日本の緑茶は、平安時代に中国(唐)から遣唐使の留学僧により伝わったのが最初とされています。
当時は非常に貴重なもので、上流階級の限られた人しか口にすることはできませんでした。
鎌倉時代、宋からお茶を持ち帰った栄西禅師から種子を譲り受けた京都の明恵上人が、その種子を蒔き宇治茶の基礎を作るとともに、全国に広めていったのだそうです。
それから徐々に武士階級にも社交の道具として普及して、村田珠光や千利休らにより茶文化が確立されます。
「茶道」というとなんだか堅苦しくて、茶を点てる人よりその茶を頂く人の方が緊張するという感じがありますが、「主が客人と心を通わすために馳走する」という、日本人のおもてなし精神が、その根底にはありますね。
江戸時代に入り、武士だけでなく庶民の口にも入るようになります。
庶民が飲めたのは質のよくない煎茶や番茶でしたが、「おもてなし精神」はそのままで、客が訪問するとまずお茶を出し道中の疲れを労い、友人らとの語らいの場にも普通にお茶があり、人と人の心を繋ぐ飲みものとして今に引き継がれています。
そういう文化的側面もありますが、人々が長い間緑茶に親しんできたのは交流のためだけではなく、身体にも精神的にもなんとなく良さそうな効果を感じていたからでしょう。
緑茶にもいろいろな種類がありますね。今回はその種類と含まれる栄養素に期待できる健康効果について調べてみました。
緑茶の種類

緑茶は「チャノキ」から作られるお茶のなかで、収穫した茶葉を蒸したり炒ったりして酵素の働きを止め、発酵しないように生産されたお茶のことをいいます。
大きく、煎茶・玉露・抹茶・かぶせ茶・番茶・ほうじ茶・玄米茶・釜炒り茶・粉末緑茶に分類されるそうです。
煎茶
全国で生産される緑茶の7割以上を占めていて、もっとも飲まれているお茶です。
畑から収穫し、新鮮なうちに蒸して発酵を止め、揉むことにより乾燥させて作ります。
蒸しが浅いと黄金色のお茶になり、深いほど緑色が濃くマイルドな味になります。
玉露
栽培している時に、20日以上日光を浴びないように茶樹あるいは茶園全体に覆いを掛けて育てたお茶。
被覆することで、茶のうま味成分である「テアニン」が日光を浴びると渋み成分の「カテキン」に変わるのを防ぎます。
日光が遮られると、茶葉は光合成を効率的に行わなくてはいけなくなり、葉緑素を増加させます。そのため緑色が深く濃いお茶に仕上がります。
育てるのに手間がかかるので、価格が煎茶より高くなるのだそうです。
抹茶
玉露と同じように被覆して育てた茶葉を蒸した後「揉む」のではなく「炉」にかけて乾燥させ碾茶(てんちゃ)と呼ばれる状態にし、茎や葉脈を取り除き石臼で挽いて粉末状にしたものです。
茶道で飲まれたり、お菓子や料理の素材としても使われていますね。
かぶせ茶
玉露や抹茶のように被膜して一週間ほど栽培し、収穫した後は煎茶と同様の蒸す→揉むの工程で作ります。
玉露より被膜の時間が短いので、煎茶と玉露のいいとこどりの中間のような味わいになります。
番茶
新茶の後に出てくる葉で作られる二番・三番茶などを総じて番茶と呼びます。
製法は煎茶と同じですが、成熟した茶葉で作られるのでカフェインやうま味・甘味成分が少なく、さっぱりとした味わいで、脂っこい食事の後などに飲むと、口の中をすっきりさせてくれます。
釜炒り茶
蒸すかわりに釜で炒る熱処理方法で発酵が進まないように作ったお茶。
日本では蒸す製法が主流ですが、中国ではこの製法で作られることが多いそうです。
香ばしい釜香が特徴で、日本でも九州などの一部でも作られています。
ほうじ茶
煎茶や番茶を強火で焙煎し香ばしさを引き出したお茶です。
香りにはリラックス効果があるとされ、カフェインや渋みも少なくなっているので、子どもからお年寄りまで飲めるお茶として好きな人も多いです。
玄米茶
煎茶や番茶に炒った玄米を加えたもので、茶葉というより玄米の香ばしさや甘味を楽しむお茶で、渋みが苦手な人や、あまり日本茶に慣れていない外国の方にも人気があります。
茶葉が少ない分、カフェインの含有量も少なくなっています。
粉末緑茶
完成した煎茶をパウダー状にしたもの。
茶葉を急須などに入れお湯で抽出しなくても、そのまま丸ごと冷たい水にも溶けるので、効率的で便利です。
料理やスイーツに加えたりお酒と混ぜたりするなど、いろいろな楽しみ方ができます。
緑茶の栄養素と効能

カロリーは煎茶の茶葉100gあたり331kcalですが、そこから抽出してお茶として飲むとほとんどカロリーはありません。
カロリーはありませんが、栄養素としてβ-カロテン・ビタミンB群・ビタミンC・カリウム・カルシウム・カテキン・テアニン・カフェインなどを含んでいます。
参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
カテキン
緑茶に含まれる成分のなかでも、近年注目が集まっていますね。
カテキンはポリフェノールの一種で、緑茶の渋み・苦味成分。健康維持に役立つさまざまな作用があると言われています。タンニンもカテキンの仲間です。
●抗酸化作用
体内の細胞を酸化させ老化や病気の原因となる活性酸素を除去する作用があります。
また、体内に発生したガン細胞の増殖を抑える働きもあるとされ、アンチエイジングにも効果的です。
●血糖値が上がるのを抑える作用
血糖値は、糖質を多く含むご飯・パン・麺類、菓子類、果物などを食べると上昇しますが、カテキンにはその糖の吸収を抑える働きがあります。
●悪玉(LDL)コレステロールを下げる作用
動脈硬化などを引き起こす原因となる悪玉(LDL)コレステロールの吸収を抑え排出を促す作用があると言われています。
●殺菌・抗菌作用
カテキンにはO-157などの食中毒菌や胃潰瘍や胃ガンの原因となるピロリ菌の増殖を防ぐ殺菌・抗菌作用があり、食中毒予防に役立ちます。
また、虫歯の原因となるミュータンス菌の増殖も抑えるので、虫歯や口臭予防にもなります。
昔から食事の後にお茶を飲む習慣があるのは、こういうのも理由のひとつなのでしょうねぇ。
●抗ウイルスで風邪予防
インフルエンザなどのウイルスは、体内に入ると細胞の中で増殖するそうですが、カテキンが体内にあると、ウイルスが細胞に付きにくい状態を作るため、ウイルスが増殖することができず、風邪予防になるそうです。
●体脂肪低下
カテキンを継続的に摂り続けると、前述したような糖の吸収を抑える効果に加え、肝臓での脂質代謝を高め、消費エネルギーが増えることによって体脂肪を減少させる働きがあるとされています。
カフェイン
緑茶には苦味成分のカフェインも含まれています。
眠気を抑制し集中力をアップさせてくれる覚醒作用や、体内に溜まった老廃物の排出を促し、むくみ解消に働く利尿作用があります。
興奮作用もあり、交感神経を刺激することで代謝が上がり、脂肪燃焼効果がアップするのでダイエットをサポートしてくれます。
ただし、摂り過ぎると不眠になったり利尿作用で脱水症状を引き起こしたりしますので、飲み過ぎには注意が必要だそうです。
テアニン
アミノ酸の一種で、緑茶のうま味や甘味を構成する成分です。
脳の神経細胞の保護や筋肉の緊張緩和、血管を拡張し血行を良くするといったリラックス作用があります。
ビタミン
ビタミンもβ-カロテン、ビタミンB群、ビタミンCが含まれています。
緑茶は無発酵ということもあり、茶類のなかでもビタミンCを含んでいることが特徴です。
ビタミンCは皮膚や粘膜の健康維持に必要で、美肌作りに欠かせません。
体内に入ると必要に応じてビタミンAに変換されるβ-カロテンにも、皮膚や粘膜の健康維持や視力を維持する働きがあります。
どちらにも抗酸化作用や免疫機能のアップ作用があるとされています。
緑茶の種類によって、含まれる栄養素の量が違う
緑茶には渋み・苦味成分であるカテキンと、うま味・甘味成分であるテアニン、苦味成分のカフェインが含まれています。
上記したように、生産工程の違いにより緑茶の種類で、カテキン・テアニン・カフェイン量が違ってきます。日光を浴びないように被覆して育てた玉露・かぶせ茶・抹茶の方が、煎茶よりうま味・甘味が強くてテアニン量も多いというように。
また、一番最初に湯を注いだお茶はカテキンよりテアニンが多く抽出され、二煎、三煎になるほどカテキン量が増えていくそうです。
たしかに、渋み・苦味が増していきますね。
お茶の味わいも変わりますが、栄養素の量も変わるわけです。
ですので、お一人で香りに元気をもらうのもよし、家族や友人達と一緒に飲みながら話りあうのもよし、ご自分の生活スタイルに合わせて緑茶の種類や飲むタイミングなどを選び、お茶の時間をそれぞれ愉しんでいきましょう。

出典・参照させていただいたサイト:
煎茶堂東京 日本茶の種類総まとめ
サンキュ!「緑茶」の主な栄養素とカロリーまとめ!
健康長寿ネット カテキンの種類と効果と摂取量
大井川茶園 公式ブログ 世界に誇る日本の茶文化と、その歴史。
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