養の吸収を促す作用があるとされ、その栄養素の効能を高める働きがあるとされています。その働きは粒が細かいほど有効で、油に溶けやすいので炒め物やドレッシングに入れると良いそうです。

胡椒-パスタ

抗菌・防腐・防虫効果

昔、胡椒が高級品として扱われていたのは、細菌の繁殖を防いだり防腐・防虫効果に優れていたのが大きな理由です。
冷蔵・冷凍などの保存方法がない時代に、肉や魚など食料品の長期保存に役立ちました。

このピペリンが持つ抗菌効果は、体に摂取した後も続き、体から菌を追い出す働きがあり、食中毒のリスクも減少してくれます。
また、胡椒の香りを多くの虫が嫌うため、クローゼットや衣類ケースに入れておくと、虫食いなども防ぐ効果もあります。

血行促進・発汗作用

ピペリンには、血管を広げて血流をよくする働きがあります。血行が良くなると体の末端まで血が巡るようになり、冷えの改善や肩こり・腰痛や筋肉痛の緩和にも効果が。

ダイエット効果

ピペリンの交感神経を刺激する作用によりアドレナリンが分泌され、脂肪分解酵素が活発になります。
そして血行が良くなると、体温上昇やエネルギー代謝も効率が向上するので、脂肪が燃焼されやすくなり、ダイエットにもつながります。

消化不良を改善し食欲増進

辛み成分のピペリンや精油成分の香りによる血行促進作用が胃腸を刺激して、消化器官の働きを向上させてくれます。そのため、消化不良の改善や食欲増進にも効果が期待できます。
辛さの刺激や香りがあると、味も良くなり料理も美味しく感じますね。

美肌効果

肌だけでなく体の老化は酸化するのが原因ですが、胡椒に含まれるピペリンやポリフェノールには抗酸化作用があるので、酸化を防ぐ働きもあります。

また、肌のハリを保つコラーゲンを体内で産生するには鉄も必要ですが、胡椒にはその鉄も含まれています。

リラックス効果・ストレス軽減

胡椒の香り成分であるβ-カリオフィレンには、神経をリラックスさせ、怒りの気持ちや不安を和らげる効果があります。

また、ピペリンには、気分を落ち着かせるセロトニンやエンドルフィンの分泌を促進する働きもあります。
セロトニンやエンドルフィンは別名「幸せホルモン」とも呼ばれており、ストレスを緩和し気分を落ち着かせたり、落ち込んだ気分を上げてくれる効果があります。

高血圧対策に

胡椒は辛いですが、塩分はほとんど含まれていないので、高血圧の原因の一つになる塩分摂取量を減らし、味を整えることができます。
また、胡椒にはカリウムも含まれているので、摂り過ぎた塩分(ナトリウム)を排出してくれるのにも役立ちます。

食べ過ぎないように

これはあまり心配しなくてもよいとも思いますが、漢方などの薬にもなっているということで、つい、一度に多く摂取したりするかもしれません。ですが、即効性はないので毎日少しずつを心がけましょう。
刺激が強い香辛料なので、一度に摂取しすぎると、下痢や腹痛を起こしてしまう危険性もあります。

また製品によっては、辛さ調整のために小麦粉が含まれるものもあるので、アレルギーのある方などは気をつけましょう。

柚子胡椒について

柚子胡椒-鶏肉

柚子胡椒という調味料もあり、人気ですね。
でも「胡椒の味とは違うような…??」と思っている方も多いでしょう。
その味覚は正解です。

柚子胡椒は、唐辛子と柚子の果皮と塩を入れて磨り潰して熟成させたもので、一般的な胡椒は入っていません。
九州の長崎など一部の地域では、唐辛子が「唐が枯れる」につながることを嫌がり、胡椒と呼んでいます。ちなみに胡椒は「洋胡椒」と呼んでいるそうです。
青唐辛子と青柚で作ると緑色、赤唐辛子と黄柚子で作ると朱色になります。
緑色のは辛みが強く、朱色は辛み抑えめで香りが強くなるそうです。
昔から福岡県や大分県などの家庭で作られていましたが、2000年頃に全国に知られるようになったそうです。

出典・参照させていただいたサイト:
MY ORGANUC WAY vol.205 スパイスの王様と言われる「胡椒」。
Yomeishu 胡椒の効果・効能とは?香りや辛味に隠れた健康に嬉しい作用と使い方
ロスゼロ【コロンブスも探し求めた】魔法のスパイス「コショウ」の秘密大公開
wikipedia 柚子胡椒

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